傷害や暴行など、キレて捕まる高齢者が増えている!。脳トレ第一人者が教える「キレる高齢者」にならないための行動制御トレーニング
2025年3月5日(水)12時30分 婦人公論.jp
最近、愚痴っぽい?(写真提供:Photo AC)
仕事も子育てもひと段落し、時間や心理的な余裕が生まれる65歳からは、いわば人生のゴールデンタイム。脳を鍛えるのにも絶好のタイミングだと、脳トレの第一人者・川島隆太さんは言います。川島隆太さんの著書『脳を鍛える!人生は65歳からが面白い』より、食事、運動、睡眠、人間関係など、認知症にならずに《上手に老いる》ための習慣を紹介します。
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批判や皮肉が認知症リスクを高める!?
自分の親に久しぶりに会った際、なんだか昔よりも愚痴っぽくなったと感じたことはありませんか?
ほかにも、こちらがよかれと思って提案したことを頑として受け入れてくれない……なんてこともあるかもしれません。
「年をとると頑固になる」「愚痴っぽくなる」と言われますが、これには加齢によって前頭前野の機能が低下することが関係しています。
前頭前野は感情をコントロールしたり、物事の善悪を判断したり、高次な精神活動を司っているのですが、衰えると情動の抑制が効かなくなり、他者の意見を受け入れにくくなるのです。
閉じられた環境で自分の意見が常に正しいと思っていると、他者に対してだんだんと批判的になっていきます。
年をとったから仕方ないと思ってしまうかもしれませんが、批判や皮肉が認知症リスクを高めるということが明らかになっています。
フィンランドの研究者が、「高レベルな皮肉や不信感を抱く人々は、認知症のリスクが高い」という研究結果を発表しました。平均年齢約70歳の認知症検査を受けた人たちを対象に、皮肉のレベルを測定するアンケートを実施し、追跡しました。
すると、皮肉や不信のレベルが高い人ほど認知症発症のリスクが高まることがわかり、不信のレベルが低い人は、高い人と比べると、皮肉屋になったり批判的になったりするのは、もちろん、もともとの性格や長年の思考のクセによるところもありますが、スマートフォンやタブレットを使ったSNS頼みのコミュニケーションも、要因のひとつとして挙げられるかもしれません。
暇つぶしや情報収集のために始めたSNS
気がついたら、手が空いたときにいつも見てしまっている……といったことはありませんか?そんな人は要注意です。
SNSで自分と似たような価値観や考え方の人と「いいね!」をつけ合い、フォローをしていると、考えを同じくする情報やニュースばかりが表示されるようになります。
これは「エコーチェンバー」という現象ですが、実際はごく一部で支持されている偏った考え方や、間違った情報だとしても、エコーチェンバーの閉じられた空間では、それがすべての世界であり、正解だと思い込んでしまう危険があります。
学校や勤務先など、リアルな世界や異なる意見の人がいるコミュニティに関わっていれば自分の偏りを修正することができますが、高齢になったり、引きこもりがちになったりして所属する組織がなくなると、偏りを自覚できず、違う意見を受け入れられなくなってしまうのです。
そうした状態が、人や物事への不信感や批判的な気持ちにつながってしまいます。
あまりに人に対して不信感を抱き、批判的な気持ちになったときは「自分は大丈夫かな?」と見直してみてください。
「キレる高齢者」にならないためのトレーニング
昨今「キレる高齢者」や「暴走老人」といったような言葉を耳にすることがあります。
高齢者による暴言や暴行を取り上げたニュースを目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
実際に、傷害や暴行で検挙される65歳以上の高齢者の数は、年々増加傾向にあるそうです。加齢によって感情の抑制がうまくできなくなるのは、前頭前野の働きが衰えることが原因です。
前頭前野の働きが衰えると、怒りっぽくなったり、集中力が続かなくなったりする「感情の老化」が起こります。無気力になったり、不安が強くなったりすることもあります。
今までなら気にならなかったことでイライラしてしまったり、思わず強い言い方をしてしまったり……そんな自覚があったら前頭前野が衰えてきた可能性があると考えてよいでしょう。
「感情をコントロールする力」は取り戻せる
年齢を重ねてから良好な人間関係を築いていくためにも、こうした感情の老化を防ぐ必要があります。
じつは、感情をコントロールする力は、早めに気づいて対策をすれば、取り戻すことができるのです。
そのためには「脳トレ」はもちろん、「行動制御」のトレーニングも効果的です。ここでの行動制御とは、手足を左右別々に動かし、思わずどちらかにつられてしまうのを意識的に制御するトレーニングです。
例えば、下の図のように左右の手で違う動きを繰り返し行います。右手は「グー・パー・チョキ」の順番に、左手は「パー・チョキ・グー」の順番で動かしてみてください。
別々の動きをしようとすると、左右の手が思わずシンクロしてしまいますが、そうならないように強く意識して抑制しましょう。
グーチョキパーで脳トレ『脳を鍛える!「人生は65歳からが面白い」』より
トレーニングを行う際に重要なのが、「できるだけ早く動かす」ことです。ゆっくりやっていては効果がないので、「30秒間の間に4回繰り返す」といったように、なんとかできそうな目標を立てて取り組んでください。
こうした抑制力を鍛える脳トレを続けることで、前頭前野だけではなく、脳の運動領域の情報処理を行う「運動連合野」「運動野」といった部位が鍛えられます。怒りを抑制するだけでなく、イライラや不安を調整する効果も期待できますよ。
※本稿は『脳を鍛える!人生は65歳からが面白い』(扶桑社)の一部を再編集したものです。
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