BEAMSの名物ディレクターが絶賛する山形県酒田市の「飾り菓子」とは?【フーテンの寅みやげ】
2025年2月9日(日)20時0分 食楽web
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●東西南北、日本全国を仕事で飛び回るBEAMS JAPANの名物ディレクター・鈴木修司さん。尊敬する人物は『男はつらいよ』の車寅次郎。寅さんのように年の1/3は旅の空という鈴木さんが、旅先で見つけた銘品を「フーテンの寅みやげ」としてご紹介します。
こんにちは。ビームスジャパンの鈴木修司です。年明け早々に大雪の青森へ飛び、その翌週には日本海側の東北を巡る旅に出かけてきました。慣れない雪の中での移動が多く、大雪も心配だったのですが、大きなトラブルもなく無事に帰宅。それどころか、かなり収穫の多い大満足の旅となりました。
新潟から山形の酒田市へ
酒田の名店、久村の酒場
2月初旬、新潟県での仕事を終え、そのままクルマで山形県の酒田市へ。酒田は、最上川と日本海が交わる港町。上方と江戸、北海道を往復する北前船の中継地として栄えました。後述しますが、ここでしか手に入らない逸品があるのです。
慣れない雪道のドライブのため4時間もかかってしまい、市内に着いた頃にはすっかり真っ暗。凍てついた道を早歩きして向かったのは地元の名居酒屋『久村の酒場』。ここは私が敬愛する居酒屋探訪家・太田和彦さんの名著『日本居酒屋遺産』にも掲載されている名店。実は昨年(2024年)、酒田市に寄った際、臨時休業と重なっていて断念せざるを得なかったので、どうしても再訪したかったんです。
『久村の酒場』の定番メニュー「あげ・げそセット」
暖簾をくぐると、やはり素晴らしい店でした。吹き荒ぶ寒風の中を歩いて冷え切った体に、庄内地方の郷土料理と地酒が染み渡ります。お酒もお喋りも深くなって、想い出に残る一夜に。ちなみに、一升瓶ごと温める熱燗には驚かされました。素朴で豪快、もし行くことがあればぜひ飲んでみてください。オススメです!
往時の反映を偲ばせる、巨大な米蔵が連なる「山居倉庫」
翌朝は酒田の街を散策。江戸時代に北前船の寄港地として繁栄した酒田には、京都から伝わった魅力的な産品がたくさんあるのですが、その一つが、1832(天保3)年創業の老舗和菓子店『小松屋』が作る「飾り菓子」。観賞用の美しい和菓子で、残念ながら食べることはできません。
酒田の名産品「飾り菓子」
飾り菓子は、緻密な木型からかたどったお菓子に丁寧に彩色を施した、思わず惚れ惚れする精巧な逸品。その飾り菓子を代々作り続けている『小松屋』さんで伺ったお話によれば、180年ほど飾り菓子の歴史は一時、途絶えたそうですが、5年前に復活。まさに全国を見渡しても希少な逸品と言えます。
酒田市で食べたいご当地ラーメン
『川柳』の「ワンタンメン」
酒田に来たら、ぜひ食べてほしいのがご当地ラーメン。今回、訪れたのは市中心部にあ町の食堂『川柳』さん。山形は蕎麦屋よりラーメン屋が多い“ラーメン県”。シンプルな魚介系の醤油ラーメンは、素朴でどことなく上品な味わいで心に響きます。
山形から秋田に移動し、おいしいものを大満喫
新幹線の駅でもある秋田駅すぐ近くの「秋田市民市場」
さて、翌朝、酒田駅でレンタカーを返却し、羽越本線に乗って北上しつつ向かったのは秋田県です。周知の通り、秋田の食文化とお酒は非常にレベルが高い! というわけで、現地で出合った“おいしいもの”の話を中心にご紹介していきましょう。
秋田名物「ハタハタ」の唐揚げです
まずは居酒屋『丿貫(へちかん)』さん。地元の食材を活かした料理と豊富な秋田の銘酒がとにかく素晴らしいお店でした。とくに印象的だったのは「ハタハタの唐揚げ」。今にも飛び上がりそうなビジュアルと、絶妙な揚げ具合。もちろん、燗酒との相性は言わずもがな、最高の一皿でした。
「ふくたち」のおひたし
また、「ふくたち」という秋田県南部が発祥の幻の野菜のおひたしも美味しかった! 白菜を真冬に育て、結球させずに収穫したものを「ふくたち」と呼ぶそうで、地元でも幻の野菜として珍重されるそうです。醤油をちょいとたらして生卵をくぐらせていただくその味は、想像を軽々と超える味わいでした。
市場で売られていた「ふくたち」[食楽web]
余談ですが、その後、秋田駅近くの「秋田市民市場」で偶然その「ふくたち」を発見! 買って帰ろうかとかなり悩んだのですが、荷物が多くて断念。しかし今となっては買わなかったことをめちゃくちゃ後悔しています……。
まとめそんなわけで、今回の一番のお土産は、山形県酒田市でしか手に入らない「飾り菓子」でした。久しぶりに帰った自宅の部屋で、「ハタハタ」や「ふくたち」と各地の地酒、そして美しい東北の雪景色に想いを馳せながら、愛らしい「飾り菓子」を眺めています。
今回の旅先●御菓子司 小松屋又三郎
山形県酒田市船場町1-7-46 旧廻船問屋「家坂亭」敷地内
●久村の酒場
山形県酒田市寿町1-41
●川柳
山形県酒田市中町2-6-9
●丿貫(へちかん)
秋田県秋田市中通4-13-12
●著者プロフィール
鈴木修司(すずきしゅうじ)|BEAMS JAPANクリエイティブディレクター
1976年、三重県松阪市生まれ。年間120日近くを旅に費やし、日本各地の様々な場所で魅力的なモノ・ヒト・コトを発掘。大学などで講師を務めることも。著書に『銘品のススメ』、監修書籍に『都道府県おでかけ図鑑』などがある。