少子化対策も見据えた、静岡大学×日本MSのクラウド「反転授業」

3月9日(木)19時15分 リセマム

(左から)日本マイクロソフトのパプリックセクター担当 織田浩義執行役員常務・平野拓也 代表取締役社長、国立大学法人静岡大学の伊東幸宏学長、(企画戦略・情報・人事担当)東郷敬一郎理事、情報基盤センター センター長 井上春樹教授

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国立大学法人静岡大学と日本マイクロソフトは3月8日、静岡大学静岡キャンパスで共同記者会見を開催。大学教育に関するデジタルトランスフォーメーションに関する両者の協力について覚書を締結し、説明を行った。双方のトップをはじめ、デジタルトランスフォーメーション推進に直接関わる教員や技術者なども出席し、多くのメディアを集めるなか、熱のこもった発表となった。

 国立大学法人静岡大学 伊東幸宏学長はまず、このようにあいさつした。「静岡大学は『自由啓発・未来創生』の理念のもと、質の高い教育と創造的な研究を推進し、ともに歩む存在感のある大学を目指しています。昨年の4月から第3期中期目標・中期計画期間に入り、本学は国立大学法人の3つの類型のうち、『地域のニーズに応える人材育成・研究』を選択し、地域社会に貢献し、世界的拠点を目指す、さまざまな取組みを決めました。

 最近ではICT技術の進化により、いつでもどこでも学べる環境が整いつつあり、IoTやAIなども教育の場で取り上げられるようになってきています。大学教育においてもグローバル化とともにラーニングコモンズの整備、アクティブラーニングが求められるなど、教育方法の改革が急務となってきました。

 そのひとつとして、授業の前にデジタル教材などで予習を済ませ、教室ではディスカッションや問題解決に向けた学習を行う授業形態である『反転授業』が効果的な手段として考えられています。これは、教室以外でも授業を行うことができるというものですが、このような授業は留学生や、英語を学ぼうとする日本人学生にとっても有効であり、教育のグローバル化にもおおいに結びつくものと考えています。」

 静岡大学では2012年から研究を開始し、「誰でも簡単に低コストで授業動画を制作できる機能」「動画を含む教材の保管を組織の規模に応じて、自由に増減できる機能」「動画を含む教材を世界中に発信する機能」を有する「反転授業支援システム」を開発し、「静岡大学テレビジョン」と名付けて運営。投稿数は1,600本以上、動画総再生回数は180万回を超える。

 「この度、日本マイクロソフトのクラウドコンピューティングプラットフォーム『Microsoft Azure(マイクロソフトアジュール)』を活用した『クラウド反転授業支援システム』として、本年4月から全学での本格的な運用を開始します。これに伴い、大学教育におけるデジタルトランスフォーメーションを推進し、日本マイクロソフトと連携し、協力することについて覚書を締結することといたしました。」と伊東学長は語り、こう続けた。

 「本プロジェクトでは質の高い教育を行うために『クラウド反転授業支援システム』などICTを活用した『教員の教え方の改革』『学生の学び方の改革』を推進していきます。」

 それらに加えて静岡大学では、全国の大学におけるデジタルトランスフォーメーションの推進に向け、他大学における「反転授業」の利用推進についても支援していく。同時に、第4次産業革命に向けて、IoTやAI、ビッグデータなどの先端情報技術の応用に関する講座・ワークショップの開講など、デジタルテクノロジーを活用することのできる人材の育成も推進する。

◆マイクロソフトのミッションを教育に生かす

 伊東学長に続き、日本マイクロソフト 平野拓也 代表取締役社長はこう語った。「マイクロソフトがグローバルに掲げるミッションは『地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする』こと。そのうえで、日本マイクロソフトは『革新的で、安心でき、喜んで使っていただけるクラウドとデバイスを提供する』ということを掲げています。

 今回、こういったかたちで静岡大学と協力体制を築き、学生のみなさまがより多くのことを学べて、より多くのことを達成できるよう、当社が協力させていただけることに喜びを感じています。

