「車いすが健常者・二足歩行が障害者」の世界が体験できるレストランに行ってきた もう理不尽すぎて泣きたい

2月15日(土)16時0分 ねとらぼ

バリアフルレストランへようこそ!

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 もしも二足歩行者がマイノリティーだったら——そんな車いすユーザーが多数になった社会を疑似体験できるレストランに行ってきました。自分の足で歩ける人は、このレストランに入店した途端に障害者として扱われます。筆者はあまりにも胸苦しくて、途中で泣きたくなりました。どんな体験だったのか、レポートしていきましょう。
 まず、入店前に「車いすユーザーが暮らしやすい環境とは?」を考え、記入するよう促されます。あとで役に立つので、みなさんもここでいくつか考えてみてください。筆者は「段差がない」「商品棚が低い」……などなどを紙に記入しました。
 そして、レストランに入店します。レストランのオーナーを務めるのは車いすYouTuberの寺田ユースケさん。「いらっしゃいませー」と出迎えてくれます。ところが入口が低い。二足歩行者はかがまないと入店できません。もう少し高くしてくれればいいのに……と思いますが、車いすユーザーが多数の世界では、これがオシャレで流行ってるとか、天井を高くするとコストがかかるとかで、きっと高くする理由がないのでしょう。
 屈んで入店しようとすると、オーナーに「介助者の方はいないんですか?」と聞かれました。反応に困っていると、オーナーはけげんそうな顔をします。そして店内に案内されました。
 店内の天井の高さは170センチ。身長が低い筆者は気になりませんが、背が高い方は大変そうで、背中を常に丸めています。頭をぶつける危険がある人には、ヘルメットや車いすを貸し出していました。
 料理はビッフェスタイル。腰くらいの高さのテーブルに料理が置かれています。全てが車いすユーザーにピッタリな規格。座席にイスはなく、二足歩行者は立食です。「食器を持ち上げてはいけない」という謎ルールもあるので、背が高い人は腰をかがめて食べていて、本当に大変そうでした。
 車いすの人は車輪を漕ぐときに手が汚れるため、テーブルにはアルコールスプレーとおしぼり2枚が置いてあります。車いすの人が、普段困るのはドリンクバーなんだそうです。フタがないドリンクを車いすにセットして運ぶとこぼれてしまいます。ですので、バリアフルレストランではフタができるコップが標準になっていました。
 筆者の個人の感想でいえば、天井やテーブルが低いといったハード面は受け入れられるものでした。イスがないのが標準な社会なら、折りたたみ椅子を持ち歩けばいいと思いましたし、筆者は身長が低いのでテーブルが低いのなんて普段の生活よりも使いやすかったくらいです。立ち食いそば屋の高いテーブルより、こっちのがマシと思うくらい。けれども、なんともしがたいと感じたのは人の対応でした。
 食事を始めようとすると、オーナーが近づいてきました。テーブルの上にあるアルコールスプレーを指さし「これ、ちゃんと使えてますか?」と聞いてきます。何を聞かれているのか理解できない二足歩行者。戸惑いながら「大丈夫です」と答えるも、オーナーは「お手伝いしますよ。大変でしょ」とスプレーを手にプシュプシュしてくれます。「あ、どうも……」と接客された二足歩行者の方はあっけにとられていました。オーナーは、障害者である二足歩行者に過剰なほど気配りしてくれていたようです。
 食事中、突然スタッフが「中腰で食べてください」と声を張り上げます。二足歩行者たちは何を言われているのか理解できず、そのまま立って食事を続けます。すると、何回も何回も「できればかがんでいただけませんか?」と声かけされます。でも、なかなか中腰にはなりません。スタッフはだんだん切れ気味に。「全然、中腰になってくれない」とぼやき始めます。
 すると、オーナーが駆け付け、スタッフを裏に呼び出します。裏からオーナーの叱責が聞こえてきます。
オーナー:「対応が雑だよ。正直、僕だって来て欲しくないよ。でも、やんなきゃダメなんだよ。それが優しさだから。ちゃんとやってください、お願いします。対応が雑すぎます」
スタッフ:「(不満そうに)申し訳ございません」
 ぼうぜんと聞いているしかありません。この騒ぎのあと、オーナーが出てきて「料理いかがですか? 産地直送の玉ネギで……」と接客しに来てくれましたが、どんな顔をしたらいいものやら。
 他のスタッフが背後で「対応が雑っていっても、あんまり構えすぎてもさー」「っていうか、今日二足歩行者多くない?」「なんか、イベントでもあんのかなー」と愚痴をこぼしているのが聞こえてきました。モウ、ワタシ、カエリタイデス。
 いかがでしたでしょうか。この体験から感じることは人それぞれではないかと思います。教科書的な答えが示されるわけではないので、モヤモヤが残ります。
 “バリアフルレストラン”は公益財団法人日本ケアフィット共育機構が“チーム誰とも”という活動戦略の中で実施しています。事務局の佐藤氏は、バリアフルレストランの目的は「障害の社会モデルの考え方」を直感的に感じてもらうことにあるといいます。
 レストラン入店前に「車いすユーザーが暮らしやすい環境」を考えてもらいましたが、そこで何を考えたか思い返してみてください。「車いすに乗っていない人は今の生活のままで、そこに車いすユーザーに合流してもらおう」という発想に自然になっています。バリアフルレストランを立ち上げた理由は、このような無意識の偏りに気づいてもらいたいからなんだそうです。
 バリアフルレストランでは、車いすユーザーはなんの困りごともなく暮らしていました。それに対して、二足歩行者はいろんなことに障害を感じ、しいたげられた対応をされました。これを二足歩行者は障害があるから仕方がないと思えたでしょうか。
 バリアフルレストランでされた数々の対応は、車いすユーザーである寺田さんやスタッフ役の方々からすると、“車いすあるある”なんだそうです。少し大げさにはしたものの、似たような経験をしているのだそうです。
 このイベントは答えが提示される訳ではありません。まずは、無意識で起きている問題を認識し、誰もが、自分と違う人と共に生きる社会をどうやって作ったらいいのかを考え続けていくためのものだそうです。今回は、期間と参加者を限定したイベントでしたが、2020年秋には一般公開される予定です。

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