爆買いの次は「爆セックス」 激変する中国大陸の性事情

3月7日(木)21時0分 文春オンライン

 急速な経済発展を遂げた中国では、短期間でも社会の変化が大きい。特にスマートフォンが普及した2010年代以降は、オンライン決済による送金や商品購入の容易化、イノベーションの活発化、人々のマナーや衛生観念の向上などによって、中国人の価値観やライフスタイルは劇的な変化を遂げた。それは、人間の究極のプライベートな生活領域であるセックスの世界も例外ではない。


 05年、イギリスの大手コンドームメーカーDurexの調査では、対象41ヶ国中で中国人の性生活満足度はワースト1位の22%。年間セックス回数も96回で、対象国中で下から10番目と不活発だった(なお、同調査で日本の性生活満足度はワースト2位の24%、年間回数はワースト1位の45回である)。だが、中国のこうした数字はもはや過去だ。



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 指標としてアダルト用品市場(コンドームを含む)を例に挙げよう。同市場は、ネットを通じて商品を非対面で購入できるようになった13年ごろから急速に活発化している。シンクタンクiiMedia Researchの試算では、16年以来、前年比45%以上という爆発的な市場規模の拡大が続き、20年には1300億元(約2兆1000億円)に達する見込みという。


 実際の性行動の変化を示すデータもある。例えば18年8月、アダルト用品メーカー・TryFun(春風)が発表した『2018年中国8090後性福報告』だ。なお、春風の親会社は米国ナスダックにも上場する中国のIT大手、NetEase(網易)。優良上場企業がアダルト用品メーカーを傘下に組み込むほど、近年の同市場は熱いらしい。


 春風の調査は17年11月から18年4月まで、未婚・既婚を含めた4000人を対象におこなわれた。回答者の85%は80・90年代生まれの若者だ。現在中国のIT世代の性生活が垣間見えるデータなので、以下に詳しく紹介してみよう。



 まず、調査対象者たちのセックス頻度の平均は週に1.2回である。内訳は週2回以上が最多の31%を占め、次に週1回が23%、半月に1回が11%と続く。いっぽうで1ヶ月間以上も性行為がないセックスレス率は、未婚者も含めてわずか7%にとどまった。


 男女別では、週1回以上セックスをおこなう人が男性の57%、女性の40%を占めた。年齢別では26〜40歳の若手社会人世代が最も活発で、週に「2回以上」が40%にも達している。アダルト用品メーカーによる調査であることを割り引いても、かなりお盛んな印象だ。


 なお、単純な比較はできないが、日本家族計画協会家族計画研究センターの『ジャパン・セックス・サーベイ』〔14年6月発表〕によれば、日本の既婚20代男女のセックスレス率は19.5%と35.8%、30代男女の場合は25.1%と31.7%にのぼる。「週1回以上」とは程遠い状況である。



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収入に比例するセックス満足度


 春風の調査で面白いのが、中国の地域別のセックス頻度の分析だ。大都市の北京や上海で週に1回以上セックスをする人は45%なのに対して、地方の中小都市(三線都市)は57%。ほか、内陸部の四川省・重慶市の住民は67.3%にも達する。街に娯楽が少ない地方ほど、若者の楽しみは限られるということだろうか。


 また、職業・社会的地位ごとの「週1回以上」率は、企業経営者や幹部層が、それぞれ70%台(!)を叩き出した。これはブルーカラーの59%や一般サラリーマンの52%、主婦の50%、学生の21%などを大きく上回る数字だ。


 中国人のセックス充実度は収入と完全に比例しており、月収5万元(約81万円)以上の層の「週1回以上」率が73%に対して、月収2000元(約3.2万円)以下の層は38%と、相対的に低い数字にとどまる。富裕層のほうが部屋や自動車を準備しやすい、不労所得で儲けており時間に余裕が生まれやすい、中国では日本以上に男女関係にカネが絡みやすい……といった、さまざまな条件に恵まれているのだと思われる。



 そのほか、コンドームを含めたアダルト用品の購買者は、大卒以上の学歴を持つ既婚男性が多くを占めたという結果もある。中国における性の悦びとは、金持ちやインテリにこそ許される娯楽とも言えるのだ。中国では貧困層を中心に一生結婚できない男性が3000万人以上おり、夜の世界も格差社会である。


 別の調査も紹介しよう。13年に中国性学会が2.1万人以上のネットユーザーの回答を得て発表した『全国網民性福調査』でも、全回答者の「週1回以上」率は70%だった。調査対象者の81%が18〜35歳の若者世代であることも関係しているとはいえ、こちらも驚異の高率だ。


 同調査では、自身の性生活に満足している人は57%。パートナーをエクスタシーに導いて満足させる義務があると回答した男性は94%に達した(ただし、それができていると自任する男性はわずか25%。いっぽう「達したフリ」をした経験を持つ女性は65%もいたそうだが)。



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 ともかく、わずか13年前には性的満足度が世界ワースト1位だった中国のセックス事情は、1980年代生まれ以後の新世代が社会の中心となるにつれて大幅にアクティブに変わっている。いまや、本来の用途はフードデリバリーアプリである『美団』を通じて、部屋へのアダルト用品の即時出前がスマホの操作ひとつでできてしまうような時代なのだ。


 中国は往年の一人っ子政策の影響もあり、世代別人口がいびつだ。あと10年もすれば60歳以上の世代が3億人を突破する「人口の時限爆弾」の破裂を迎え、経済停滞の可能性も囁かれている。


 しかしながら、「週1回以上」が50〜70%に達するという元気な若者のセックス事情を見ていると、セックスレス大国の日本と比べれば、中国はまだ何とかなりそうな気もしないではない。


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(安田 峰俊/文春ムック 文藝春秋オピニオン 2019年の論点100)

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