記憶力を15%強化する新しいタイプの脳に埋め込むインプラントが開発される(米研究)

2月26日(月)9時0分 カラパイア

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 記憶力を強化するとうたう脳にインプラントを埋め込む技術は新しいものではない。だが、まったく新しいアプローチによって、脳の声に耳を傾けて反応するデバイスが登場した。
 
 この”閉ループ法”による脳深部刺激を試みた結果、リストに掲載された単語の記憶率を15%向上させることに成功したのだ。

 これは将来的にアルツハイマー病などの神経変性疾患を患う人たちのクオリティ・オブ・ライフを改善する手助けとなるかもしれない大きな成果である。

【脳に電流を流し記憶ネットワークを活性化】

 デバイスの試験を行うために、米ペンシルベニア大学とトーマス・ジェファーソン大学の研究チームは、てんかんで臨床モニタリングを受けている25人の患者を募集した。

 この被験者が選ばれた理由は、倫理と利便性の点が何にも増して大きかった。つまりデバイスを使用するにも、モニタリングを行うにも細い探針を脳に挿入せねばならず、単なる臨床試験として行うにはリスクが高すぎる代物だったという事情ゆえだ。

 研究チームが試みたのは、探針の電流を精密に制御して、脳の記憶ネットワークの重要なコンポーネントを記憶の保管が上手くいっていない場合にのみ活性化させることだ。


【「閉ループ法」の採用で制御しやすく】

 神経を刺激して記憶力と回想力を強化しようというコンセプト自体は昔からある。そして研究者の努力の甲斐あって、非侵襲的な経頭蓋磁気刺激法で脳深部を刺激して正しい経路をくすぐり、脳に記憶の保管や再結合を促す技法は少しずつ進歩してきた。

 だが、海馬や内側側頭葉といった領域をピンポイントで標的化することで見込みある成功が収められてきた一方、常に一貫した成果を上げることはできなかった。

 その問題の一部は位置の選択にあるのかもしれないが、別の問題として方法がまずい可能性もある。

 実はこれまでは「開ループ系」という手法が試されてきた。この手法において、脳の活動に応じて刺激が微調整されたりすることはない。

 そこで今回のデバイスでは「閉ループ法」が採用され、外側側頭皮質で生じた神経活動を解読し、そのフィードバックに基づき電気刺激を調整する方法が考案された。
 
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【必要な時にのみ脳を刺激。ペースメーカーの脳バージョン】

 実験に先立ち、研究チームは、各被験者が安静にしている時および単語リストを覚えようとしている時の脳活動のパターンを調査した。

 その後のフォローアップのセッションでは、調査から明らかになった記憶している時の活動に照らして、システムのフィードバックから被験者が単語を思い出せる確率が低いと判断された場合、必ず外側側頭皮質を刺激した。

 これはある意味で、ペースメーカーの脳バージョンとでも言えるかもしれない。デバイスが作動する前にセンサーによって状況を検出し、必要な時にのみ脳を刺激するのである。

 この記憶強化の感覚について、被験者の1人はニューヨークタイムズのインタビューで次のように語っている。

 「テストは楽しかったよ。でも正直な話、刺激でどう記憶に影響があったのかよく分からないんだ。何も感じないから。刺激されているのかどうか分からないんだ」

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【思い出せなくなった記憶を取り戻せるか?次の研究の課題】

 研究チームが理想とするのは、この手法で痴呆症患者の衰える記憶力を改善させることだ。だが、神経活動を解読し、それに応じて刺激を与えるというコンセプト自体は、それ以外にも数多くの神経症状に応用できるものだ。

 今後研究チームが予定しているのは、確立されているが最早思い出せなくなった記憶を再結合するプロセスに対し、閉ループ法がどのように効果を発揮するのか調査することだ。

 テスト前の一夜漬けにも使えそうだが、残念ながら今すぐにというわけにはいかない。何しろ、適切な部位に探針を潜り込ませるには繊細な手術が必要であり、最悪の場合、施術が台無しになるリスクもある。

 非侵襲的(体を傷つけるといった外科的手法を使わない)な方法が開発されることを願うばかりだ。
 
 この研究は『Nature Communications』に掲載された。

References:Futurism / nytimes / interestingengineeringなど/ written by hiroching / edited by parumo

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