就活では「なるべく早く」「たくさん」失敗をした方が理想の就職先が見つかる
2025年3月4日(火)8時11分 マイナビニュース
人生を決める大きな分岐点である就活。しかし、そう簡単に希望の企業に就職できるほど、甘くないのが実情です。気合を入れて受けた企業から不採用の連絡が来たら、誰でも落ち込みますよね。
もう二度と失敗したくない、と思うかもしれませんが、あなたの就活を実りのあるものにしたければ、なるべく早く、たくさん失敗した方がいいのです。
なぜ、そう言えるのか。その理由について、失敗を糧に成長するコツを説いた書籍『失敗したらガッツポーズ』(アスコム)より、一部抜粋・再編集してお届けします。
「失敗ウェルカム」な姿勢が成功につながる
皆さん、就活は順調ですか?
聞いた話ですが、20社近く受ける人もいるそうですね。「学生の売り手市場」とはいえ、就活生の活動量は多く、競争も激しいので、すんなり希望の企業に受かる人ばかりではないでしょう。
そんなあなたに、贈りたい言葉があります。英語圏でよく引用される「Fail Early,Fail Often,but always Fail Forward」という言葉です。
「早く失敗しなさい、頻繁に失敗しなさい、でも常に立ち直りなさい」というような意味ですが、本当にその通りだと思います。
失敗や挫折を経験したときには、辛いし、悲しいし、悔しいものですが、後になって振り返ってみると早めに失敗しておいてよかったよ」と思えることも多いので、人生というのは不思議です。
アルバイト先の先輩やご家族など、周りの大人たちに尋ねてみてください。皆さん、同じことをおっしゃると思います。
アップルの創業者スティーブ・ジョブズも、スタンフォード大学の卒業式の祝辞でこんな趣旨の話をしています。
「当時はわからなかったが、アップルを追放されたことは、私の人生で起こった最良の出来事だったと後にわかった。成功者としての重圧が、再び創始者となることの気軽さへと変わった。人生で最もクリエイティブな時期に自由になれた」
有名な動画なので、ご覧になったことのある方も多いでしょう。
この言葉の背景を簡単に説明すると、ジョブズは30歳のときに、自分が連れてきた経営者(当時のペプシコーラ事業担当社長)と経営方針を巡って対立し、解任されてしまいます。
自分がつくった会社から追い出されたのですから、そのショックは大変なものだったと思います。
しかし、アップルを去った彼は、前述の言葉通り創造性を発揮して、ピクサー・アニメーション・スタジオや、ネクストコンピュータを設立します。その行動力と業績も素晴らしいのですが、彼がすごいのはここからです。
11年後、ジョブズは業績不振に陥っていたアップルに対してネクストコンピュータを売却。古巣に復帰すると、「iPod」や「iPhone」などの革新的商品を立て続けに世に送り出し、同社を劇的に復活させたのでした。
私と比較するのはおこがましいかもしれませんが、私にもいろいろ思い当たる「しくじり」がたくさんあります。
たとえば、数年前に私が経営する会社のスタッフが1年で5〜6人も入れ替わったことがありました。スタッフが十数人の会社なので、かなり大きなダメージです。
そのときは「なぜ、こんなことになるんだ」という悔しい思いもありましたが、スタッフと向き合い、本音で語り合ったことが、私の財産になりました。
スタッフとの接し方が間違っていたことに気づき、早めに軌道修正することにつながったのです。
今思えば、あのときに痛い目に遭っていてよかった。 もし失敗せず、自分の課題と向き合うこともなく時が過ぎていたとしたら、今の自分や会社の成長はなかったと思うからです。
就活も同じです。ただ失敗するだけでなく「何が失敗の原因なのか」「次からどうすればいいのか」という反省を基にアップデートしていけば、成功に近づけると思います。
数打てば当たる就活ではなく、失敗を基に成長していく就活にしたいものですね。
就活を成功に導くために必要な「自分キャラづけ」
幕末の偉人・長州藩の吉田松陰は、「志を立てて以って万事の源と為す」という言葉を記しています。
これは「志(こころざし=目標・ビジョン)を立てることがすべての行動の原点となる」といった意味です。あの激動の時代に、命がけで世の中を変えようとした人の言葉ですから重みが違います。
就活は厳しい戦いですが命まで取られるわけではありません。吉田松陰のような歴史上の偉人はもっと厳しい状況にいました。彼らの生き方から、就活を勝ち抜くヒントや、より一層頑張るための勇気をもらえます。
とはいえ、自分にとってメンター(指導や助言をしてくれる人)となるのは、実在の人物だけでなくてもいいのです。同じことは、私がよく見るマンガやドラマの主人公たちから教わってきました。
たとえば、マンガ『キングダム』(集英社)や、韓国ドラマ『梨泰院(イテウォン)クラス』などがそうです。
