羊と人間のキメラ。人間の細胞を持つヒツジの胎児が誕生(米研究)

2月22日(木)9時15分 カラパイア

00_e2

 研究者によって新種のキメラが開発された。キメラとは、同一個体内に異なった遺伝情報を持つ細胞が混じっている状態や個体を意味する。

 米スタンフォード大学の研究者らは、羊とヒトのハイブリッド胎児を作り上げた。将来的に、臓器移植は人から人ではなく、動物から人への時代が来るのかもしれない。

 世界で初めて作られた羊ヒトキメラは、ヒトの幹細胞を羊の胚に導入することで誕生した。99パーセント以上は羊であるが、ほんのごく一部分だけ我々と同じ人間である。

【羊胚の中の人間の割合は細胞1万個につき1個】

 実験で作られた胚は、ヒツジの体内に戻して3週間成長させ胎児にし、28日に達する前に廃棄されてもいる。ヒツジにおけるヒトの部分はごくわずかであるが、それが存在するという事実は、この研究分野おいて凄まじい議論を巻き起こしている。

 「ヒト細胞の寄与率は今のところ非常に小さいものです。人の顔や脳を持つ豚といった類のものではありません」と、実験に携わった米スタンフォード大学の幹細胞生物学者、中内啓光教授は話す。教授によれば、羊胚の中の人間の割合は細胞1万個につき1個でしかないという。


【臓器移植を待つ無数の患者を将来的に救う可能性】

 この研究の基礎となったのは、初期のブタ胚の中でヒト細胞を成長させることに成功した先行実験である。この実験で作られた豚ヒトハイブリッドは種間キメラと呼ばれている。

キメラ技術:世界初、人間の細胞が入ったブタの胎児を作ることに成功(米研究)-カラパイア-

2_e14
ブタ - ヒトのハイブリッド胚
image credit:Juan Carlos Izpisua Belmonte

 こうした実験を行う研究者には”マッドサイエンティスト”といったレッテルが貼られがちであるが、この研究は実は臓器移植の提供者を待つ無数の患者を将来的に救う可能性を秘めている。現状ではそうした人々の多くは、適合する臓器に巡り合うことなく亡くなっている。

 「今日、最適と判定された臓器でさえ、それが一卵性双生児から提供されたというのでない限りは、免疫系が継続的に攻撃を仕掛けるためにそれほど長くは保ちません」と研究チームの一員、カリフォルニア大学デービス校のパブロ・ロス(Pablo Ross)博士は説明する。

 実現までまだまだ先は長いが、種間キメラで作られた内臓はいつの日か臓器需要を満たす手段の1つとなるかもしれない。つまり羊や豚で作られたハイブリッド膵臓が患者に移植されるかもしれないということだ。


【人間に移植できる臓器は1%が人間のものでなければならない】

 研究者によると、移植を成功させるには、胚細胞の少なくとも1%が人間のものでなければならない。したがって今回の羊ヒトキメラ実験はまだごく初期段階のものということだ。

 無論キメラの中のヒトの割合を増やせば、移植用の内臓を提供するためだけに作られる生物の性質を巡り、倫理的な懸念が増すことは避けられないことだ。

 「私も同様の懸念を抱いています。例えば、万が一、今回の結果がヒト細胞によって動物の脳が形成される可能性を示唆していたならば、これ以上進めることはないでしょう」(ロス博士)

 この類の研究が提起する倫理的な疑問に対するお手軽な答えはない。しかしアメリカでは10分に1人の割合で臓器移植待機者リストに名前が加わっている。キメラが持つ可能性もまた即座に否定すべきものではない。

 「いずれのやり方にも賛否があり、完璧なものはありません。ですが、日々死にゆく人々にとって希望を与えられることも確かです。病気を患う人に臓器を提供するために、あらゆる可能な代替手段を探求せねばなりません」(ロス博士)

 研究はテキサス州オースティンで開催されたアメリカ科学振興協会の年次総会で発表された。

References:theguardian / ctvnews / sciencealert/ written by hiroching / edited by parumo

カラパイア

「キメラ」をもっと詳しく

「キメラ」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