行列してでも食べたい絶品つけ麺! ラーメン官僚が絶賛する秋葉原『ほたて日和』がスゴいワケ

2023年2月18日(土)10時51分 食楽web


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 ここ数年で一番の新店大豊作に沸いた、昨年の東京ラーメンシーン。この未曽有の新店開業フィーバーは、今年(2023年)に入っても収束するところを知らない状況。この1月だけで、すでに複数の有力新店が産声を上げ、ラーメン好きの舌と胃袋を悦ばせているところです。

 ということで、2023年に入って約1ケ月が経ち、早速、本年オープンした新店を紹介…と言いたいところですが、実は、開業は昨年(2022年12月11日)であるものの、絶対にとり上げておかなければならない超優良店がまだ紹介できておらず、今回は、そのお店についてレポを書かせていただこうと思います。


昭和通りから細い路地に入り、その路地を浅草橋方面に向かって直進。2分程度歩くと左手に見えてくる建物が『ほたて日和』です。店前に連なる行列が、絶好のランドマークとなってくれることでしょう

 その店舗の名前は、『Tokyo Style Noodle ほたて日和』。神保町の実力店『麺屋33』の姉妹店です。

「ほっこりと心安らげるような、優しい空間を築き上げていきたい」という想いを込めて、及川淳一店主によって『ほたて日和』と名付けられた同店は、オープンからまだ2ヶ月弱しか経過していないにもかかわらず、評判が評判を呼び大ブレイク。ラーメン激戦区・秋葉原においても指折りの大行列を作り、行列の伸びが特に著しい土曜・日曜・祝日は、記帳制を導入(1月28日以降)するに至るほどの人気ぶりを呈しています。

 ここまで高い話題性を有する『ほたて日和』。私も、オープン早々の昨年12月の段階で、先んじて同店へと足を運んだ複数名のラーメンマニアから「想像していたよりもはるかにハイレベルなつけ麺が提供されている。万難を排して足を運ぶ必要がある店だ」との情報を入手し、訪問の機会を虎視眈々と窺っていたところ。そして、正月明けの1月7日、ようやく機会を得て、お店にお伺いすることが叶った次第です。

 店舗の場所は、各線秋葉原駅か300m弱。徒歩約3分の位置にあります。「『らあめん広』が残した物件でラーメン店を営んでくれる人を不動産屋が探していたらしく、その不動産屋から、『三河屋製麺』を通じて出店オファーがありました」。


明るい雰囲気の店内。カップルでも入りやすいオシャレな空間

 ちなみに、『麺屋33』は及川氏の個人経営、『ほたて日和』は同氏が代表社員を務める企業の経営。『麺屋33』が「姉」、『ほたて日和』が「妹」という関係性を有します。『麺屋33』で『三河屋製麺』とのお付き合いがあったからこそ、生まれたご縁ということですね。

「数年前から時間を見つけてはブラッシュアップを重ね続けてきた昆布水つけ麺が、ようやく自分自身が納得できる水準にまで到達したこと。また、秋葉原であれば、『麺屋33』が店舗を構える神保町からも近く、経営にもあまり支障は生じないのではないかと思い、この物件での出店を決意しました」。


暖簾。白を基調に右下に『Tokyo Style Noodle ほたて日和』の文字が。『らあめん広』時代の訪問客を選びそうな外観も趣深いものでしたが、『ほたて日和』のカップル客でも抵抗なく入店できそうな明るい装いにも、好感が持てます

 店舗外観は、前店舗の特徴を随所で活かしてはいるものの、お客さんに与える印象は、『らあめん広』だった頃のそれとはまったく異なります。漆黒に彩られていた外壁はピュアホワイトへと塗り替えられ、扉も、木目の優しい質感を活かした日本調のものへと一新。掲げられた暖簾も「白」を基調としたもので、『広』時代の外観を見慣れた者であれば、誰もが「ここまで印象が変わるものなのか!」と、驚嘆することでしょう。

