月経前症候群(PMS)がひどくなりやすい人の特徴は? 対策と改善方法
2025年3月7日(金)17時0分 マイナビニュース
生理が近づくとイライラしたりやる気が出なくなったりするのに、生理が始まった途端に落ち着いたことはありませんか?
もしかしたらそれは月経前症候群(PMS)かもしれません。月経前症候群は薬による治療や生活の見直しなどによって改善することができます。生理のせいだからしょうがないとあきらめないで、月経前症候群のことを知って適切な対処方法を見つけましょう。
○■月経前症候群とは?
「月経前症候群」は生理の3〜10日前に精神的にも身体的にも起こる、様々な症状で、生理が始まるとともに症状が軽くなったり、全くなくなったりします。軽めの症状も含めると、生理が見られる日本人女性の約70〜80%に何らかの症状が見られると言われています。
○<月経前症候群の原因>
原因ははっきりとはわかっていません。ただし、月経周期の黄体期後半に起こることから、女性ホルモンの変動が関係しているとみられます。黄体期の後半には、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が急速に減るため、脳でセロトニンやGABAなどの神経伝達物質などのバランスが乱れ、精神的なトラブルが起こりやすくなると考えられます。
なお、ストレスなどの影響も受けると考えられ、女性ホルモン以外にもいくつもの要因が月経前症候群を引き起こすと言われています。
○<月経周期と黄体期>
月経前症候群は黄体期の終わりに起こります。また、月経周期は次の3つの時期に分かれています。
・卵胞期
卵巣から卵子が放出される前の時期。生理の開始時から排卵前に当たります。
エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌は少なめです。
・排卵期
卵巣から卵子が放出される時期のこと。
排卵の直前に、エストロゲン(卵胞ホルモン)が大量に分泌します。
・黄体期
卵子が放出された後の時期。排卵から生理の前までに当たります。黄体期に入るとエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が大量に分泌されますが、黄体期の終わりには一気に減少します。
○<月経前症候群が重い人の特徴>
女性ホルモンが正常に分泌されている人ほど、月経前症候群が起こりやすいとわかっています。排卵を抑制すると症状が緩和されるため、女性ホルモンの中でも排卵後に多く分泌される「プロゲステロン(黄体ホルモン)」が関係していると考えられます。
また、心身へのストレスを抱えていたり、生活リズムが崩れている場合も症状に影響することがあります。普段から喫煙や生成された糖、アルコールを多く摂っているケースも関連している可能性があります。
なお、月経前症候群は若い女性に多く、高校生を対象とした調査では、14.4%の女子高校生に生活に支障が出るほどの症状があり、11.9%は月に1回以上欠席している、という結果も出ています。
○■月経前症候群の症状
月経前症候群の主な症状は次の通りです。
・身体的な症状
下腹部が膨れる感じ、疲労感、腰痛、頭痛、むくみ、乳房が大きくなる感じ など
・精神的な症状
落ち込んだり落ち着かなくなったりと気分が変動する、怒りっぽくなる、イライラする、落ち込みやすくなる、不安感や緊張が強くなる など
○<抑うつ症候群として扱われることも>
日常生活も難しいほど精神的な症状が多く見られる場合は、抑うつ症候群の1つとして「月経前不快気分障害(PMDD)」と呼ばれています。
○■症状を和らげる方法
症状を和らげるためには、「日常生活の見直し」と「薬による治療」があります。
○<日常生活の見直し>
・症状日記をつける
症状の頻度、症状が起こる時期、重症度などを毎日記録します。
それによって月経前症候群の起こる時期や重さなどを自覚し、いつどんな風に起こりやすいかを理解していきます。
・アルコールを控える
普段からお酒をよく飲む人は飲酒を控えるのがおすすめです。
・禁煙
喫煙は健康にさまざまな悪い影響を及ぼします。月経前症候群にも影響すると考えられています。
・規則正しい生活リズムを心がける
生活リズムを整え、夜更かしを避けて睡眠をしっかり取りましょう。
・適度な運動を定期的にする
定期的に適度な運動を続けましょう。
・食生活を見直す
生成した糖を避け、玄米や全粒粉のパン、野菜など食物繊維をしっかり摂りましょう。カルシウムや亜鉛、マグネシウム、ビタミンB6を摂るのがおすすめです。
なおコーヒーなどのカフェイン摂取はほどほどであれば問題ありません。
○<薬による治療>
産婦人科や婦人科では、次のような薬を使った治療も受けることができます。なお精神的な症状が強い場合は、精神科や心療内科の受診もおすすめです。
・低用量ピル
低用量ピルで排卵を止めて女性ホルモンの変動を抑えると、乳房の痛みやむくみなどの症状が緩和します。なお低用量ピルは副作用が少なく、将来の妊娠・出産に影響しません。
・選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
不安感などの心の症状を緩和するために、脳内の神経伝達物質・セロトニンの分泌を促します。海外ではこのSSRIによる治療が主流です。
・漢方薬
患者さんの状態に合った漢方薬を処方してもらいます。よく使われる漢方薬としては、加味逍遥散、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、抑肝散などがあります。
・痛みやむくみなど諸症状に合わせた薬剤
強い痛みが出る場合は「鎮痛剤」、むくみが出る場合は「利尿剤」を使うこともあります。
○<サプリメントを使うという手も>
・ビタミンB6のサプリメント
ビタミンB6は月経前症候群の治療効果が確認されており、英国王立産科婦人科学会のガイドラインでも推奨されています。なお、摂り過ぎは避けましょう。
最後に月経前症候群を和らげる方法に関して、産婦人科の専門医に聞いてみました。
婦人科受診される際は、薬の処方が中心となります。記事にもありますように、漢方やホルモン剤を処方して症状を緩和することが多いです。
お薬の種類もたくさんありますので、患者さんの希望や症状によってどのお薬を使用するか、外来にて担当医と相談されるとよいと思います。ご自身だけでなく、ご家族の方にも月経に関して症状を確認し気軽に受診されてはいかがでしょうか。
○竹下 奨(たけした しょう)先生
一宮西病院 産婦人科/部長、産婦人科内視鏡センター長
資格:日本産科婦人科学会 産婦人科専門医、日本婦人科腫瘍学会 婦人科腫瘍専門医