もうすぐ「石油肉」の時代が到来!? 闇に葬られた極秘“たんぱく質製造法”を徹底解説!

2023年3月10日(金)7時0分 tocana

イメージ画像:「Gretty Images」

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 石油から肉を作るだって!? あまりにもマッドな話だ。しかも、貧民たちがそれを食べさせられる未来なんて、ディストピアそのものじゃないか。それにしても冗談じゃないのか? まるで都市伝説だ!


——がしかし、これは本当の話だった。筆者自身にとっても長年の謎だった「石油たんぱく」について、とうとう化学製品を扱う大手メーカーの担当者から話を聞くことができたのだ。そう、石油から人工的に肉=たんぱく質ができるのだ!


■代替肉、日本人は昔から食いまくっていた!


 昨今、動物に由来しない肉=代替肉への関心が世界規模で高まっている。すでにアメリカではいくつもベンチャー企業が立ち上がり、「インポッシブル・ミート」を販売するインポッシブル・フード社が市場から7億5,000万ドルを調達したり、「ビヨンド・ミート」を生み出したビヨンド・ミート社の株価が公開から3カ月で2倍以上の高値を付けるなど、市場の注目も高い。


 こうした代替肉の原料は、基本的には大豆などの豆類や小麦だ。日本では「植物性たんぱく食品」と呼ばれ、これまでも加工食品の増量に使われてきた。意識せず食べているが、ハム、ソーセージ、かまぼこ、ハンバーグ、ミートボール、ギョウザ、シュウマイなどの加工食品の原材料として広く使われている(参考:日本植物蛋白食品協会)。1975年4月の農政審議会建議「食糧問題の展望と食糧政策の方向」で、食糧資源が不足しがちな日本の現状を踏まえて植物性たんぱく食品の積極的な利用が提案されたが、それをキッカケに一気に普及が進んだのだ(当時は「新たんぱく食品」と呼ばれていた)。


 つまり、ビヨンド・ミートを待つまでもなく、日本人はもうビヨンド・ハムやビヨンド・シュウマイを口にしているわけだ。「肉まんの中身は7割が大豆カス」と聞くと騙されたと思うが、「心臓病のリスクを減らすヘルシーな大豆たんぱくが主原料」と聞けば得したように感じるだろう(アメリカでは大豆たんぱくが心臓病のリスクを低減するとして食品に表示されている)。まさに、物は言いよう。代替肉とはそうした人間の心理を突いた商品でもあるのだろう。


 そして当時、食料自給策のひとつとして議論されたものこそ、石油由来たんぱくだったのである。


■かつて行われていた衝撃研究の実態は!?


「弊社は天然ガスを採掘したり、天然ガスからメタノールを作っています」(大手メーカー担当者)


 天然ガスを酸化させたメタノールは、アクリル樹脂などプラスチック製品の原料となる。かつて同社では、このメタノールや石油からたんぱく質を生産する研究を実際に行っていたという。


 もちろん、一口に「石油からたんぱく質を作る」といっても、プラスチックを作るように簡単なことではない。微生物を利用するのだ。ある種の酵母菌を使い、(石油の場合は)ノルマルパラフィン、(天然ガスの場合は)メタノールをエサとして食べさせる。そうして増やした酵母菌が食用になるのだ。しかも、ただ単に食べさせるだけでいいという話ではなく、実用化にはかなりの苦労があったようだ。


「ある種の酵母菌は、メタノールを分解して糖にすることができるんです。糖をエネルギー源として増殖する。ただし問題は、その途中でメタノールからホルムアルデヒドができることなんです。これは毒性が強く、菌たちが自ら分解して作ったホルムアルデヒドのせいで死んでしまうんです」(前出・同)


 ホルムアルデヒド以外にもいろいろな代謝物が増えると増殖が止まる。そこで培養液を希釈しながら成長した酵母だけを取り出すという連続培養技術を確立、ついにプラントの立ち上げまで至ったという。


■闇に葬られた経緯


 こうして出来上がった石油たんぱくは、養殖魚や家畜の飼料に魚粉の代わりとして添加された。水産庁の試験では、魚粉のエサよりも30%も成長が良いことがわかった。特に高水温で生育するコイ、ウナギで良い結果が出たという。豚の場合、エサとする大豆粉の3%を石油たんぱくに置き換え可能と試算された。


 ところが量産を始めるなり、消費者団体からクレームが入った。石油は人体に有害で、それを家畜のエサに使ったら、飼料に残留した化学物質が肉にも残って健康を害するのではないか、というのだ。


 前述の通り、発酵のプロセスで化学物質が残留すれば酵母菌が死んでしまうため徹底的に除去されていたのだが、現代の放射能騒ぎ然り、そうした理詰めの説明など消費者団体には通用しない。


「それに当時は分析技術も十分ではなくて、石油由来のたんぱく質の中に化学物質が残留していないと言い切れなかったんですね」(前出・同)


 そして決定的だったのは、旧厚生省の課長による国会答弁だった。


「消費者の抱く不安を完全には除けない中で、そういうものを開発しようとしていることはよろしくないと。それで、もうこれはできないと」(前出・同)


 官僚の“事なかれ主義”と“ハシゴ外し”。こうして石油たんぱくはいつの間にか市場から消え、都市伝説化してしまった。


■たんぱく質不足の救世主となるか!?


「ただね、今、たんぱく質が不足しているんですよ」(前出・同)


 家畜の飼料となる魚粉が不足しているのだ。かつての肉骨粉騒動を考えてみればわかることだが、草食動物である牛や豚も一定量のたんぱく質は必要で、それは魚粉で補われている。


「最近は食用じゃなく飼料用でシャケを養殖していて、生産量がどんどん増えています」(前出・同)


 エサが足りなければ最終的に家畜が減り、肉不足が起きる。ならば魚粉の代わりに、実績もある石油たんぱくを使う方が現実的だ。ところで、石油たんぱくから人工肉を作ることはできないのか?


「もともと酵母ですから、大豆たんぱくの技術を使えば、できるかもしれませんね」


 これはまさにロマンだろう。石油由来の人工肉! 来たぜ、未来——と思っていたが、よく考えると酵母を食べる文化は外国にすでにあった。オーストラリアで食べられているベジマイトだ。ビール酵母をベースにしたジャム状の食べ物で、(同国を除く)全世界レベルで不味いと評される。石油肉を食卓に並べるのは、なかなかハードルが高そうだ。


(文=久野友萬)


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