絵本『もうじきたべられるぼく』がつなぐ命への思い―和歌山県知事・岸本周平さん×絵本作家・はせがわゆうじさん対談
2025年2月15日(土)9時0分 婦人公論.jp
大手町・読売新聞ビル3階ギャラリーを訪れた岸本周平和歌山県知事(左)と絵本作家のはせがわゆうじさん
2022年8月に出版され、「食べられる運命を受け入れようとする子牛が一目お母さんに会いに行く」物語が反響を呼び、シリーズ累計28万部となっている絵本『もうじきたべられるぼく』。和歌山県の岸本周平知事が書店でこの本を目にし、リュックを背負って傘を背中に差した愛らしい姿に惹かれて購入。読後感をXにポストしたことがきっかけで、知事と『もうじきたべられるぼく』の著者・はせがわゆうじさんの対談が企画されました
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原画を前に「泣きそうになります」
1月31日、和歌山県のテレビ広報番組『きのくに21』(テレビ和歌山)、ラジオ(和歌山放送)、総合情報誌『和-nagomi-』の3媒体の取材のため、現在「はせがわゆうじ 『もうじきたべられるぼく』原画展」が開催されている大手町・よみうりギャラリーに知事が来訪。
色鉛筆で描かれた原画を前に「また泣きそうになります」と言いながら見入る知事に、はせがわさんが画材やタッチ、絵の背景などを説明。印刷ではどうしても出し切れないという色合いの原画を前に、会話が盛り上がります。ギャラリー内には、原画だけでなく、第7回「未来屋えほん大賞」や「読者が選ぶ東京新聞広告賞 部門賞」の受賞トロフィーのほか、絵本から生まれた楽曲「もうじきたべられるぼく」のPOPなども展示されています。
原画を前に談笑するはせがわさん(左)と知事
原画展見学の後、場所を移して対談がスタート。改めて、知事がこの絵本を読んだきっかけや、心を打たれた部分などについて語られました。
「自分はやはり、食育ではなく、母親と息子の関係としてこの絵本を読みました」と、亡くなった母との思い出について語る知事に、「お母さんだけでなく、自分よりも大切な人がいて、大変な状況にあっても、自分よりもその人のことを思いやる気持ちを大切に描きました」というはせがわさん。
絵本作家になったきっかけは「子どもの頃から、白い紙があれば絵を描いていて、好きでやっているうちに仕事になった」と言うはせがわさんに、アメリカで子育てや、教える立場を経験した知事は、「平均点を目指させる教育よりも、好きな事を伸ばせるような学校づくりを目指したい」と熱意で応えます。知事は小中高生の自死の問題にも触れ、はせがわさんは、次作のテーマとして「いじめる側の子どもが、もし読んでいたら変わっていたかも」という本を作りたいと意欲を語っていました。
話題は和歌山県との関わりについて移り、古くからパンダをテーマにイラストを描いてきたはせがわさんに「ぜひ南紀白浜のアドベンチャーワールドでパンダを見て下さい」と知事がお誘いを。
はせがわさんオリジナルのポスター。パンダほか、梅、みかん、イルカ、カツオなど、和歌山の名産品が描かれている
はせがわさんが絵を手掛けた『ふたごぱんだ』シリーズ(文・西島三重子)の絵本が和歌山の熊野白浜リゾート空港で販売された際に、はせがわさんが手がけたパンダと和歌山の名産品をコラボさせたオリジナルポスターにも話題が。
対談後に知事、はせがわさんがポスターにサインし、和やかに対談が終了しました。