ICTの力でワーケーションや鳥獣害対策等の課題解決を進める関川村とNTT東日本

2月17日(水)13時0分 マイナビニュース

旧米沢街道の宿場町としての町並みを残す、新潟県北部の関川村。同村はいま、新たな観光ニーズの誘引と地域活性化を目指し、ICTを活用した取り組みを進めている。NTT東日本 新潟支店の協力のもと実証実験が行われた「ワーケーション」および「鳥獣害対策」について、関川村役場に詳しく話を伺ってみよう。
○2つのICT実証実験を行った関川村
山形県にもほど近い、新潟県北部の山間に位置する人口約5,000人の関川村。村の中央を清流「荒川」が流れ、「渡辺邸」を始めとした豪農・豪商の邸宅や庭園が残る土地柄だ。同時に、5つの温泉地から成る越後関川温泉郷を抱える観光地としての側面を持ち、豊かな自然と宿場町の趣を現代に残すその風光明媚な景観により、2007年には「美しい日本の歴史的風土100選」にも選定されている。
そんな関川村がいま、ICTが村民にとって身近なものとなるよう、取り組みを加速させているという。光回線を全村に配備するとともに、小中学校へのICT教育を拡充。電子黒板の導入やWi-Fiの整備などを進めつつ、昨年から観光などの分野でもICTの活用を始めている。
なかでも注目を集めているのがNTT東日本 新潟支店とともに進めている、東桂苑での「ワーケーション」実証実験と、ICTを活用した「鳥獣害対策」の実証実験だ。この2つの実験について、関川村役場の大島祐治氏、市井隆範氏、長谷川健太氏に詳しく話を聞いてみたい。
○指定文化財をワーケーションスペースに
越後関川温泉郷を始めとした観光が重要な産業となっている関川村。しかし、2020年の新型コロナウイルス感染拡大に伴い、観光客は減少の一途をたどっていた。その一方で、休暇を兼ねて地方で仕事を行うニーズの高まりから、近年「ワーケーション」が話題となっている。
ワーケーション(Workation)とは、仕事(work)と休暇(vacation)を組み合わせた造語で、休暇を兼ねて観光地で仕事をするという働き方を指す。2020年夏ごろには上越地方でも話題となっており、他所の事例なども関川村役場に届いていた。関川村は、観光スポットとして人気の高い指定文化財「東桂苑」を、このワーケーションのための施設として活用できないかと考えたのだ。
東桂苑は、明治38年に当時の建設技術の粋を集めて建築された日本瓦葺寄棟造りの古民家だ。現在は一般開放されており、併設された「東桂苑deカフェ」や「東桂苑deお蕎麦」で日本庭園を眺めながら一服したり、浴衣を着て撮影したりすることもできる。静かで景観もよい東桂苑はワーケーションに最適な環境といえるだろう。
「そもそものきっかけは、来場されたお客さまから『こういうところで仕事ができたらいいね』という、なにげない一言をいただいたことにあります。それが村長の耳に届き『ならやっちゃいなよ』という鶴の一声で、この事業が始動しました」(大島氏)。
こうして関川村は、東桂苑にワーケーションスペース「TOUKEI-EN office」を開設。NTT東日本 新潟支店とともに、2020年10月2日〜11月15日にかけて実証実験を行う運びとなった。
○通信速度やセキュリティにも配慮した「TOUKEI-EN office」
「TOUKEI-EN office」は、新型コロナウイルス感染防止対策を行ったデスク・座席を一室当たり8席準備している。本来は12人まで入室が可能なのだが、コロナ禍であることを鑑みて席数を減らしているそうだ。1人あたり1時間400円、3時間以上は一律1,000円と料金もリーズナブル。1日4,000円で部屋ごと借りることも可能だ。
設備としては、有線LANやWi-Fiといった通信設備、FAX付きプリンター、50インチモニター、コインロッカーなどを用意した。NTT東日本 新潟支店の協力によってネットワークの速度や各端末のセキュリティも万全を期しており、快適・安全に仕事ができることも特長といえる。
観光地域政策室の長谷川氏は「明治時代に建築された古民家ですので、Wi-Fiのアクセスポイントやコインロッカーなどの設備をそのまま導入すると、非常に目立ってしまいます。景観に馴染むような機器や設備を選定したり、配置にも工夫を凝らしましたが、これが大変でしたね」とその苦労を語る。
また大島氏は「『案外、簡単にできるんじゃないか?』と思っていましたが、実際にやるとなるとわからないことだらけでした。NTT東日本さんには、開設するにあたり"やるべきこと"を明確にしていただくことができ、大変助けられました」と、NTT東日本の協力に感謝を述べた。
実証実験に参加した人たちからは、想定通り「景色がいい」「非日常的なところで仕事ができる」といった喜びの声が上がっており、反応は上々といえる。さらに、併設しているカフェの売り上げが大きく伸びたという報告もあったそうだ。