 静岡大学のデジタルトランスフォーメーション推進について、私たちはいろいろなかたちで支援させていただいております。マイクロソフトでは『社員にパワーを』『業務の最適化』『製品の変革』『お客様とつながる』の4つのテーマをもって取り組んでいるのですが、今回、静岡大学において学生の皆さま、教員の皆さまにパワーを与え、そして人材育成、授業のコンテンツについて変革を起こし、教育・研究業務の最適化といったことでデジタルトランスフォーメーション推進を支援することができると考えています。

 『反転授業』をすでに実施されている静岡大学に『Microsoft Azure』を活用いただき、支援させていただくことになりました。『Azure』の活用法としては日本初の取組みとなりますし、全面的に支援させていただきます。この先進的な取組みを、全国に広げていきたいと考えております。」

 また、平野社長は人材育成についても支援を約束し、IoTやAIに関わる技術者の派遣、講座・ワークショップの開催をサポートしていくことを表明した。さらに、2011年からワークスタイル変革に取り組む日本マイクロソフトは、将来ビジネスパーソンとなる学生に向けて「働き方改革」に関する講座・ワークショップを実施。これからを担う若者に「働き方」像をイメージしてもらうことにも努めるとした。

◆授業が終わった瞬間に、低コストで動画完成

 静岡大学 情報基盤センター センター長の井上春樹教授は、同大学におけるデジタルトランスフォーメーション推進を牽引していた人物だ。

 「今回の取組みにおける新規性は、主に3つあります。第1に、『教員による動画』はもちろんのこと、PowerPointやWordでも、反転授業のコンテンツにすることができるので、まさに瞬時、授業が終わった瞬間にコンテンツを制作できます。しかも、低コストで、です。当大学がクラウドコンピューティングプラットフォーム『Azure』を使用するための費用は多少かかりますが、教員や学生は無料で使えますので、コストゼロといってもいいでしょう。

 第2に、特別なソフトウェアやハードウェアなしに制作できるところも画期的。スマートフォンで撮影(録音を含む)したものでも十分、『反転授業』の動画になるので、特別な撮影・録音・編集機材などは不要です。

 第3に、『Azure』を活用することで、静岡大学の全学生約1万人と全教員が使っても、サーバの容量は余裕。仮に、当大学が活用する『クラウド反転授業支援システム』に、国内の全大学は『反転授業』動画をアップしたとしても大丈夫なほどです。それでいて、年間使用料もそれほどかからないのですから、他大学の方々にもお勧めしたい、というのが正直なところです。」

 静岡大学は2012年から研修を進め、今回の「クラウド反転授業支援システム」の運用に至った背景には「2018年問題」も関係している、と井上教授は言う。わが国では以前から少子化が問題視されてきたが、いよいよ2018年に国内の大学生総数が減少に転じると推測されている。「この問題に対処するには現状、2つしか方法がないと考えられています。それが、留学生と社会人学生のさらなる受け入れです。動画による『反転授業』なら、何度でも見られるので、日本語が苦手な留学生の学習にも役立ちますし、急な仕事が入って授業に参加できなかった社会人学生の助けにもなります。」(井上教授)

 「留学生がより学びやすいよう、『反転授業』動画を自動翻訳する、といったことにも当社の技術が役立つはずです。また、当社の『Office 365 Education』や『OneNoteクラス ノートブック』といったサービスも2017年4月から、静岡大学の全学生約1万人と教員の皆さまは自由にご利用いただけます。デジタルトランスフォーメーションの推進のため、私たちも全力を尽くさせていただきますのでご期待ください」と語るのは、技術面を牽引する日本マイクロソフト パプリックセクター担当 織田浩義執行役員常務だ。

 「反転授業」動画の制作がデモンストレーションされると、そのあまりの容易さに、見学者からは驚きの声が上がった。大学教育におけるデジタルトランスフォーメーション推進、「クラウド反転授業支援システム」への関心の高さや期待の大きさが感じられた。

リセマム

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