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「誕生学」の提唱者・大葉ナナコ氏の著書から見えてくる、異様な“出産愛”

messy2月28日(火)19時0分
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 ロマンチックに誕生を語ると、なぜ子どもの自己肯定感が高まるのか? 私にセンスがないせいでしょうか。〈誕生学〉の謳う狙いが、何がなんだかさっぱり理解できません。

▼前篇:「誕生学」入門講座に潜入! 出産をキラキラ語り、感動を押し売りする罪深さ

 誕生学とは〈生まれてきたことが嬉しくなると、未来が楽しくなる〉をコンセプトに、〈いのちのストーリーをロマンチックに伝えるメソッド〉を提唱している、教育プログラムです。その講座へ実際に参加してみたことは上記の記事でお伝えしたとおりですが、〈公益社団法人誕生学協会認定誕生学アドバイザー〉なる肩書を持つ講師が、受精卵が胎児となりどのように生まれてくるのかという一般的な過程について、これでもかと〈エモーショナル〉に語るだけという、ズッコケ気分満載の講座でした。

 誕生学を紹介する書籍『Life 誕生学の現場から』(ポプラ社)には、「子どもたちをこの荒波の社会から守る大人を増やすだけでなく、子どもたち自身が自分で自分を守れるように、『自尊感情』という羅針盤を渡してあげましょう」とありましたが、みずから涙ぐみながら「感動的でしょ!?」と畳みかけるようなトークをすれば子どもの〈自尊感情〉が高まると本気で思えるなら、かなりの〈おめでたい人〉。

 しかし同書の著者であり、このメソッドを生み出した提唱者・大葉ナナコ氏は、エッセイストの横森理香氏や漫画家の桜沢エリカ氏など、有名人と親交が深いことでも有名で、カリスマ性のある人物のよう。一体彼女の何が多くの人を惹き付けるのか?

 そんな疑問から著作にざっと目を通してみると……当連載の、ウオッチング対象ど真ん中である〈超自然派〉でありました。出るわ出るわ、衝撃的な発言の数々!

 そもそも〈バースコーディネーター〉という肩書を掲げる大葉ナナコ氏は、妊娠出産の現場に日々携わっている医療従事者でもなく、〈5人の子どもを生んだ出産育児の先輩〉とでもいうところでしょうか。著作を読んだ後の印象は〈ボスママの育児語り〉。ですから発言に専門家としての責任はないのかもしれません。しかしだからと言って、官公庁の委員も務め、公の場で子どもたちや親へ指導をする立場の人が、こんな発言をするなんて! と恐怖を感じたポイントをご紹介していきましょう。※太字部分は大葉氏著書からの引用。

「不満が残るお産」という呪い

 何からご紹介すればいいのか迷ってしまうほど盛りだくさんなのですが、まずは当連載でも定番ネタになっている〈自然なお産〉からいってみましょう。

 2007年に第1版が発売されている『体と心にやさしいナチュラルなお産』(アスペクト)は、タイトルもズバリそのまんまですね。冒頭では二極分化されたキャラクター〈ケミコ〉と〈ナチュミ〉が登場し、「女性なら誰しもケミコさん的な素質と、ナチュミさん的な素質と、半々でお持ちでしょうし、どちらの選択がいい、悪いということでは決してありません」とフォローしながら、自然派とはほど遠い嗜好のケミコをこき下ろしまくります。

 イメージ先行型のケミコはブランド産院で無痛分娩、妊娠中の食生活やボディケアもがんばるもののどこか空回りで結局は体を冷やしまくり、最終的には不満の残るお産になり産後も母乳の出は悪く夫の理解もないはでつらいことばかり。一方勉強熱心なナチュミは助産師を頼りにツボ押しやお灸、玄米生活などでのんびりすごし、お産もバッチリ夫と協力して楽しく完了。産後は夫の助けを借りて母乳育児をがんばり、それなりに大変だけどのんびり構えてハッピー! といったところです。

