人工原子を利用した安定的な量子シリコンチップの開発に成功(オーストラリア研究

2月15日(土)9時0分 カラパイア

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UNSW

 
 シリコンチップの上に作られた人工原子は、量子コンピューターの新しい基礎となる可能性を秘めている。

 こうした人工原子を安定させる方法が発見され、そのおかげでより一貫性のある量子ビットを作り出すことができるかもしれないのだ。
・本物の原子のように規則的な電子殻を持つ人工原子

 原子の周りでは、電子が原子核を取り囲む3次元軌道の中を飛び回っている。この3次元軌道のことを「電子殻」という。

 一方、「人工原子」や「量子ドット」と呼ばれるナノスケールの半導体結晶は、電場によって電子を電子殻の中に補足することができる。

 オーストラリア、ニュー・サウス・ウェールズ大学の研究グループが実証したのは、ゲート電極でシリコンに電圧をかけて量子ドットを作り出し、さらにシリコンの余った電子を量子ドットに引き寄せられるということだ。

 ゲート電極で電圧をかけると電子が誘引され、それらが複数の電子殻を持つより重い原子の真似をするようになる。こうして作られた人工原子の電子殻は、本物の原子と同じように、規則的で予測できる。

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CIPhotos/iStock

・「1」と「0」と「重ね合わせ」で情報を処理する量子ビット

1か0かで情報を処理する従来のビットとは違い、量子ビットは、電子のスピンを利用することで、1と0のほか、同時にその両方の状態(重ね合わせ)を取ることができる。

 このことは、連続した処理だけでなく、並列計算が可能になることを意味している。量子コンピューターが強力なのはこのためだ。

 水素、リチウム、ナトリウムは、電子殻にたった1つしか電子を持たない元素だ。研究グループがこれらの元素に相当する人工原子を作ると、その単一の電子を量子ビットとして利用できたという。

 じつは、この研究グループは2014年にもシリコンチップ上に量子ビットを作り出したことがある。しかし、このときは原子レベルで量子ビットの振る舞いが破綻してしまうという欠陥があった(それでも99パーセント以上の情報処理精度が実現されていた)。

 今回の成功によって、エラー発生率を最小限にまで抑えられるかもしれないという。

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Vladimir_Timofeev/iStock

・より堅牢な量子ビットの開発へ

本物の原子でも人工原子でも、電子が完全な殻を形成すると、その極が反対方向に並んでしまい、系内のスピン総和はゼロになってしまいます。

このために量子ビットとしては役に立ちません。ここにもう1つ電子をくわえて新しい電子殻を作ってやると、これがスピンを持ち、量子ビットとして使えるようになります。(アンドリュー・ジュラック氏)

 今回の研究によって、人工原子の外殻にある電子のスピンをコントロール可能で、これによって信頼性の高い安定した量子ビットが得られることが証明されたとのこと。

 1つだけの電子では非常に不安定だが、5個、13個、あるいは25個の電子を持つ人工原子ならば、より堅牢な量子ビットとして利用できるかもしれないそうだ。

 この研究は『Nature Communications』(2月11日付)に掲載された。

References:scimex/ written by hiroching / edited by parumo

カラパイア

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