小保方晴子氏の「若山教授・黒幕陰謀説」は不当! 科学ライター2人が科学界のドロドロと手記について激論

2月12日(金)8時0分 tocana

※写真=小保方晴子/撮影=吉田尚弘

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 今年1月にオープンしたウェブサイト「サイエンスニュース(http://sciencenews.co.jp/)」。「科学で世界をブリッジする」をコンセプトに、科学の世界とそうではない世界をつなぎ、科学の面白さをたくさんの人に伝えている。

 物理・数学・宇宙・化学・生物などの科学系のすべての分野をカバーし、難しい事柄でもより多くの人に伝えるためのわかりやすい、科学的知見に立った解説が注目を集めている。

 そんな「サイエンスニュース」で編集統括を務める、トカナでもお馴染みのサイエンスライター川口友万氏と、編集記者を務める山下祐司氏に、科学にまつわるあんなことやこんなことをインタビュー。(全8回予定)

 初回である今回は、STAP細胞の問題について小保方晴子氏の手記『あの日』(講談社)が出版された件について2人に直撃してみた。


■科学者になれなかった小保方氏

——先日、小保方さんの手記が出版されまして、その中で、“研究室内で陥れられた”みたいな話が出ているんですけど、科学者の間ではそういうことってよくあるものなんですか?

山下祐司氏(以下、山下) どうなんでしょうね。誰かを陥れようとかハシゴを外そうとか、実際に見たことはないです。もちろん、人間なので政治的なものもありますし、お金も絡んでくるので、複雑なやり取りはあると思います。

——それは研究室に限ったものではないですもんね。

山下 そうです、人間なんでやっかみとかありますし。小保方さんの手記を読んで思ったのは「あ、こういう(小保方さんみたいにずさんな)人、社会には普通にいるよね」ってことです。

——確かに、小保方さんみたいに、やることやらないでやっかむ人いますよね。

山下 そもそも(小保方さんのケースは)科学者だから云々という話じゃない。科学者ならデータを積み重ねますし、科学はちゃんと証拠を見せなくてはいけない。科学と普通の社会はそこがやっぱり違うのに、混同している。

——科学をするならちゃんとデータを残さないと説得力を持たないということですよね。小保方さんの例でいうと実験ノートとか。あのノートの残し方も決まっているものなんですか?

川口友万氏(以下、川口) やってれば自然とその人なりの書き方になるものですが、指導教官のやり方を真似たりすることが多いですよね……、まあ、真似たほうが早いですし。

——当時は書き方についてかなり批判されていましたが……

山下 (あの実験ノートの書き方は)ありえないですよ。最初研究室に入ったときに先輩とかいるわけですよね。そうすると四六時中一緒にいるので、それを見たりするわけですよ。あ、こうやって書くんだとか、写真こうやって貼るんだとか。それなのに学んでいない。

 小保方さんは手記によれば女子医大やハーバード大にいるときも、相当実験していて、相当書いているはずなのに、書き方すら習得できていないっていうのはちょっと謎ですよね。

——やってきたことに対するノートの完成度の低さには整合性が無いですよね。

川口 (実験内容を)残してないとわかんないじゃん、普通に考えて。1回、2回じゃないんですよ、何千回もやるんですよ。

山下 わかりやすくいうと、文系の普通の学生の方が、もっといいデータとりますよ。

——ノートテイキングとして。

山下 そうそう、理系云々の話ではなくて。

川口 だって授業で一切ノート書かないようなもんだもんね、あれ。それで学校行ってましたって言いはるようなもんだ。

山下 それでテスト悪くて、でも単位くれ! みたいな(笑)

——でも授業には出てたんだって言い張る(笑)

川口 出席はしました! って涙ながらに言い張る(笑)

山下 でもノート見ると落書きがあるみたいな、先生の似顔絵とか。

川口 あんまりやってなかったんじゃないの。

山下 いるふりはできますからね。研究室に行って、なにかやってるふりはできる、まあわからないですけど。

 僕はあの手記をそのまま受け止めるとしても、それでもここはおかしいんじゃないって言えることが多いので、(手記の出版自体を)ダメだよねっていうよりは、「それなら普通ノートとるよね?」って、そういうような批評をした方がいいんじゃないかなと思います。手記を読んだ感想として。

——まずこういう言い分なんだということを受け止めつつ、それにしてはおかしいところがあると。

川口 いい迷惑だよね(手記内で名指しで批判された)若山さんも、本当に。理研も大変ですよ。


■若山教授はファッションショーに出るべき!

山下 あの人は本当にすごい人なんですよ。それこそマウスのクローン移植の超有名な人なんですけど、彼自体も昔疑われたんです。でも彼は実際に自分のテクニックを見せたり、着実に論文として出して世界を納得させたんです。

 普通、「クローンマウスを作った」っていう衝撃的な論文が一本出ただけなら「嘘?」って思うものなんですよ。でもそこで、実験を重ねたり、矢継ぎ早に証拠を出したり見せたりして、ちゃんとステップを踏んでいったことで、今では一般的な知識になったんです。そんな人が犯人扱いされるのは、なんだかなあと思いますね。

——実験ノートとか証拠を積み重ねてきた人が、まったくそういうものを作れない人から犯人扱いされているということですよね。

山下 その逆転現象はかなりシュールな感じでしたけどね。

——そのあたりの事情を知らない人が手記を読んだら、まったく証拠がない人が書いているのにもかかわらず信じてしまうかもしれず、社会的にはすごい損失ですよね。出版によって若山さんのイメージが……。

川口 ここはやっぱり若山さんが出てくるしかない、ファッションショーとかの違うベクトルで。あったじゃないですか、佐村河内さんのゴーストライターだった新垣さんが、女性セブンでファッションモデルかなんかやって、一気に風向きが変わったでしょ。

 (伝えたメディアも)本当は悪いと思ってるんですよ。本人のキャラが面白いってのもあるけど、やっぱり罪悪感があるから起用したんですよ。こんないい人を悪者扱いしてごめんねっていう、“詫び”だと思いますよ。若山さんにも謝ってねって思います。

山下 待ちに待った手記だったんですけどね。

川口 あんまりだったね、もう少し裏があるかと思ったけど。

山下 結局、振り返っただけですからね。

——基本的に自分の言い分を並べただけだと。

山下 そう、ちゃんと辻褄が合うようにはしてあるんですよ。検証委員会がおかしいと指摘したところは若山さんのせいにして、自分にはそういうのが降りかからないような書き方にはなってます。

——事実に即しながら自分の論を展開しているということですね。

川口 あれはソシオパス(社会病質者)の特徴だよね。

山下 俺は触れないです。どうなんですかね、わからないですその辺は。一時期ツイッターとかでは話題に出てましたけどね。

川口 絶対に自分の非を認めない。

——そういう行動が見られるんですか。

川口 と、思いますよ。厳密にはわからないけど。チェックシートとかあるからやらせてみりゃいいんだよ、はっきりわかるから。

2人が編集する科学ウェブメディア
●科学で世界をブリッジする「サイエンスニュース」。
(http://sciencenews.co.jp/)

・川口友万 サイエンスライター。富山大学理学部物理学科卒。著書に『大人の怪しい実験室』(データ・ハウス)など。
・山下祐司 ライター。北里大学大学院理学研究科修士課程修了。基礎科学から応用、先端科学までターゲットは幅広い。

※写真=小保方晴子/撮影=吉田尚弘

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