看板犬の「お見送り」まで付いて素泊まり3500円 格安だけど豊かな温泉宿が青森にあった
2024年3月5日(火)15時0分 Jタウンネット
温泉宿でゆっくり過ごした翌朝、玄関で犬が見送ってくれる——。
X(旧ツイッター)の犬好きユーザーの注目を集める民宿を、読者はご存じだろうか。
その宿の名は「南部屋」。青森県十和田市にある、温泉民宿だ。
濃い茶色とクリーム色の2匹の犬の寂しさを漂う背中と共に「あぁーぁ...... お客さん帰っちゃった。。。」と残念そうにつぶやくのが、この宿の公式アカウントの"お決まり"の投稿。
「今度、遊びに行くからね!」「いっぱい遊んであげるからね!」と全力で構い倒したくなる切ない後ろ姿や、2匹が仲良く眠ったり遊んだりしているひたすら可愛い姿が人気を集め、犬好きXユーザーを中心に、フォロワーを増やし続けている。
寄せられているのは、こんな声だ。
「並んでお見送りが素晴らしい」
「可愛すぎます」
「行ってわしゃわしゃ撫でてあげたい」
「いつか行ってみたいお宿です」
2匹の看板犬がお見送りしてくれる宿では、どんな体験ができるんだろう? Jタウンネット記者は「南部屋」のご主人に電話で詳しい話を聞いてみた。
犬たちに会いたい人は事前に連絡を
温泉民宿「南部屋」のご主人は田村暁(さとる)さん。
大学時代にバックパッカーとして世界各地を旅行し、卒業後、海外秘境系旅行会社に就職した。そこで秘境ツアーの企画・添乗員として活躍していたというが、あるとき温泉宿を経営しようと決意。温泉付きの物件を探して、2016年に温泉付き民宿を前オーナーから譲り受けた。
母屋は、大正期に建てられた古民家。築100年を超える建物を、居抜きでそっくり引き継いだ。「古いものをそのまま残したい」と、浴室を青森県産ヒバで改修した以外は、ほとんど以前のままだという。
「テレビもない、Wi-Fiもつながらない、便利なものは何もない。料金が安い代わりに、不便ですよ」と、利用者には事前に断っていると、田村さんは笑う。
2匹の看板犬(茶色のリュック、白のクララ)は、2016年の開業以来共に暮らしている。SNSに犬を登場させるようになったきっかけは、「コロナで暇だったから(笑)」と田村さん。犬好きな人からの反応が徐々に増えて、「ワンちゃんに会いたい」というお客さんも現れるようになってきた。
ただ、田村さんは付け加える。
「ワンちゃんは常にいるわけではありませんので......」
南部屋のアカウントのトップに固定された投稿にも「看板犬は常には館内に居ず」「日帰りで確実に2匹に会いたい方は必ず事前電話」と記載されている。
ということで、会いたい人はアポを取ってから訪れよう。
看板犬だけじゃない! 温泉宿・南部屋の魅力
さて、温泉民宿「南部屋」の第一のおすすめは、やはり温泉だ。
加温・加水・循環・消毒を一切行わない"湯使い"にこだわった、源泉100%かけ流しの湯。温泉成分の凝縮した「湯の花」をそのまま浴槽に注ぎ入れているため、より濃い温泉が楽しめるという。
温泉好きには充分満足してもらえるはず、と田村さんは自信を持って断言した。
南部屋に訪れる客の2〜3割は、インバウンド。台湾、香港、東南アジアの個人客が多く、欧米人も増えてきた。八戸や十和田市でレンタカーを借りて、十和田湖や奥入瀬渓流を周遊する人が多い(冬場も、除雪は行き届いているらしい)。
秋の紅葉シーズンは、5割近くがインバウンド客ということもあるそうだ。「ふとんはセルフで敷いていただいています」と、元ツアコンの田村さんはさりげなく語る。
夕食は、車で十和田市へ出かける人もいるが、温泉民宿「南部屋」でも美味しい食事を提供している。ニジマスやホタテなど青森県産の魚、地野菜、山菜など。南部地方の郷土料理「せんべい汁」を出すこともある。
料金は、冬季(11月1日〜4月24日)素泊まり大人3500円、2食付き6400円だ。格安すぎないかと尋ねると、「もともと、この料金でやってきましたから」と答えた。
「料金は可能な限り変更しない方針です」(田村さん)
奥入瀬渓流、十和田湖の自然を楽しんだ後、地元食材をふんだんに使った食事と、濃い温泉でじっくり温まる。そして、2匹の看板犬に見送ってもらう。
高級旅館とはまた一味違う、豊かで贅沢な時間を味わえそうだ。