白鵬と貴景勝が角界のお偉方から毛嫌いされる理由

3月8日(金)6時12分 JBpress

 果たして“稀勢の里ロス”を吹き飛ばせるような救世主力士は現れるのだろうか——。

 大相撲春場所が10日からエディオンアリーナ大阪で初日を迎える。人気横綱の稀勢の里が初場所で引退して以降、冬の時代への逆戻りを懸念する声も多いだけに日本人スター力士の誕生は角界にとって急務だ。ところが相変わらず好き嫌いの激しい親方衆や横綱審議委員会の面々は「出る杭を打つ」ことに余念がないようである。


貴景勝の大関昇進を阻む相撲協会「貴乃花嫌い」の体質

 その被害者筆頭は関脇貴景勝だろう。次の春場所では大関昇進がかかっている期待の力士だ。しかし、どうしても不可解な点が拭い去れない。昨年の11月の九州場所では13勝で初Vを飾り、先場所も11勝して優勝次点だった。昨年の秋場所でも小結で9勝しており、直近の3場所通算勝ち星は33勝。大関昇進の目安とされている「三役の地位のまま3場所連続で33勝以上」の条件をクリアしている。先場所は事実上の準優勝で技能賞まで手中に収めているにもかかわらず、大関昇進は見送られた。

 先場所の千秋楽では不調の大関豪栄道に何もできないまま、得意なはずの押し相撲で逆に完敗。大関昇進にNOを突きつけた親方衆からは「最後の最後が余りにも印象が悪過ぎる」との声も確かに出ていた。だが、たとえ負けようが3場所33勝の数字は揺るがない。大関昇進のラインが明確に決められていないことをいいことに、何だか取って付けたような理由でダメ出しをしているようにしか思えなかった。

 ある古参の親方は「誰とは言わないが、これまで大関に上がってから急に“守り”に入ってしまう力士もいたので大甘な昇進だけはさせたくなかった」と言いながらも直後、やや口ごもりながら次のように真相を打ち明けた。

「やはりどうしても貴景勝の師匠・元貴乃花親方の存在がネックだということ。貴景勝が脚光を浴びると、どうしても『貴乃花親方の指導のおかげ』という見方が世の中に広まる。協会としてもこの流れは断固として作りたくはないのだ。このまま貴景勝がスンナリと大関に昇進するよりも、少し時間が経ってから貴乃花騒動のほとぼりが完全に冷めた頃のほうが正直に言って有り難い。そう思っている親方衆は少なくないだろう」

 貴乃花部屋の消滅ともに千賀ノ浦部屋へ転属となった貴景勝にとっては、さぞかし心外な話に違いない。しかし今の角界において派閥や面子争いの行方は、残念ながら各力士たちが生き抜いていく上での大きなキーポイントとなっている。それは否めない事実だ。

 まだ22歳の貴景勝だけに、これから先も順調に成長し続けていけば稀勢の里のような人気日本人力士となる可能性は十分あるだろう。だからこそ、このようなくだらない“貴乃花アレルギー”にとらわれず日本相撲協会や親方衆の面々には貴景勝を公正な目で見て欲しいと切に願う気持ちでいっぱいである。


横審が大横綱・白鵬を異常に批判する理由

 逆風にさらされている力士は他にもいる。横綱白鵬だ。

 春場所直前には二所ノ関一門の連合稽古を訪れて貴景勝、先場所優勝の玉鷲を圧倒。存在感を示しているが、横綱審議委員会からの受けは相変わらず良くない。現役時代の稀勢の里を再三にわたって庇い続けながらも、白鵬には何かと手厳しい対応を貫く横審は相撲関係者の間で無双横綱にとっての「天敵」とまでささやかれている。

明治神宮で奉納土俵入りに臨む横綱白鵬(2018年1月9日撮影)。(c)AFP/Toshifumi KITAMURA〔AFPBB News〕

 日本相撲協会の関係者は、このように打ち明けた。

「日本人横綱としてスター力士に祭り上げた稀勢の里が引退に追い込まれたことで横審は今後間違いなく、白鵬へ厳しい目を向ける。北村正任前委員長は今年1月で退任したが、新任の矢野弘典委員長も2012年7月から横審のメンバーに名を連ねている人物。だから従来通り、横審の“アンチ白鵬”の姿勢は不変で、むしろポスト稀勢の里となるべき日本人横綱を生み出しやすい環境を作り出すため、何とか白鵬に身を引く決意をさせようと今後粗探しをしていくつもりのようだ。とにかく横審の面々は白鵬の取り口、立ち居振る舞いなどすべてにおいて毛嫌いしているらしいからね」


稀勢の里引退を機に各界の体質改善を

 とはいえ、ここまで目くじらを立てる横審のやり方には違和感を覚えざるを得ない。ここ最近、白鵬が多用するかち上げや張り差しに「横綱らしくない」と苦言を呈したり、立ち居振る舞いにも枚挙に暇がないほどイチャモンをつけたりしている。

 だが冷静に見れば反則でも何でもないのだ。もし、そこまで気に食わないならルール改正でもすればいいのである。しかもかち上げや張り差しは他の力士たちも当然駆使するケースがあり、あの、稀勢の里だって晩年は多用していた。そうであるにもかかわらず横審は見てみぬフリをし、鬼の首を獲ったかのように白鵬だけをワーワーと“集中口撃”しているのだから開いた口が塞がらない。こうした白鵬への“集中口撃”に対する現状には協会内部からも「やり過ぎ」との意見が実は噴出し始めている。

「横審が白鵬をあれだけ標的にするのは、どうやら今の時点で帰化しようとしていないことへの不満もあるようだ。それにしても、これだけ数々の偉業を成し遂げてきた大横綱へのリスペクトが横審には余りにもなさ過ぎる。これでは一体どちらが格上なのか、見ている側も混乱してしまう。近年、横審には『何様なんだ』という批判が数多く寄せられているのも無理はない。白鵬だって、これだけブッ叩かれ続けて余計に意固地になってしまっている。横審に対してこれ見よがしになっているからこそ、あえてかち上げや張り差しを多用したり、わざと不遜な態度を取ってヒールっぽく見せたりしているという話も実際のところ聞こえてくる。これでは何のための委員会なのか。まったくもって本末転倒だ」とは前出・協会関係者の弁だ。

 今のままだと私利私欲でうごめく大相撲の前途は暗いと言わざるを得ない。稀勢の里引退は見直しを図る機会ととらえ、もっと風通しが良く透明性の高い角界を構築していかなければ相撲人気は瞬く間に急落してしまうだろう。

筆者:臼北 信行

JBpress

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