「トイレに間に合わない!」がまんできない尿意の原因<過活動膀胱>。専門医「昔は<年をとればだれでも>と研究されなかったが、今では治療薬も…」
2025年2月12日(水)6時30分 婦人公論.jp
(写真提供:Photo AC)
厚生労働省が実施した「令和4年 国民生活基礎調査」で、頻尿の自覚症状がある人の割合(有訴者率)は、人口1000人あたり38.8人だったそう。年齢を重ねると、頻尿や尿もれといった尿トラブルに悩む方が増えてきますが、女性泌尿器科専門医の関口由紀先生によると「50代60代では頻尿や尿もれなどの悩みはあって当たり前」とのこと。そこで今回は、関口先生監修の書籍『「トイレが近い」人のお助けBOOK』から、一部を抜粋してご紹介します。
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トイレががまんできないタイプはおもに過活動膀胱が原因
突然、がまんできない強い尿意(尿意切迫感)に襲われ、「トイレに間に合わない!」となってしまうタイプは、おもに過活動膀胱が原因です。トイレに行く途中やトイレに座る前にもれてしまうことがよくあります。
過活動膀胱は、膀胱に尿が少したまっただけで、膀胱が過剰に活動して排尿モードになってしまう状態です。
また、「蛇口から水を出したとき」や「水の流れる音を聞いたとき」、「ドアノブに触ったとき」などに急にトイレに行きたくなるという人も多いもの。
これらも過活動膀胱によるもので、寒冷刺激などをきっかけとした反射で膀胱が過敏に反応して起こると考えられています。
昔は病気として扱われなかった
膀胱の過剰反応で起こる突然の尿意や頻尿、尿もれについて、昔は「年をとればだれでも経験する症状」とされ、病気としては扱われず対処法も研究されていませんでした。今では、「過活動膀胱」という病名がつけられ、治療薬もいろいろと登場しています。
過活動膀胱の原因はまだはっきりはわかっていませんが、多くは加齢や骨盤底のゆるみなどが関係していると考えられます。また、脳の血流の低下、背骨の障害、脳梗塞などを原因とする神経因性によって起こることもあります。
加齢や骨盤底のゆるみなどによる場合は、骨盤底筋トレーニングや膀胱トレーニングなどのエクササイズによって、6〜7割は改善することがわかっています。
日ごろから骨盤底筋トレーニングで骨盤底の筋肉や靭帯を強化していれば、尿道の蛇口をピタリと閉めることができ、頻尿や尿もれを防ぐことができるのです。
50代60代からの「トイレが近い」は20代30代とどう違う?
20代、30代の頻尿や尿もれは、多くの場合、生まれつき骨盤底(筋肉や靭帯でできたプレート)が弱い人が妊娠・出産することによって骨盤底の靭帯や筋肉がより傷み、骨盤底筋もゆるんでしまうことで起こります。
40代では、全身の筋肉量の減少にともない、骨盤底の筋肉量も減ってきて、尿道の締まりが悪くなってきます。出産で骨盤底が傷んでいる人は、より筋肉の収縮力が弱まります。
(写真提供:Photo AC)
50歳前後で閉経すると、女性ホルモンの急激な減少により、皮膚や皮下組織、筋膜などのハリや弾力がなくなるため、尿道周囲のパッキンもいっそうゆるんできます。その結果、膀胱が過剰に反応する過活動膀胱の傾向がある人は、年齢とともに頻度が増し、トイレが近くなってきます。
年齢を重ねるほど、4つの因子=「体質」「出産」「筋肉量の減少」「閉経」が二重、三重に重なってくるため、50代60代ではトイレが近くなり、尿もれが起こるのは、むしろ当然ともいえます。でも、筋肉は、年齢にかかわらず鍛えることができるため、骨盤底筋トレーニングなどを続けていくことで改善できるのです。
※本稿は、『「トイレが近い」人のお助けBOOK』(主婦の友社)の一部を再編集したものです。