キングダムは、私が人生で初めてハマったマンガです。後に中国を統一することになる秦の始皇帝と側近の李信が主人公の壮大な歴史物語なのですが、最初は少ない仲間から始まって、それが100人になり、1,000人になり、と増えていく。
また、『梨泰院クラス』は、親を殺された過去がある主人公が事業を起こしてそこから這い上がって復讐していく話です。自分の可能性を最大限に信じて戦っている主人公に、とても共感できるのです。
これらの作品に限らず、マンガやドラマの主人公たちは、それぞれ実現したい目標や使命を持っており、どんなに苦しい状況になっても絶対に挫けません。
主人公があきらめないのは主人公だからだ—という身も蓋もない指摘もありますが(笑)、そもそも私たちだって「自分の人生の主人公」であり、作者ですよね。
だったら、勝手にそのようなキャラ設定と筋書きにしてもいい。それは、「本気の目標」を立てることで始まります。
「本気の目標」が決まれば就活でくじけない
本気の目標とは、自分が人生を通じて達成したい目標のこと。
海外旅行に行きたいとか、車を買いたいといった軽い目標ではなく、もっと大きく5年でも10年でもかかったとしてもやり遂げたい目標です。
就活もそうですよね。なぜ、その会社に入りたいのか。入って何を成し遂げたいのか、どんな自分になりたいのか。それがあれば、簡単に挫けたりしないはずです。
では、どうしたら、本気で頑張れる目標をつくることができるのでしょうか。
ここでは、私がメンターから影響を受けた言葉や、セルフコーチング(自分で自分をコーチする・励ます・作戦会議をする)で取り組んだワークなどをご紹介しようと思います。
私にはメンターが何人かいるのですが、そのお一人との出会いによって腹落ちしたことがあります。
それは、「自分の命をどう使うか?」ということです。
目標とか夢とか価値観といった言葉はよく耳にしますし、私たちも気軽に使いますが、「自分の命をどう使うか?」となると、ちょっとドキッとしますよね。
人生は一度きりです。今、この瞬間にも時間は無情にも過ぎ、私たちは死に向かってカウントダウンを進めているのです。
自分の人生をどう使おうが、その人の自由です。でもこの記事をお読みの方の多くは、一度しかない人生を意味のあるものにしたいという想いが強いのではないでしょうか。
しかし、大多数の人は日常生活の中で目の前の「やらなきゃいけないこと」に追われて、ついつい、何のための人生なのかということを忘れがちになります。気がつけば、貴重な命の時間を浪費してしまいます。それを防ぐためには、今一度、自分の命の使い方に思いをはせてみてはどうでしょうか。
「自分が生まれてきた存在意義は?」
「自分は何のために生きているの?」
私は、こうしたことを日常的に自問自答するようになってからは、自分のすべきことの解像度が上がり、経営する上でほとんど迷わなくなりました。
なお、このときに私がこれまでの人生を振り返った上で確認したのは、次のような思いです。
「誰かの"できない"を"できる"に変え続ける。多くの人の心を照らす存在になる!」
なぜかというと、私の原動力になっているのは、「挫折感や孤独、寂しさをどう乗り越えるか」であることに気づいたからです。
私の幼少期、母は仕事に出て忙しかったので、いつも寂しかった記憶があります。
また、学生時代に打ち込んだサッカーから離れて、心が荒れていた頃には、私の自分勝手なふるまいにあきれて、ほとんどの仲間が去っていきました。目標も見失い、自分の殻に閉じこもり、まさに五里霧中の状態でした。
この2つの体験が、私の人生観に大きな影響を与えています。
自分にとっては、「ビジネスで成功する」とか「お金持ちになる」ことよりも、家族や仲間と共に楽しく成長していくことのほうが優先順位は高いということです。
自分が荒れていた時期に、支えてくれた家族や親友がいなかったら、今の自分はないと確実にいえるからです。
私は「本気の目標」を持ってビジネスに取り組んでいます。だから今後、何があってもくじけることなく、目標に向かって前に進めると自信を持って言えます。
本気の目標は、自分の人生を振り返り、過去を見つめて、本当に自分がしたいこと、自分が求めていることを探った時に見つかるのだと思います。
本気の目標は、就活で仕事を選ぶ時の基準にもなりますし、就職後に仕事に打ち込む原動力にもなります。
皆さんも「本気で何をしたいのか」が分かれば、就活で何社か断られたとしても落ち込むこともなく、むしろ失敗を力に変えることができます。
○著者プロフィール:荒木俊(あらき・しゅん)
荒木電通株式会社代表取締役
1988年生まれ。2012年、地元・佐賀県で荒木電通を創業。22年に本店を福岡に移転。24年に東京オフィスを新設。失敗を「学び」に変え、次の成功につなげるメソッドで自分自身と仲間を成長させ、創業から約10年でグループ年商3億円を達成する。