1日8000歩以上歩くと死亡率が低くなる。整形外科医が解説する、60代から90代まで理想の歩数と注意点
2025年2月26日(水)12時30分 婦人公論.jp
(写真提供:Photo AC)
厚生労働省の「令和5年 国民健康・栄養調査」によると、20歳以上の1日の歩数の平均値は男性が6628歩、女性が5659歩で、直近10年間でみると男女ともに減少しているそうです。そのようななか「人生100年時代、健康寿命を延ばすにはいつまでも自分の足で歩けることが一番大切」と話すのは、整形外科医・末梢神経外科医の萩原祐介先生です。そこで今回は、萩原先生の著書『いつまでも自分で歩ける100歳足のつくり方』から、元気に歩き続けるためのポイントの一部をご紹介します。
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1日に8000歩~12000歩歩く人は死亡率が低い
歩くことと健康の関係について年代別に考察します。それぞれ将来ビジョンを思い描く助けになればと思います(いちおう年代で括っていますが、個人差があるので、あくまで代表例だと考えてください)。
日本でも海外でも、1日に8000歩以上歩く人は死亡率が低くなることがわかっています。これは毎日でなくとも、週に1〜2日でも十分です。
ただし、高齢者や歩くと痛みが出る人については、1万2000歩を超えるとなんらかの弊害が生じる可能性があります。健康のために、まずは1日8000歩を保持するといいでしょう。
60歳未満(20〜59歳)の日本人の平均歩数は、おおむね7000歩を少し超えるくらいです。8000歩を目標に、積極的に歩いてみましょう。
60代の平均歩数は6300歩ほどで、59歳以下と比較すると1割ほど低下しています。そのため、歩行に費やす時間を1割増やせば、50代までの運動量に追いつきます。
<『いつまでも自分で歩ける100歳足のつくり方』より>
支障が生じてくる70代
70歳以上の平均歩数は4600歩です。50代と60代は、10年刻みだったのですが、そこから上は「70歳以上」と一括りです。なお、別の調査で65〜74歳の平均歩数を調べたものでは、5700歩でした。
日本人の健康寿命は、女性75歳、男性72歳で、70歳を超えたらなにかしら支障が生じます。歯の本数が減りはじめるのもこのころからです。
『いつまでも自分で歩ける100歳足のつくり方』(著:萩原祐介/河出書房新社)
身体的には、運動・歩行時間を増やそうとしても、筋トレをしようとしても、若いときのようには筋肉がつきません。
70代からは杖を使いはじめる人も増えますが、杖を使うと手や肩の痛みを生じることが多く、注意が必要です。そのような場合、足首テーピングが有用です。
80代で女性の半数以上は骨粗鬆症に
次は80歳です。日本人の平均寿命は女性87歳、男性81歳です。女性の半数以上は骨粗鬆症(こつそしょうしょう)になり、男性も80歳を超えると骨が弱くなってきます。
手も足も、肩も腰も、また整形外科以外の疾患も、なにかしら愁訴(患者の自覚的訴え)が生じるでしょう。歩こうとしても歩けない人、介護施設に入所したり、寝たきりになったりする人も出てきます。
いかにして歩数を減らさず、現状維持できるか。足首テーピングを装着したら歩けるのに、手に力が入らずに装着できない、入浴時に転びそうになるといった方には、足関節の靭帯再建術を検討してもらうこともあります。
足に限らず、膝や股関節、腰を手術で治せるのは、80代の半ばまでです。それを超えると、治療意欲も落ちがちですし、手術前の内科検査でドクターストップがかかるケース、ご家族から積極的治療への同意が得られないといったケースも増えてきます。
90歳を超えたら気をつけるべきこと
いよいよ90代になります。90歳を超えたら、とにかく転ばない、ケガをしないように気をつけましょう。短期でも入院すると一気に体力が落ちて、取り戻すのが難しくなってきます。
体調を崩さないことも重要ですので、食事もむせ込まないように気をつけてとってください。
そして、無事に100歳を迎えられた方は、今までやってきたことは自身にとって、なにひとつ間違っていませんでした。
これまで健康でいるために気をつけてきたこと、その経験などを、親戚や周りの人たちにぜひ教えてあげましょう。
※本稿は、『いつまでも自分で歩ける100歳足のつくり方』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。