岩政大樹、舌を巻くイニエスタにビジャそしてリージョ

2月16日(土)6時0分 JBpress

開幕を1週間後に控えたJリーグ。今シーズンの「チームビジョン」はどんなものか。元日本代表の岩政大樹氏がキャンプをとおして各チームを分析する。今回は、ヴィッセル神戸。


目に付いた怪我人の少なさと一流のスタッフ

 2月10日、11日と2日間、沖縄でキャンプを張るヴィッセル神戸の練習を見てきました。こちらも『スカサカ!ライブ』の取材を兼ねたものでしたが、ファンマ・リージョ監督の練習を見に行くのは初めて。グアルディオラが師と仰ぐ知将はどんな方なのか。また、イニエスタやビジャのプレーは? 行く前から興味は尽きませんでした。

 初日は、この日、神戸から移動してきたこともあり、長めのランニングから始まりました。その後、ステップワークのトレーニングを挟み、動きの意識づけを行った上でボール回しとポゼッションのトレーニング。

 まず気付いたのは怪我人の少なさでした。アメリカで練習とトレーニングマッチを繰り返してきたようですが、開幕前のこの時期に怪我人が少ないことは好材料でしょう。

 おかげで、イニエスタ選手やビジャ選手もしっかりと見ることができました。
彼らのプレーは一目瞭然、動きに無駄がありません。「無駄がない」とは”必要な場所以外は筋肉を使わない”ということで、彼らは動きの中で決して上下動することがありません。頭の位置が変わらず、スーッと前に出て行くように動いていきます。

 2日目の初めに行われた杉本龍勇さん(フィジカルトレーニングアドバイザー)のトレーニングでは、それがより鮮明に分かりました。杉本さんは岡崎慎司選手や吉田麻也選手を指導され、いくつかのJクラブでも仕事されている方。ヴィッセルは、監督や選手だけでなく、通訳やコーチなどにもこうした一流の人材を呼んで強化を図っています。非常に興味深い取り組みで、その一つ一つが結実したら、と期待せずにはいられません。


圧巻のイニエスタ、超一流の証明

 さて、イニエスタ選手の動きです。杉本さんのトレーニングでは足を回したり、サイドステップをしたり、色々な動きの中で姿勢を意識させていくのですが、イニエスタ選手はどのような動きをしてもまるでブレません。股関節とお尻の辺りで全て足を操作できているので、上半身など、無駄なところに力が入ることなく、常に自然体が保たれています。ビジャ選手も同様に素晴らしい動き方をしていましたが、彼らが超一流であることはそんなところからも見て取れました。

 練習の内容に関しては、基本的にスペイン人のコーチ・イニーゴさんとホルヘさんが指揮をして行われていました。リージョ監督はその所々で指示を出し、練習の合間には選手たちと積極的にコミュニケーションを取っていきます。プレーを止めたり、長々と説明を加えたり、といったことはほとんどなく、選手たちにボール回しやゲーム形式の練習の中で、自然に必要なプレー原則を獲得していってもらう意図があるように感じました。

 そのプレー原則とは、角度をつけることや動き出しの順番、タイミング、見ておくべきスペース、パスの長短のリズム。「こういうときにこうしよう」という決まり切ったものではなく、状況に即して選手たちがより良いプレーを選んでいくための判断基準を与えるものだと思いました。

 2日目も杉本さんのトレーニングの後は、ボール回しにフィジカル要素の強いシュートトレーニング。そして最後はフリーマン(編集部注:常にボールを保持する側の味方になる選手)のいるゲーム。リージョ監督のトレーニングは全て一貫したイメージ、いわゆるプレーモデルから構築されていることが感じられました。

 ここから試合が始まり「対相手」が出てきたときにどういう姿をピッチに見せてくれるのか。ヴィッセル神戸が今シーズンのJリーグを盛り上げてくれるクラブになることは疑いようのない事実ですが、その歩みが俄然楽しみになりました。


リージョ監督から伝わる哲学的思考力

 さて、リージョ監督に言及しておきましょう。会うまではどのような方かと色々な記事を通して訝しく思っていましたが、実際はなんともオープンな方でした。選手やスタッフに分け隔てなく屈託のない笑顔で接し、きっと選手たちに本音でぶつかる方なのだろうと思いました。

 一方で、なんとなくですが、頭の中はぐるぐると深いところまで思考が回っている印象を受けました。これまでも、漏れ伝わる言葉の数々から哲学的なところが垣間見える方でしたが、「一般的な当たり前」を安易に「自分の当たり前」に加えない“自分なり”がある方だという印象はより強くなりました。

 システムがどう、戦術がどう、という目に見える事象、現象でサッカーを捉えるのではなく、選手たちのプレーの一つ一つの判断がつなぎ合わされてチームの全体像になる。そんなサッカーの描き方をされているのではないか。勝手にそう思いました。いつか、必ずそれを解き明かしにいきたいと思います。

 さて、今年再注目のヴィッセル神戸ですが、スタッフとすれば順調と言える準備ができていると思います。

 ただ、大きなものを勝ち取ろうとするなら不安があることも見えました。前線に比べて守備陣の手薄さは否めず、目指す理想を追求する中で、守備の問題はきっと出てくるだろうと思います。また、外国人選手たちの質があまりにも高いことから、“外国人とそれ以外”がどうも繋がりを有していないように見えました。そのあたりは新加入ではありますが、山口蛍選手や西大伍選手の役割がシーズンが深まるごとに大きくなるのではないかと思います。

 いずれにしても、まずはどんなシーズンのスタートを切るのか。そしてそれによってどうチームの形を変化させるのか。そして、シーズンの最後にどんな最終形を見せてくれるのか。

 シーズンを通して、要チェックや!

筆者:岩政 大樹

JBpress

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