 訪問日(2023年1月7日)は、店が開く1時間以上前に店の前へと到着したので、幸運にも、先客はなし。開店30分前を過ぎた頃から、私の後ろにお客さんが並び始め、オープン直前の段階では、15名程度の行列ができていました。ただし、その後さらに人気が上向いた感があるので、これからの訪問をお考えの方は、もう少し厳しく見積もっておいたほうが良いかもしれません。


券売機

 現在(2023年1月29日現在)、同店が提供する麺メニューは、「帆立の昆布水つけ麺黒(醤油)」、「帆立の昆布水つけ麺白(塩)」の2種類と、それぞれの『特製』バージョン。中でも、私が特におススメしたいのが、「帆立の昆布水つけ麺白(塩)」です。

 早速入店し、カウンター越しに厨房を見やれば、店主が奥様と共に、一心不乱にラーメン作りに勤しんでいます。その立ち振る舞いは緻密かつソツがなく、ご夫婦の息もぴったり。どれだけ眺め続けても眺め飽きることがないほどです。

 また、カウンター席の前には、帆立、麺、昆布水についてのこだわりや、昆布水つけ麺の美味しい食べ方が綴られたマニュアルが置かれており、その内容は、思わず読み耽ってしまうほど興味深いもの。厨房におけるラーメン作りの所作を眺めたり、マニュアルの記載に没頭したりすること、およそ10分。気が付くと、眼の前に昆布水つけ麺が供されていました。

ほたての繊細な旨みを最大限に活かした独創性が光る究極の一杯!


「帆立の昆布水つけ麺白(塩)」1100円

 眼前に供された「昆布水つけ麺」のビジュアルは、惚れ惚れするほど美しく、口を付ける前から「間違いなく美味い!」と、確信を抱くことができるもの。

 十分な粘度のある昆布水を絶妙な塩梅でまとった麺は、艶めかしく輝き、視界に入った瞬間、たちどころに食べ手の視線が釘付けに。スープから立ち上る帆立の芳香も、鼻腔を心地良くくすぐります。麺が盛り付けられた丼と、スープが湛えられた丼に加え、トリュフオイル、鰹塩、山葵、帆立のカルパッチョを盛り付けた小鉢等が品良く鎮座する圧巻の構成です。

「これら4つの品は、昆布との相性が良さそうな食材を数十種類用意した上で、その中からベスト・オブ・ベストをチョイスしたものです。個人的な好みもありますが」。

 丼や皿からそこはかとなく漂う高級感も相まって、佇まいは、まるで和食のコース料理のよう。視覚的にも存分に楽しめる1杯に仕上がっています。


麺を浸している昆布水

 食べ方のマニュアルに沿って、日本を代表する産地・猿払村の帆立カルパッチョを頬張り、口腔内を帆立の風味で溢れ返らせてから、お箸で麺をひとつかみ。ズズっと啜り上げます。麺にピタリとまとわり付く昆布(羅臼昆布&がごめ昆布)とイワシ煮干のうま味成分が、ダイレクトに味蕾へと注がれ、身体中に快楽という名の衝撃が走ります。

「ここ数年で昆布水つけ麺の認知度が飛躍的に上昇し、提供する店舗も増えました。ラーメンシーンを俯瞰すれば、今は、鰹昆布水を用いたつけ麺が主流ですが、イノシン酸とグルタミン酸のバランスにもう少し工夫を凝らせば、より美味しくなるのではないかと考え、鰹の代わりに、グルタミン酸が増強できるイワシ煮干を昆布水に合わせてみた次第です」。

 鰹と合わせると過度になりがちな塩味が、煮干しと合わせることで穏やかになり、うま味成分を十二分に引き立てるベクトルへと作用する。特筆に値するギミックです。

「この1杯を手掛けるに当たって目標に据えたのは、ひと口目の感動を食べ終わりまで持続させることでした。この目標をクリアするためには、食べ手の味蕾が味に慣れる状態を防ぎ切ることが求められます。また、昆布水は、一度麺をスープに浸してしまうと、スープのうま味にマスキングされ、それ以降は物足りなく感じてしまいがち。そうならないように、昆布の濃度を上げています。濃度があれば、昆布のうま味が麺に絡みやすくなりますしね」。確かに、この昆布水。それだけでごくごくと飲み干せてしまうほど、豊潤かつ深遠な味わいです。


