「空腹時にライチを食べると死ぬ」は本当か? 未知の毒性分を含むライチと血糖について徹底解説!

2月7日(火)7時15分 tocana

イメージ画像:「Thinkstock」より

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 先日BBCが報じたニュース「Indian children died after 'eating lychees on empty stomach'(インドの子どもが空腹時にライチ食べた後死亡)」でにわかに話題になっているライチの毒。

 かつては冷凍でしか見ることの無かったマニアックな果物ライチも、ここ数年で日本でも生ライチが食べられるようになってきました。スーパーなどで見慣れないボール状の果物が並んでいるので見かけたことがある人も多いかもしれません。甘酸っぱく、他に類を見ない味故に、大好きな人も多いと思います。

 そこに「ライチには未知の毒がある」「ライチを食べると死ぬ」という話が出てきたわけです。

 今まで通りライチを食べても大丈夫なのでしょうか?

 これについて近年、権威ある医学論文ランセットに、ひとまずの結論が提出されて、まずますの決着をみたので、それにつても紹介しようと思います。では一体ライチの毒とはなんなのでしょう?

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■ライチ死亡事件全貌

 事の発端も知らない人もいると思うので、まずはまとめておきましょう。

 事件はインドの北東部にあるムザッファルプル地方の村で起きました。2013年あたりから15歳以下の子どもが謎の脳障害で病院に運び込まれるということになり、133人が担ぎ込まれ44%は治療のかいもなく死亡、患者はさらに増加2014年には患者が390人に上り、このうち31%が死亡するという奇病の蔓延です。
 
 あまりに奇妙で劇的な症状に、インド政府とアメリカの疾病対策センター(CDC)の共同で調査が開始されました。当然最初は未知のウイルスや細菌などによる感染症として調査がされました。

 ただ感染症の場合、人間の体は感染症と闘うために白血球を増加させるのが目安となります。しかし患者の血液から脊髄液まで、白血球の増加はほとんど見られず異常なし。つまり、感染症の確率はかなり下がります。そこで、調査チームは彼らの行動を調べることで、ある共通点を発見しました。

 それは症状を呈した子ども達の大半が70ml/dLの血糖値を下回っている低血糖を起こしているということ、それと遊んでいた場所が同じであったということです。


●病気の原因はライチ

 症状を呈した子ども達の行動を調査したところ、大半が「ライチの果樹園」で遊んでいたことが判明。そしてこの病気をケースとも照らし合わせて調べていくと、ライチの収穫期にほぼドンピシャで一致することが判明。彼らが果樹園で木の下に落ちたライチの実を食べていたことから、これらの中毒はライチに含まれる毒素ではないかという結論に至りました。そして実際にライチの実、特に未熟な実には多く「ヒポグリシン」が含まれており、それが低血糖を引き起こし病気を発生させていたということです。

 ヒポグリシンによる中毒は、今回のライチ中毒も青いライチを食べないように……と親に指導することで回避できる……と話は一端決着したように思われました。

 しかし、これでは不明な点が残ります。ライチは世界的に熱帯地方で生産されている果物で、わざわざインドの限られた地方で起こり、輸出先では起こりえないのか? 毒ライチと無毒ライチがあるのでしょうか? ひょっとして農薬の影響? などなどいろいろな調査が続行しました。

 先の論文によると、ライチやアキーにはヒポグリシン(とその類似物)という毒素が含まれており、未熟な実には特に多く含まれていることが分かりました。そして、これらの毒やその代謝物は体内で“糖新生”という血糖値を安定化させるメカニズムを阻害することも知られており、ジャマイカではライチの近縁種である同様の毒素を含むアキーの実を食べて起こるといわれていることがわかったことで、より深く病気の正体が見えてきました。


■なぜ生産地でしか病気が発生しないのか?

 しかし、それでもこの病気が生産地でしか起こっていないのは不思議です。未熟な実も海外に間違って輸出されてしまうこともあるからです。

 その理由は簡単でした。

 患者の多くは貧困な地域故に、体脂肪率は低く、加えて十分な夕食を摂れておらず、その空腹から、果樹園に落ちている青いライチを食べていたことが原因と判明。

 血糖値を維持するための体脂肪が少ない成長期の子どもにとって、青いライチの毒性は代謝異常を起こし、急激な低血糖を引き起こすという最悪の最悪のマッチングを起こしていたのです。そして、低血糖からの合併症で神経から内臓にいたるまで様々な病態を示し、あたかも感染症のような病気となっていたことが判明したのです。

 ライチが輸出される国は、日本も含め大半が、豊かな国です。貧困層はいても、飢餓状態の人は滅多にいないことはご存じの通り。つまり、この毒は体脂肪が低く、さらに食事を満足に摂れていない状態でのみ致死的に発動する極めてマニアックな毒だといえるでしょう。豊かな国では死者が出ないのも当然です。

 とはいえ、「南国のフルーツは基本的に青いときに食べない方が良い」というよくある話はわりと信憑性のある話というオチでもあります……。気が向いたら、その血糖値の阻害メカニズムと我々の血液の恒常性についてまとめようと思います。

 需要無さそうな気しかしませんが……(笑)
(文=くられ)


※イメージ画像:「Thinkstock」より

tocana

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