【名馬伝説】フォーエバーヤングが挑む1着賞金15億円のサウジカップ、東京・府中のフェブラリーステークスにも注目
2025年2月20日(木)6時0分 JBpress
(堀井 六郎:昭和歌謡研究家)
国際G1で4連覇!ダートの名馬、オメガパヒューム
ダートコースで行われるJRA唯一のG1レース「フェブラリーステークス」が今年も2月23日(日)に開催されます。
ダートのG1レースといえば、年末に大井競馬場で行われる南関東公営競馬主催の「東京大賞典」も人気が高く、昨年12月29日に行われたレースでは、3万8000人の競馬ファン(前年比129%)が見守る中、JRA所属のフォーエバーヤング(矢作厩舎)が優勝しています。
この「東京大賞典」は公営競馬主催でありながらJRAの馬も出走可能な交流レースとなっていて、2011年に地方競馬で唯一の国際G1レースに格付けされました。
公営の競馬場が舞台でありながら、G1に昇格以降、過去の優勝はすべてJRAの馬に独占されています。特に2018年から2021年までの4年間、中央のダート名馬・オメガパフュームがミルコ・デムーロ騎手を背に、なんと4年連続の勝利をあげています。
同一国際G1レースを4年連続4連覇するという我が国競馬史上唯一という偉業は、騎乗したデムーロ騎手とともにもっと高く評価されていいと思うし、同馬に関していえば、生涯全26戦すべてダートで走り11勝、勝てなかったレース15戦のうち3着以内が11レースという実に安定した成績を残しています。
重賞勝利8勝のうち、「東京大賞典」の4勝を含め5勝が大井競馬場でのものなので、よほど「大井の砂」との相性が良かったのでしょう。
種牡馬となった今、産駒のデビューは来年(2026年)になるので、はたして「ダートの血」が最も色濃く遺伝されるのはどの馬なのか、そうした推理の楽しみも競馬の魅力の一つです。
砂のスペシャリスト、コパノリッキー
「東京大賞典」は年末に行われることもあって国内ダート競馬のその年の総決算、ダート王決定戦という趣が漂っていますが、それから2か月後、今度はJRA主催のダートG1レース「フェブラリーステークス」が開催され、JRAのダート強豪馬が集結します。
「フェブラリーステークス」は1997年にG1レースに昇格し、その10年後には外国馬も出走できる国際競争となったことで、注目度が高まりました。しかし、この2つのレースとも国際レースとはいうものの、過去に海外から遠征して出走してきた馬はごく少数で、「東京大賞典」では2014年のソイフェット(米国)、「フェブラリーステークス」では2023年のシャールズスパイト(米国)ぐらいで、前者は16頭立て16着、後者は16頭立ての9着と勝負になりませんでした。
「フェブラリーステークス」の人気アップに一役買ったのが、2014年と2015年に連覇したコパノリッキーです。同馬は2014年の2月に行われた同レースで16頭立ての16番人気、その馬がなんと2着馬に半馬身の差をつけてゴールを突き抜けたのです。
単勝馬券の最低人気馬がG1レースに勝利したのは史上3度目だそうで(障害レースを除く)、100円の馬券が2万7210円になりました。馬主さんあたりは10万円くらいの単勝馬券を購入していることでしょうから、億単位の収入となったかもしれません。馬名からおわかりのように、馬主さんとは、風水作家・Dr.コパこと、小林祥晃氏です。
コパノリッキーは翌年もこのレースで優勝、このときは堂々の一番人気での勝利だったので単勝馬券は210円でした。
同馬の父・ゴールドアリュールは現役時代、当初は芝のレースに出走していましたが、今一つ成績が伸びず、ダートのレースに出走すると、走りが一変。G1レースに5戦連続出走し、なんと4戦で勝利するという、水を得た魚か、砂の走りを知った1歳上のクロフネか、という巧者ぶりで、その血は確かにコパノリッキーに受け継がれたようです。
2018年に種牡馬生活に入ったコパノリッキーの産駒は2021年からデビューしています。地方競馬でのダートレース重賞の勝ち馬は何頭か出していますが、JRAで成績を上げている馬はまだ出現していません。
サウジカップで15億円獲得した日本馬パンサラッサ
日本では2月23日に「フェブラリーステークス」が開催され、古馬のダート王決定戦が行われるというこの時期、サウジアラビアでは現地時間2月22日土曜日(日本時間では23日)に国際Gランクの競馬が何レースも開催されます。
近年、サウジで行なわれるレースをめざして海外遠征する日本馬が急増し、競馬関係者ならずともサウジでのレースに注目する国内競馬ファンが増えています。今年は日本馬が6レース(G1=1レース、G2=4レース、G3=1レース)に出走予定です。
メインは最終レースの「サウジカップ(ダート)」で、1着賞金がなんと約15億円というビッグマネー(1ドル=150円として)。「フェブラリーステークス」の1着賞金が1億2000万円なので、どうしてもその金額の差に目が行ってしまいますね。
5着でも1億5000万円、10着でも3000万円なので経費や税金を考慮しても、馬主さんや調教師のみなさんたちの視線の先が「フェブラリーステークス」が行われる中京競馬場よりも、サウジアラビアの首都リヤドにあるキングアブドゥルアジーズ競馬場のほうに向かうのも無理はなさそうです。
このレースには2023年のレースで日本馬パンサラッサが優勝、約15億円の賞金が上乗せされ、日本歴代獲得賞金ランキングで一挙に5位へと駆け上がりました(※)。
(※)2025年1月現在、歴代1位の獲得賞金王はウシュバテソーロ。2024年のサウジカップ2着賞金5億円、ドバイワールドカップ2着賞金3億4000万円の加算でトップに。両レースは2着でも賞金はビッグマネーです。
ダート王フォーエバーヤング、サウジカップに挑む!
「サウジカップ」開催当日はダートコースのレースが3レース(G1、G2、G3各1レース)、芝コースのレースはG2が3レース行われますが、この6レースに登録している日本馬の頭数を合計すると、150頭近くもありました。
この原稿を書いている14日現在で、この中から出走の可能性の高い馬は16頭ほどでしょう。国際派として知られる矢作調教師は厩舎の馬を29頭登録しています(そのうち2レースに重複登録している馬は4頭)。なかでも先月この連載第13回で取り上げた、日本のダート王・フォーエバーヤング(矢作厩舎所属)が出走予定のG1「サウジカップ」でどんな走りを見せてくれるのか興味は尽きません。
同馬は昨年もサウジの地に遠征し、G3「サウジダービー」に挑戦し勝利しています(このときの1着賞金は約1億2000万円。「フェブラリーステークス」の1着賞金とほぼ同額です)。
今年は、いよいよサウジ最大のレース制覇をめざすことになります。「15億円の激走」に期待しましょう。サウジカップは日本時間2月23日(日)午前2時40分の発走予定となっています。
(編集協力:春燈社 小西眞由美)
筆者:堀井 六郎