(左)スープ素材の軸となる帆立。(右)透明度の高いスープだがしっかりと帆立の味が凝縮されている

 この麺と合わせるスープもまた、絶品中の絶品です。

「スープについては、帆立の風味強化に走らず、他の素材で帆立の風味を引き立たせることを注力しました」。

 確かに、ひと口啜れば、複数のうま味成分が食べ手の味蕾に与える効果に意を配り、必要最小限の素材(信玄鶏、イワシ煮干)のみを用い、素材本来の持ち味を損なわないよう、細心の注意を払いながら炊き上げていることが分かります。

「余計な素材を加えない『引き算』の発想でスープを作ることにもこだわりました。昆布のうま味(グルタミン酸)、帆立のうま味(コハク酸)と、鶏のうま味(イノシン酸)とを上手くバランスさせることに意識を集中させ、可能な限り丁寧に鶏からイノシン酸を抽出することを心掛けました。具体的には、ガラをしっかり掃除したり、湯引きで余分な脂や臭いを除去したり、ネギの頭を入れて臭いを取り除くといった工程を忠実に実践していますが、こういう基本的な調理法を着実に実践することって大切ですね、今、まざまざと実感しています」。


口内で帆立の味が爆発するそんな表現がしっくりくるほどに味が濃密なスープ

 一見シンプルなように見えながら、幾種類ものうま味成分が舌上で混然一体と化し、食べ手の胃袋を確実に鷲づかみにする。ラーメン作りに対する店主の真摯な姿勢が具現化されたかのような、会心の出来映えです。


つけ麺に合わせる麺として最適解を追求し作り上げられた麺

 麺も、『三河屋製麺』と共に、幾度となく試行錯誤を重ねて創り上げたものです。

「『春よ恋』を100%用いた麺ですが、それだけではありません。ひとつの産地でなく、複数の産地から『春よ恋』を取り寄せ、それらをブレンドすることで、風味、舌触り、喉越し、スープの持ち上げのすべてにおいて、満足度の高いものに仕上がりました」。

 昆布水の風味との相性が抜群で、小鉢の薬味とも阿吽の呼吸を奏でる、まさに「この1杯にしてこの麺あり」と言うべき逸品。夢中になって様々な食べ方を試しているうちに、いつの間にか、丼が空っぽになってしまっていました。

「これからも努力と研鑽を重ね、もっと上質な味を提供できるお店になれば」と、意気込みを語る及川店主。

 日ごとに人気が右肩上がりに高まる『ほたて日和』。今や、押しも押されもせぬ大行列店となり、1杯にありつくまでに相応の時間はかかるかも知れませんが、それでも訪問する価値は十二分にあります。未食の方はぜひ一度足を運んでいただきたいと思います。

及川淳一店主のプロフィール

・オーセンティックバーにてバーテンダーとして13年間勤務した後、2009年、神保町の地に『麺屋33』を創業。
・創業当時は共同経営者がおり、共同経営者が商品開発、及川氏は経営・サービスを分担して担当していたため、同氏が職人としてラーメン作りに取り組むようになったのは、共同経営者が『麺屋33』の営業から手を引いた2017年以降のこと。
・及川氏曰く「料理人としての経験が不足していた」ため、2017年以降しばらくの間は、現行の味を維持するのに精一杯だったが、2020年6月より、満を持して本格的な商品のブラッシュアップを開始。
・試行錯誤の結果、以前から賄いとして試作を重ねていた「昆布水つけ麺」が納得できる水準にまで到達したことから、今般、『麺屋33』の姉妹店として、つけ麺をフラッグシップメニューとする『ほたて日和』を、秋葉原の地で開業。

●SHOP INFO

店名:Tokyo Style Noodleほたて日和

住:
TEL:03-3863-3773
営:11:30〜15:00、17:30〜20:30、
  土・日・祝11:30〜15:00(※現在は記帳制を導入。2023年2月時点現在)
休:水曜

●著者プロフィール

田中一明
「フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。47都道府県のラーメン店を制覇し、現在は各市町村に根付く優良店を精力的に発掘中。

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