「スーパーパワーファミリー」が増加、「いつの間にか富裕層」となる一般生活者の特徴とは?
2025年2月17日(月)12時9分 マイナビニュース
野村総合研究所(以下「NRI」)は、2023年の日本における純金融資産保有額別の世帯数と資産規模を、各種統計などから推計した。
預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険など、世帯として保有する金融資産の合計額から負債を差し引いた「純金融資産保有額」を基に、総世帯を5つの階層に分類し、各々の世帯数と資産保有額を推計した。結果は、純金融資産保有額が1億円以上5億円未満の「富裕層」、および同5億円以上の「超富裕層」を合わせると165.3万世帯で、2021年の148.5世帯から11.3%増加していることがわかった。内訳は、富裕層が153.5万世帯、超富裕層が11.8万世帯であった。
2023年の富裕層・超富裕層の合計世帯数は、この推計を開始した2005年以降増加しており、富裕層・超富裕層それぞれの世帯数も、2013年以降は一貫して増加傾向にあることがわかった。
○富裕層・超富裕層の純金融資産総額も増加が続く
2021年から2023年にかけて、富裕層・超富裕層が保有する純金融資産の総額は、それぞれ29.0%(259兆円から334兆円)、28.6%(105兆円から135兆円)増加し、両者の合計額は28.8%(364兆円から469兆円)増加した(図1および表1)。また、富裕層・超富裕層それぞれの純金融資産総額は、世帯数と同様、2013年以降一貫して増加を続けていることがわかった(表1)。
過去10年近くにわたって富裕層・超富裕層の世帯数および純金融資産総額が伸長している要因は、株式や投資信託などの資産価値の上昇により、これらのリスク性資産の比率が高い富裕層・超富裕層の保有資産額が増加したことに加え、準富裕層の一部が富裕層に、また、富裕層の一部が超富裕層に移行したためと考えられるという。
特に2023年においては、株価の急騰によりリスク性資産の資産価値が大きく増加したことや、円安の進行により外貨建て資産の実質的価値が増加したことにより、富裕層・超富裕層の世帯数及び純金融資産総額が大きく伸長したと考えられるそう。また、増加傾向にある「相続」によって、相続人が富裕層・超富裕層となるケースも増えていると考えられるとのこと。
2023年は、コロナ禍の収束に伴ってそれ以降多くの経済指標が回復基調に転じており、今後の富裕層・超富裕層の世帯数や純金融資産総額に影響を与える可能性があるという。
○「いつの間にか富裕層」となる一般生活者
今回の推計を通じて、新たに二つの層がみえてきたという。一つ目は、近年の株式相場の上昇を受け、運用資産が急増したために富裕層となった層で、NRIではこれを「いつの間にか富裕層」と定義した。年齢は40代後半から50代、職業としては主に一般の会社員で、従業員持株会や確定拠出年金、NISA枠の活用を通じて、運用資産が1億円を超えたケースが多くみられるという。2022年に実施した「NRI生活者1万人アンケート(金融編)」の調査結果および近年のTOPIXの騰落などから試算すると、準富裕層から富裕層となった「いつの間にか富裕層」は、富裕層以上の世帯のうち1~2割程度を占めていると推察されるそう。また、アッパーマス層から準富裕層となった人の中にも、「いつの間にか富裕層」は一定数存在するとみられるとのこと。
「いつの間にか富裕層」は、給与収入の範囲内でこれまでと変わらない生活スタイルを維持しており、金融資産が増えても金融機関との付き合いはこれまでと変わらないという、マス層に近い特徴があるそう。また、資産運用を金融機関の担当者や親族・知人の勧めに任せ、自らは関与・関知していない人も一定数存在するという。そのため、従来の富裕層と比べて金融知識が十分ではなく、商品特性やリスクの理解が不十分なままに金融商品を購入する可能性があるとのこと。また、金融リテラシーが高くても、急増した保有金融資産の適切な分散投資方針や、富裕層向けの金融商品特性に関する知識が十分でないケースがみられる点も、「いつの間にか富裕層」の特徴であるという。
○増加が見込まれる「スーパーパワーファミリー」
もう一つは、都市部居住で世帯年収3,000万円以上の大企業共働き世帯に代表される層であり、NRIではこれを「スーパーパワーファミリー」と定義した。なお、「パワーファミリー」とは、世帯年収1,500万円以上を目安とする共働き世帯を指す。「スーパーパワーファミリー」は、20〜30歳代の間は子育て・教育の支出や住宅ローン支払いに苦労するが、昇格・昇給して世帯年収が2,000万円を超える40歳前後から急速に金融資産が積み上がるそう。最終的には世帯年収3,000万円に達し、50歳前後には富裕層となる可能性があるという。地方部においても、生活コストの地域差を考慮すると世帯年収1,000万以上の大企業共働き世帯は、60歳前後に富裕層となる可能性があるとのこと。消費性向が高く、不動産や高級消費財などを積極的に購入する「スーパーパワーファミリー」は、女性の社会進出の加速や働き方の多様化に伴う就労機会の増大によって、今後も増加が見込まれるという。
富裕層・超富裕層の増加に伴い、その資産構成や資産形成の方法も多様化しているそう。本邦企業においては、資産運用ニーズの背景にある顧客の世帯構成やキャッシュフロー、ライフスタイルに対する理解を深めると同時に、さらなるデジタルチャネルの活用や顧客との早期の接点構築、顧客管理の高度化が求められているとのこと。