長期投資家に人気の「SCHD」とは?資産成長が期待できる米国ETFの秘密
2025年3月5日(水)11時30分 マイナビニュース
昨年10月頃から、投資家の間で米国の高配当ETFである「SCHD」というキーワードが急激に注目を集めている。検索数やSNSでの投稿が増えており、「長期投資に向いている?」「VYMと何が違う?」といった声も多く見られる。
この記事では、SCHDの基本情報から、メリット・デメリット、投資方法まで詳しく解説する。これから投資を始める方や、高配当ETFに興味がある方は、ぜひ参考にしてほしい。
○最近話題のキーワード 「SCHD」 とは?
SCHDとは米国に上場している、株式のように市場で売買できる投資信託であるETF(上場投資信託)で、正式名称を「シュワブ・米国配当株式ETF」という。SCHDはこのETFのティッカーコード(取引所での略称)だ。
SCHDは、配当実績があり、財務健全性が高い米国の100銘柄で構成される「ダウ・ジョーンズUSディビデンド100インデックス」の値動きにできるだけ近づくよう運用されており、配当による収益と中長期的な値上がりをめざしつつ、幅広い業種の米国高配当株式100銘柄程度に分散投資できるのが特徴だ。
SCHDが特に多く投資している組入上位10銘柄は、財務健全性や配当の安定性などの基準を満たした企業であり、その詳細は図表1で確認できる。
米国の代表的な株価指数であるS&P500と比べて、業種では金融やヘルスケアの割合が高く、情報技術の割合が小さくなっている。組入上位銘柄をみると配当利回りが相対的に高くなっているのが分かる。
※配当利回りとは、株価に対して年間どれだけの配当が得られるかを示す指標(例:株価が100万円で配当が5万円なら5%となる)
※BloombergデータをもとにSBI証券作成(2025/1/14基準)
※個別銘柄の取引を推奨するものではない
SCHDよりも運用期間が長いETFとして「米国高配当株式ETF(ティッカー:VYM)」がある。VYMは、米国の高配当利回り株を組み入れた指数である「FTSEハイディビデンド・イールド・インデックス」への連動をめざしており、配当による収益と中長期的な値上がりをめざしつつ、幅広い業種の米国高配当株式500銘柄以上に分散投資できるのが特徴だ。同指数は大型株のうち配当利回りが市場平均を上回る銘柄で構成されている。
VYMの組入上位10銘柄は図表2となっている。業種では金融と生活必需品の割合が高いのが特徴で、組入上位銘柄の配当利回りを見るとSCHDの組入上位銘柄と比べてやや低くなっている。
SCHDもVYMも高配当株式が投資対象のため、配当利回りが低い、または配当実績がない米国の巨大IT企業「マグニフィセント・セブン」の組み入れはない。
※BloombergデータをもとにSBI証券作成(2025/1/14基準)
※個別銘柄の取引を推奨するものではない
「SCHD」のメリット・デメリット、「VYM」との比較
SCHDとVYMの特徴を比較したのが図表3になる。ETFの運用コストである経費率は0.06%で同じだ。低コストのETFといえる。
パフォーマンスを見ると1年、3年リターンでは、VYMの方が優位となっている。これはSCHDがここ3年程度で相対的にパフォーマンスで劣っている1つの理由としては、ヘルスケアの組入比率が相対的に高いことが影響していると考えられる。
一方で、5年トータルリターンではSCHDが優位となった。SCHDは相対的に配当利回りや配当成長率(増配率)が高いのが特徴のため、長期でみると好パフォーマンスにつながっているといえる。
配当利回りや増配率を重視するならSCHDが優位といえるが、3年程度のパフォーマンスを重視するならVYMが選択肢になると思われる。一般的に高配当株式は、上昇局面に弱く(相対的に劣後し)、下落局面に強い(相対的に下落率が小さくなる)傾向がある。こうした特徴もおさえた上で投資することが有効といえる。
また、高配当株式を選ぶ際には配当成長率が高いかどうかというのも1つのチェックポイントといえる。配当成長率が高い企業は、安定して収益が拡大している企業が多いといえる。
※BloombergデータをもとにSBI証券作成(2025/1/14基準)
実質的に 「SCHD」 に投資ができる国内ファンドは?
SCHDに実質的に投資できる国内ファンドはいくつか存在する。これらのファンドは、SCHDを主要な投資対象とし、米国の高配当株式に分散投資することで、配当収益の確保と中長期的な資産形成を目指している点が特徴だ。
ファンド選びの際には、運用方針や分配のタイミングに加えて、コストとなる信託報酬(※)率も重要な検討要素となる。特に長期投資を前提とする場合、コストの違いがリターンに影響を及ぼすことがあるため、各ファンドの手数料体系を比較することが推奨される。
※信託報酬とは、ファンドの運用管理にかかる手数料のこと。投資家側が負担する
ちなみに、2025年2月時点で、SCHDに実質的に投資できる国内ファンドは「SBI・S・米国高配当株式ファンド(年4回決算型)」と「楽天・高配当株式・米国ファンド(四半期決算型)」の2つとなっており、前者の信託報酬率は0.1238%程度、後者は0.132%となっている。
NISAで買える高配当ファンドの実績ランキング
なお、米国の高配当株式に着目して長期の運用実績のあるファンドを3年リターン順に並べたものが図表4になる。いずれもNISA・成長投資枠で買えるファンドとなっている。実質的にVYMに投資することができるファンドが3位と4位のファンドだ。VYMは日本においてはETFと投資信託、両方で投資ができる。
7本の米国高配当株式ファンドとS&P500インデックスファンドを比較すると、1年や3年のリターンでは米国高配当株式ファンドはS&P500インデックスファンドに対して見劣りするが、値動きの振れ幅を示す標準偏差(1年)は小さくなっている。
高配当株式ファンドは、株式ファンドの中では相対的に値動きが小さいのが特徴で、大きなリターンは狙わずにリスクを抑えた株式ファンドを選びたいという方にとっては有効な選択肢になるといえるだろう。
「図表4 NISA・成長投資枠 米国高配当株式ファンド 3年リターンランキング」の詳細はこちら。
図表4 NISA・成長投資枠 米国高配当株式ファンド 3年リターンランキング
※NISA・成長投資枠対象のSBI証券取り扱いファンドの中から配当に着目した米国株式ファンドを米国高配当株式ファンドと定義し、3年リターン順に表示(2024年12月末基準)
※同一運用会社で同一マザーファンドに投資しているファンドは3年リターン上位のみを表示、参考としてS&P500インデックスファンドも表示
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではない
『投資情報メディア』より、記事内容を一部変更して転載。
川上雅人 かわかみまさと SBI証券 投資情報部 シニア・ファンドアナリスト(公益社団法人日本証券アナリスト協会認定アナリスト) 慶應義塾大学卒業。丸三証券で国内株アナリスト、国内大手運用会社で18年間、商品企画・営業などを担当後、2020年よりauカブコム証券でファンドアナリストとして活動。2022年11月から現職。最新の投資情報を発信する『投資情報メディア』のレポート・コラムなどで投資信託や資産運用(新NISAなど)に関する情報提供を行う。 この著者の記事一覧はこちら