骨粗しょう症予防は中高年からでも間に合う。背中が曲がる、咳やくしゃみでいつの間にか骨折…原因と注意点を医師が解説

2025年2月14日(金)12時30分 婦人公論.jp


(写真提供:Photo AC)

世界保健統計2023年度版によると、日本人の健康寿命(健康上の問題で日常生活に制限のない期間)は、男性が72.6歳、女性が75.5歳でした。しかし平均寿命のほうがはるかに長く、その差は男女でそれぞれ約9年、約12年あります。要介護や寝たきりの期間が長い傾向にある中、これらを予防し「寿命の質」を高めるためには、どうすれば良いのでしょうか?そこで今回は、これまで5万3000人以上の患者に寄り添ってきた整形外科医・井尻慎一郎先生の著書『健康寿命をのばす! 整形外科医のカラダの痛み相談室』より、今日からできる健康のヒントを一部ご紹介します。

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骨粗しょう症はなぜ起こる?


骨粗しょう症は骨のカルシウムが少なくなり、骨折しやすくなる病気です。国内には約1300万人の患者がいると推測されており、高齢になるほど骨を作る機能が低下し、発症しやすくなります。骨折は転倒や軽徴な動作、咳やくしゃみでも起き、寝たきりの原因の4位になっています。

また、女性ホルモンにはカルシウムを維持する働きがあり、閉経後や50歳を超える頃から女性は急速に骨が弱くなり骨粗しょう症になりやすいので、定期的に骨密度を測り、自分の状態をこまめにチェックしましょう。

ほかにも、腸管からのカルシウムの吸収を助けるビタミンDの不足や運動不足、過度なダイエットなども骨粗しょう症の原因になります。健康寿命を延ばすには病気の予防が大事といわれていますが、重大な合併症である骨折を予防するためにも、骨粗しょう症を治療することは大切なのです。

骨粗しょう症の予防は、若い頃から骨を丈夫にしてカルシウムを貯めておくのがベストですが、中高年からでも適度な運動やカルシウムの多い食事を心がければ間に合います。また、骨粗しょう症と診断されたら、なるべく早く治療を始めるべきです。基本は運動と食事療法で、1日の合計で30〜40分程度ウォーキングするのがお勧めです。

最近は様々な薬剤も使えるので整形外科や内科の医師に相談するのもよいでしょう。

背中の骨が曲がるのは、加齢による防御反応?


年齢を重ねると、人間の背中は曲がっていく傾向にあります。反対に反っていくことはほとんどありません。これは、骨粗しょう症が要因となって、脊椎の圧迫骨折が1カ所ないし数カ所に生じることや、椎間板の前方部分が縮んでいくことによって起こるものです。

脊椎、いわゆる背骨の中心には、脊柱管という空間が首からお尻まで上下に長く通じています。その中を通っているのが脊髄神経で、体を動かすのに重要な役割を果たしています。

年齢を重ねると脊柱管を囲む椎体の骨や靭帯、椎間板などが変形・肥厚し、脊柱管が徐々に狭くなっていきますが、脊柱管は前屈すると広くなります。

つまり、背中が曲がるという現象は、加齢によって脊柱管が狭くなるのを避けようとする体の防御反応でもあるのです。

疲労性腰痛、逆流性食道炎のリスクも


とはいえ、背中が曲がりすぎると上半身を後ろから支える脊柱起立筋が疲れて疲労性腰痛が起こりやすくなります。

また、肺や胃などが圧迫されて肺活量が低下し、逆流性食道炎のリスクが高まります。その際は息切れや胸焼け、胃がつっかえるなどの症状が出ます。


(写真提供:Photo AC)

こうした事態になるのを防ぐためにも毎日軽く背すじを伸ばす体操を心がけましょう。

ただし、骨粗しょう症がある時に深く前へ曲げると、圧迫骨折が生じる恐れがあります。骨粗しょう症があるならば、その治療をぜひ受けて改善しましょう。

特に高齢者は「圧迫骨折」に注意


転倒や咳やくしゃみなどの軽いケガで脊椎の圧迫骨折がよく起こります。また、骨粗しょう症が原因で知らない間に圧迫骨折が起こることがあり「いつの間にか骨折」とか「隠れ骨折」などといいます。

高齢の方の背部痛や腰痛では必ずX線で検査を行いますが、X線検査をしても徐々に骨折が進むために、すぐには分からない場合があります。背中や腰の痛みが続く場合は、1〜2週間後に再度X線検査を受けてください。痛い部位より数センチ上に骨折があることも多く、高齢者では胸椎と腰椎の両方のX線検査を受けるほうが無難です。

圧迫骨折の痛みは、強いこともあれば、ほとんど感じないこともあります。痛みが強い場合は、コルセットやギプスで固定します。また、骨粗しょう症があれば、その治療も同時に行います。

脊椎の圧迫骨折を一度起こすと再び骨折を生じやすくなり、2回骨折を起こすと3回目の骨折がもっと起こりやすくなります。骨折の連鎖を止めることが大切で、最近では骨折の連鎖を止める強力な注射薬が3種類ほど保険適用になっています。

高齢の場合は、長く寝込むと筋力が急速に衰えて寝たきりになる危険があり、よほどの痛みでない限り痛くてもコルセットを着けたりして、できるだけ少しでも起きてゆっくりと普段通りの生活を送ることが大切です。寝込みすぎに注意してください。

※本稿は、『健康寿命をのばす! 整形外科医のカラダの痛み相談室』(創元社)の一部を再編集したものです。

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