 楽しようとするとこんなことになるよねといった教訓をぶち込みたいだけの、ベタすぎる展開です。自然派女子〈ナチュミ〉のほうが、思慮深く努力家で素敵で幸せ! というバイアスをかけまくり。しかも、出産における最重要事項である〈子どもが無事健康に生まれたこと〉にスポットが当たらないことも、衝撃(本文ではもちろん「一番大切なことは赤ちゃんが元気に生まれることです」と語られてはいるものの)です。自分が出産子育てを満喫できているかどうかがいかに大切かという、価値観の現れでしょうか? 思わず紹介せずにいられませんでしたが、これはほんのオマケです。本編に進みましょう。

 本のテーマが〈自然なお産〉ですから、ある程度情報が偏っているのは仕方がないとしても、著者の信条に外れるものに対する扱いが辛辣です。たとえば「無痛分娩について」というページでは、「ですが、やはり麻酔薬を投与して神経を遮断して赤ちゃんを出すという侵略的な行為ではあるので、デメリットについても学習した上で選択したほうが、後悔がないでしょう」と表現されています。

無痛分娩で生まれた赤ちゃんは不機嫌

「というのもこの育児を始めて20年、この仕事を始めて10年、無痛分娩で後悔している人に出会うことが少なくないからです」と語り、無痛分娩にすると帝王切開率が上がったり、分娩所要時間が長くなると指摘されている専門書を紹介。さらに、著者が主催する産後クラスの参加者が麻酔を投与したとたんに微弱陣痛になったという話、助産師からよく聞く「無痛分娩で生まれた赤ちゃんは不機嫌なことが多い」という話など、デメリットをたっぷりと披露します。不機嫌な赤ちゃんについてのご自身のお考えは「自分で生まれる予定を立てていたのに無視されて、大人の都合でひっぱりだされたことへのクレームなのでしょうか」だそうです。

女性は100年前から麻酔なしで産んでいます。深遠な命のつながりに思いを馳せ、よく考えてから麻酔を使うか決断しましょう。

 無痛でよかったという人もたくさんいるでしょうと言いつつ、結局のところ麻酔使うなんて短絡的ね〜とディスっているようにしか聞こえませんけど。

 本書では彼女の推す〈会陰切開なし、自宅出産 OR 助産院での出産〉など、いわゆる〈自然なお産〉についてのデメリットは、〈一般的にはこんなリスクが語られているけれど、それは情報が偏っているから〉という姿勢で、実はこんなにいいこと尽くし! とばかりにポジティブなイメージを強調しまくります。

 経過が順調でも出産はその時になってみないと何が起こるかわからず、助産院や自宅など病院外での出産の場合、大量出血や帝王切開などが必要な場合にすぐに対応できず、リスクが高い……にもかかわらず、です(こういった懸念を〈お産を病気のように扱って〉と眉をひそめるのも自然派のお約束)。「助産院は、必ず嘱託医と提携していないと開業できないので、バックに必ず医師がついてくれています」という説明も、助産院でお子さんをなくされた方の有名ブログ「助産院は安全? http://d.hatena.ne.jp/jyosanin/ 」などに寄せられた報告を読んでいると、それだけではまったく安心要素にならないことがよくわかります。

「愛情ホルモンが流れるようなお産に」というページでは、セックス、陣痛、母乳を出すときなどに分泌されるホルモン〈オキシトシン〉について語られています。そして分娩台での出産をさりげなく貶めます。

自分がナチュラルでいられる状態とは、オキシトシンが分泌されるような感情が持てる関係だったり、環境だったりすることだともいえるでしょう。それは出産のときにも当てはまります。たくさんの人に見られていて、金属音がガチャガチャしていて、照明が煌々と明るかったらオキシトシンは出ないでしょう。

彼女が語る「ナチュラル」とは?

 上記のような状況でオキシトシンが出るかどうかなんて単なる大葉氏のイメージでしかなく、医学的に根拠がないことは言わずもがな。私は金属音のカチャカチャした音、キレイな響きで好きですし、目をつぶっていても作業をしてくれている気配が感じられて安心できますけどねえ。

「ナチュラルは特別なものではない」というページでは「ナチュラルであるとは、みなさんの体に普遍的に備わっている力や働き、本能を素敵にとらえ直すことだと思います」と語られていますが、日常でこれだけ現代社会の恩恵を受けて生活しておきながら、なんで出産だけ野性動物のごとくふるまわないと〈本来備わっている力が開花しない〉のか(※このフレーズ、やたら頻出するんです)、産む力が発揮されないのか、説明していただきたいです〜。

