沼は東に、池は西に。 全国の地名を色分けしてみたら、面白すぎる「地域差」発覚

2023年2月8日(水)20時0分 Jタウンネット

同じ日本列島の中で、「東日本」と「西日本」に、こんなにも違いがあるのはなぜだろう? と不思議に感じることはないだろうか。

方言はもちろんだが、食文化もかなり異なるようだ。仔細に挙げていけば、きりがないほど......。

2023年1月31日にツイッターに投稿され話題になったのは「地名の東西差」だ。

添えられていたのは、こんな図である。

投稿者「地理Bの旅」(@chiri_b_geo)さんが作成した地図は、末尾に「池」がつく地名と「沼」がつく地名の分布を示すものだという。西と東で、その差は明確だ。東日本にはグリーンの「沼」のマークが集中しており、西日本にはオレンジ色の「池」のマークが密集している。

このツイートには、7600件を超える「いいね」が付けられ、ツイッター上では、こんな声も寄せられている。

「面白いですね。そう言われてみると、沼という地名はあまり聞きません。京都の巨椋池も深泥池も明らかに沼のような気がしますが、池なのです」
「池と沼とは、同じようなものの呼称が東西で違うのか、あるいは池と沼それぞれの定義通りに、東と西で地形が違うのか......」
「スゴい。東は沼る、西は池るなのですね」
「地名分布の東西差、とても面白いです」

東と西で、いったいなぜこんな差が生まれたのか? Jタウンネット記者は、投稿者「地理Bの旅」さんに詳しい話を聞いた。

農業用ため池を調べてみたら......?

投稿者「地理Bの旅」さんの仕事は地理関係だが、投稿した内容は基本的に趣味の延長だとのこと。地理院地図の検索機能を使って、日頃からいろいろな地名を検索して楽しんでいるそうだ。趣味と実益を兼ねた素敵な習慣と言える。

この図を作成したきっかけは何だったのか? 記者が尋ねると、「地理Bの旅」さんはこう答えた。

「以前から、地理院地図の検索機能で地名の分布を調べており、『沼』を調べたときに東日本に多いことに気づきました。同様に『池』も調べると西日本に多かったので、末尾が『池』・『沼』の分布を作成すれば面白い地図ができると考えました」(「地理Bの旅」さん)

今回の地図は、「人間文化研究機構」(大学共同利用機関法人)が無償で公開している「歴史地名データ」や国土地理院の「地理院マップシート」を活用して作ったものだという。

前者のデータベースで末尾が「沼」「池」の地名をリスト化し、後者でそれを地図上に追加する。

地理好きならではのノウハウを惜しげもなく披露し、「難しい操作ではないので、教育現場や趣味の地図作成などに幅広く活用されると嬉しいです」と「地理Bの旅」さんは語った。

また、明らかになった「沼」「池」の地域差について、別のデータベースも参照したという。

「農業用ため池データベース(各都道府県が整備)を調べてみると、ため池の名称の末尾が東西で異なる傾向にあることが分かりました。西日本ではため池に『〜池』と付ける場合が多く、東日本では『〜沼』という名称のものが多いです。
農地開発の時期の違い、語彙の地域差などが理由として考えられますが、地名分布からの推論だけでは不十分だと考えています。明確な理由を考える場合は、古地図なども参照しつつ歴史的背景をふまえた考察が必要だと思います」

「地理Bの旅」さんが作ってくれた地図をきっかけに、東西差の歴史を辿っていく——なんと楽しそうな営みだろうか。

「沼」と「池」以外にも、東西の違いを示唆するような未知のネタは、まだまだありそうだ。投稿者「地理Bの旅」さんも、「身近な地名をきっかけに、たくさんの方が地理や地図、文化の地域差などに関心を持ってくださると嬉しいです」とコメントした。

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