関川村では現在、地元の旅館などに提携を求め、ワーケーションの取り組みを村全体に広げるべく尽力しているという。コロナ禍が収束しても、一度変わった働き方が巻き戻ることはないだろう。同村のワーケーションへの取り組みは、今後さらに注目を集めそうだ。
○クマの被害を抑えるためにICTを導入
関川村が行ったもう1つの試みが、ICTを用いた「鳥獣害対策」だ。近年、地方では鳥獣の駆除や対策に当たる人たちの高齢化が問題となっている。対策を行うのは29名の猟友会会員だが、平均年齢は60歳を超えており、実際に捕獲を担当できる人は10名前後。2020年に30代の方が1人入会したそうだが、人数不足は否めない。
そんな中、2019〜2020年度は山間部の堅果類が不作となり、餌を求めたクマの出没が例年の2倍以上発生。関川村ではクマの被害によって亡くなられた方もいたという。必然的に頻繁な見回りを余儀なくされるが、高齢化が進む猟友会の負担は非常に重くなった。
これを改善するためにNTT東日本 新潟支店が2020年の春に提案したのが、ICTを活用した鳥獣害対策だ。もともと関川村とNTT東日本は、ICTを用いたスマート農業を進めるうえで協力体制にあった。同じようにICTを用いて、クマの捕獲を行ってみてはどうかというアイデアだ。
○1カ月で2頭のクマを捕獲することに成功
NTT東日本が提案したICTは、「みまわローラ」という名称で同社が取り扱う鳥獣害対策ICTだ。発信機とカメラ付き検知センサーをボックスに入れてひもでつなぎ、捕獲時に檻が閉じるとひもが引っ張られてスイッチがONになるというもので、起動すると檻の様子を写真撮影するとともに、画像とテキストがメールで送信される。
山間部ともなるとLTE通信の圏外になるが、そういった場所では省電力で遠距離通信を実現するLPWA (Low Power Wide Area)を用いた子機を使い、LTE圏内の親機と通信する仕組み。
だがNTT東日本といえど、クマの捕獲にICTを活用する事例はそれまで存在しなかったため、罠にも工夫が求められた。実証実験で利用されたのは、一般的な檻型の罠と、ドラム缶型の罠の2種類。これが関川村内に4台設置された。
だが「大変だったのは設備面ではありません」と市井氏は話す。ICTを導入しても、それを利用して捕獲する中心が猟友会であることに変わりはない。この設備を用いて作業をしてもらうための調整がもっとも苦労した点だったという。
「いきなり『ICTの檻』といわれても、猟友会の皆さんにとっては『それはなんだい?』という話なので、中身を理解していただくために勉強会を開きました。猟友会には高齢の方も多くいらっしゃいますからね」(市井氏)。
こうして2020年11月1日〜30日にかけ、鳥獣害対策ICTの実証実験が行われた。実証実験中には実際に10数件の通知が確認されたという。もちろんその中には小動物がいたずらをしたものも含まれるが、実際にこの期間に2頭のクマを捕獲することに成功したそうだ。残念ながら撮影には失敗したそうだが、確実な成果を上げたことがわかる。
「猟友会の方も、実際に使っていただくことで、その利便性を実感されたようです。現在では『動画が見られたらもっといいよね』という声や、『生息関係の調査にも活用できるのでは』という意見も上がっています。今回、システム自体はNTT東日本さまにトライアルという形で提供いただき、バックアップもいただくことができ、大変助かりました。今後は、猟友会がより使いやすいものを追求しつつ、 必要に応じて勉強会をやっていきたいと思います」(市井氏)。
○ICTを村民にとって身近なものに
ICTによって地域の活性と課題解決を進める関川村。同村とNTT東日本 新潟支店との取り組みは成功を収めているが、今後のICTの推進にどのような展望を持っているのだろうか。大島氏は「関川村全体で言いますと、やはり村民のみなさまへの普及を進めることが一番利活用に繋がるのではないかと思います」と話すとともに、次のように回答した。
「現在、村民の多くはICTに対して『外部向け』というイメージを持たれており、自分の身近な存在だと感じていません。高齢者の方は特にそうでしょう。まずは機器に触れる機会を増やし、利活用を含めて『決して怖いものではない』と伝え、生涯学習や健康増進など色々な分野で役立つということを啓発していければと考えています。ICTは生活に身近なもので、利便性の向上につながるということを感じてほしいと思います」(大島氏)。
さらにNTT東日本に向けては「ご協力および村民や対外的な周知も行っていただきありがとうございました。一方で、今、目の前にある道具を使うことに終始している場面が見受けられる印象もあります。『ICTを活かすとこういうことができるんだ』ということをぜひ今後も(できれば安価に)ご提案いただきたいと思います」とコメントを残した。
コロナ禍という現状をふまえ、地方自治体から発信されるICT活用事例が増えている。今回の関川村の実証実験は、多くの地方都市が同様に抱える課題を解決するための一助となりそうだ。

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