箱根駅伝の快走を生んだナイキの新モデル『ヴェイパーフライ 4』がいよいよ発売、東京マラソンでも活躍するのか?
2025年3月2日(日)6時0分 JBpress
(スポーツライター:酒井 政人)
新モデルはスパイク感覚?
今年の箱根駅伝でナイキの発売前モデルが話題になった。『ヴェイパーフライ 3』の後継モデルだ。そのプロトタイプを着用した中大・吉居駿恭(3年)が1区の序盤で抜け出すと、そのまま独走。後続に1分32秒差をつけるダントツの区間賞を獲得した。
それから5区で区間賞・区間新の快走で3度目の往路Vゴールに飛び込んだ青学大・若林宏樹(4年)も同モデルを着用。2月2日の別府大分毎日マラソンでも初マラソン日本最高&学生記録(当時)となる2時間06分07秒をマークしている。
そんな噂の新モデルが3月1日に発売された。『ズームX ヴェイパーフライ ネクスト% 4』(以下、ヴェイパーフライ 4)だ。5000mと10000mで日本人学生歴代9位(13分22秒01、27分44秒48)のタイムを持つスピードランナー吉居は同モデルが箱根駅伝1区の爆走を後押ししたという。
「前モデルより沈み込みが軽減され、足の跳ね返りが速く、スピードに乗りやすくなりました。つまり速いピッチで走り続けることができるんです。アッパーも前モデルから安定感が増して、走りに集中できる点が気に入っていますね。またスパイクで走っているときが、自分の足で走っている感覚が一番あるんですけど、ヴェイパーフライ 4はスパイクに似た走り方をすることができます。ロードシューズに合わせて違う走り方をしなくていい点も気に入っています。(箱根駅伝1区では)リズムで押していく走りをしようと思っていたので、後半もピッチを乱さず走り切れたのが良かったと感じています」
では実際に『ヴェイパーフライ 4』はどんな進化を遂げたのだろうか。
前モデルより10%も軽くなった
長距離ランナーにとって「最もバランスの取れたシューズ」として設計されたという『ヴェイパーフライ 4』。5000mと10000mで世界記録を保持するジョシュア・チェプテゲイ(ウガンダ)を含むトップアスリートが関わり、彼らから多くのインスピレーションを得たという。
プロトタイプは駅伝シーズンの初めから日本の有力学生選手にも提供。世界中の長距離ランナーが履き比べ、改良を重ねたという。その結果、様々な選手の走り方を考慮し、バランスの取れた一足が完成した。汎用性が高く、5kmからマラソンまで幅広い距離に対応するモデルに仕上がったのだ。
日本の選手からは、「駅伝のような変化のあるコースでも扱いやすい」「軽量化によって負担が減り、後半の粘りが効くようになった」という声が挙がっている。耐久性・推進力・軽量性のバランスが優れており、 短い距離では『アルファフライ』よりも扱いやすく、スピードチェンジにも対応しやすいモデルになったようだ。
その最大のポイントは“軽さ”だろう。不要な部分のフォームを削ぎ落とすことで軽量化を実現。これは感覚的な問題ではなく、誰もが実感できるほどの違いがある。実際、手に取ってみると思わず「軽っ」と声が出たほどだった。メンズ26.5cmで約169gしかない 。前モデルと比べて約10%もの軽量に成功したことになる。
そしてドロップ(踵とつま先の高低差)は2mm低くし、前足部に軽量で高反発なズーム X フォームをより多く使用。スタックハイト(厚み)を最適化しただけでなく、カーボンファイバープレートの傾斜も20度に調整したことでエネルギーリターンがアップした。さらにアウトソールは前足部のラバーを長めにしたことで、スムーズな足運びにつながったという。
アッパーも通気性とフィット感を両立する新素材を採用。足の形状に合わせやすい設計にしたことで、ホールド感も向上したようだ。またヒール部分のサポート力が上がったことで、より安定した走りを促している。
超軽量モデルの『ストリーク フライ 2』も同時発売
今回は合わせて非厚底タイプの『ストリークフライ 2』も発売された。同モデルはトラックスパイク用の足型を元に設計されており、オフセット(踵とつま先のソールの厚みの違い)も4mmと大胆に抑えたシルエットが特徴だ。そのため楽に前足部で走ることができるという。
前モデルと異なり、今回は薄めのカーボンファイバーフライプレートをフルレングスで搭載。エネルギーリターンがアップした。さらに前モデルよりもメンズ26.5cmで約40g軽い126gに仕上がっている。
『ストリークフライ』は東洋大の選手が練習時に好んで履いていたが、進化を遂げたことで出雲駅伝など短い距離のレースで着用する選手が現れるかもしれない。
『ヴェイパーフライ 4』と『ストリークフライ 2』のプロトタイプカラー(白)は3月1日に発売され、赤いカラーのモデルは4月以降に発売予定だ。
『ヴェイパーフライ 4』は青学大・若林宏樹(4年)が別府大分毎日マラソンで着用して、2時間06分07秒で快走しているが、3月2日の東京マラ
筆者:酒井 政人