「妊娠中に何をしたらいいのか、悪いのか迷ったときには、それが100年前の女性も選んだことだと思ったらGOだ!」と私は主催する自然出産クラスで言っています。

とありますので、典型的な〈昔はよかった派〉なのでしょう。〈昔の女性は、医療が介入しない自宅でのお産に不安を抱えていなかった〉というお説の根拠に出すのは、三砂ちづる氏。三砂ちづる氏といえば、『昔の女性はできていた—忘れられている女性の身体に“在る”力』(宝島社)の著者であり、誕生学協会の顧問。この方の調査って、経血コントロール(過去記事ご参照)もそうですけど、ほんの一部の人がそう言っていたというだけなんですよね。しかも経血コントロールについては、どうみても誘導尋問じゃあ……という感じ。

 妊娠中は貧血やつわりなどさまざまな〈マイナートラブル〉が起こりますが、それについては「薬剤だけに頼らないで、代替療法で改善できる場合が多々あります」と、よりによってホメオパシーをご紹介(ホメオパシーって? という方は、NATROM氏の記事をご参照くださいませ「ホメオパシーが叩かれる理由」)。

 貧血の時に処方される鉄剤まで、「ひじきを多く食べるなど食生活で改善することがベスト」とし、楽して解決!な方法が、どこまでもお嫌いなことが伝わってきます。努力して努力して、自分でやれるだけのことは最大限やって、臨むのがいいお産のありかた! と言う価値観をお持ちのようです。なぜこんなに自然にこだわるのか? こんな一文がありました。

ナチュラルなお産をオススメする私の一番の理由は、体の持つ芸術性を体感できる機会は、出産のときくらいだから。

 毎月の生理、セックス、病気や怪我からの回復、味覚、嗅覚、感情の揺れ動きetc.〈体の持つ芸術性〉を体感できる瞬間はいくらでもありそうですけど。女性は特別!と印象づけるための戦略? 汚い話で大変恐縮ですが、私は排便のたびに出方を体感し、出たものを目視するたび我ながらなんて健康なのだと、我が胃腸機能に心底感動しているのですが(冗談じゃなくかなり本気です)。そりゃ出産に比べれば日常的ですしインパクトはくらべものになりませんが、日々の小さな感動も大切ですよ?

 2004年に第1刷が発行された『産んでよかった!「高齢出産」』(祥伝社)は、帝王切開を「出されるお産」と表現する、大問題の書籍といえるでしょう。

後ろ向きな「他力本願」の気持ちでいると、いざ出産というときに過度の緊張で本来備わっている力が開花せず、本当は必要度が低かったのに帝王切開の処置を施されたり、陣痛誘発をされて“出される”お産になりかねません。

 赤ちゃんの心拍が落ちてきたからなど、総合的な判断をもって帝王切開は行われるはずであり、現場の医師の判断を軽視しすぎでは? 帝王切開になったお母さんたちが、こういった〈出されるお産〉発言でいかに苦しんでいるかは、小出愛氏の記事「帝王切開は『産む』じゃなく『出す』!? 産婦を追い詰める世間の認識と、当事者が抱える闇」でも語られていましたね。

「自然派」に首をしめられる人たち

 大葉氏の著作『‘ゆるむ’育児のすすめ 出産〜1歳 赤ちゃんも私もハッピーになる』(実業之日本社)のAmazonレビューでも、「自然分娩が危険な状態での予定帝王切開、しかも母乳育児が不可能な身だった私にとっては、この本の内容はむしろ『ゆるむ』どころか『首を絞める』ものでした」と痛ましいコメントが掲載されています。自分の価値観にあう人だけをとことん持ち上げ、その枠外の人たちは軽視するこの姿勢は、おそくら誕生学においても同じであるように思えます。今幸せではない子どもにとって誕生学の講座内容がどれだけ暴力になるのか、各所で指摘されているにも関わらず、いまだスルーされているようですから。

 フォローする気がないわけではないようですが、ポイントがずれまくっています。前出の『ナチュラルなお産』ではこう書かれていました。

妊娠中、さまざまな努力をした女性なら「自然なお産を目指してやるだけやった上で最後は帝王切開になったということは、この子にそれが必要だったと思える」と言います。私はこんなケースは「自然帝王切開」ととらえています。

 自然帝王切開! 要は、彼女のいう自然とは物理的なものではなく、精神論ということでしょうか。自然美容整形とか自然植毛とか自然歯科矯正とか、妙な単語が今後表れてもぜひ全力で受け入れていただきたいものです。

 高齢出産というテーマでは避けて通れない〈出生前診断〉へも激しい言葉を投げつけます。リスクの度合いを事前に知っておきたいと思うのは、ミッドライフの妊婦さんなら当然の心理。自分なりの出産の倫理、哲学を構築してほしいといろいろな立場に理解があるような風情で語りかけながら、「もしあなたが、出生前診断について迷っていたり、不安に感じていたら、ぜひこの本をご一読されることをお勧めします」と紹介するのは『子どもを選ばないことを選ぶ—いのちの現場から出生前診断を問う』(大野明子著、メディカ出版)です。しかも引用されるのは、次の一文。

ですから「出生前診断とは、生まれる前に親が『もう、うちの子じゃないよ』と言うことと同じ」で、「すでに淘汰を越え、生きられるとお墨付きをもらった子どもを捨てることになる」と明言されています。

 さらに追い打ちをかけるように、胎内記憶の提唱者であり誕生学協会の顧問でもある池川明氏の、こんなコメントも取り上げています。

私には、「異常のある子だったら産みたくない」というお母さんの気持ちは、お腹の中にいる赤ちゃんに伝わるような気がしてなりません。

 この章ではこうとりまとめています。

「命を選ぶ」ということは、あなたという人をお母さんにして人生を始めたいと来てくれた子どもを否定することです。

 結局は持論しか認めない、大葉氏。彼女の語るお産のあり方はすべて「私の考える最高のお産」であり、世の女性に幸せなお産の情報を提供しますというそれとは、かなり違う種のものです。

まずは根拠を示してほしい。

 主張や価値観だけでなく、お人柄がよく伝わってきたのは、2008年に発行された『怖くない育児』(講談社文庫)です。モダンな祖父に溺愛されて育ち、小学校から美術教室に通い、中3でスカウトされてモデルの仕事を始めCM、レポーターなどもこなし、美術系の短大へ進学。母は忙しく働くワーキングマザーだったが、彼女の洋服を手作りしたりパンは自家製だったり、趣味も多彩でクリエイティブ。自尊心が満たされる環境の、とても恵まれたお育ちであるようなプロフィールが語られています。

 エモーショナルに語ることにこだわるのは、この〈美術教育を受けて育った〉からでしょうか? 視点も一般人のそれとは少しちがうようで、人の立場に立って物事を分析したり、役立つものをまとめあげようというよりは、自分の世界観を拡散したいだけなのかもしれません。

 同書では、出産話で多用される〈鼻からスイカ〉と言う表現について〈センスがない〉と語られており、育児について「育児はアートだ、怖がらないで自分色を塗りこんでいこう。一筆一筆、これでいいかと自分と対峙し、こうと感じた色を重ねていく以外に、油絵は仕上がらない」と壮大に表現。ほかにも、ポエティックな表現がそこかしこに表れます。子どもに性や誕生をロマンティックに語るべしと主張する誕生学は、こういった彼女の〈センス〉であり、医学的根拠は二の次というメソッドだと理解しました。

 しかし、もし本当に〈芸術的に〉生命のデザインを子どもに伝えたい! というのなら、その筋のトップであろうEテレあたりをご参考に、もう少し芸術家なり医師なりなんなり、自分のシンパ以外の多方面から〈専門家〉を選りすぐっていただきたいもの。さまざまな分野の専門家の見解を統合し、きちんと根拠を示せないのであれば、個人的な〈お教室〉が限界値で、学校や養護施設などで行うのは無理がありすぎ。どんなトンデモ理論でも、慎ましやかに同士と自尊心を高めあうぶんには誰もツッコミませんので。

(謎物件ウォッチャー・山田ノジル)

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データ提供元:アニメキャラクター事典「キャラペディア