103万円の壁、パート主婦の本音は…103万円の内訳は?160万円などに増えたら、給与が増える?
2025年3月12日(水)11時0分 婦人公論.jp
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所得税がかかるボーダーラインを表す「年収103万円の壁」という言葉に注目が集まっています。知らないと損をする制度いろいろ。『共働きなのに、お金が全然、貯まりません!——節約、貯金から保険、ローン、投資まで』などの著書がある生活経済ジャーナリストの柏木理佳さんが「壁に直面するパート主婦たちの本音」について聞きました
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商店街のパート主婦の実態はどうなっているのか
103万円の壁は、年収により最大で「160万円の壁」になりそうですが、約2万円の減税でしかなく期待ほどではありませんでした。そもそも商店街のパート主婦の実態はどうなっているのか、ヒアリングしました。
103万円の壁は、年収によって123万円から最大160万円になり、幅広い年収帯で税負担が今より2万円程度軽減される計算です。
私が商店街でパート主婦にヒアリングしたところ、「103万円までしか働かないわ」と強気な繁華街の若いアルバイトとは状況が違っていました。
人手不足とはいえ、経営者の事情に振り回され、103万円って何?というパートの方がほとんどでした。
結局、給与は減った
「最低賃金が上がり時給は上がった。でもその分、1時間働く時間を減らされたから、かえって手取りが減った」と小さなクリーニング屋で働いているパート主婦の田村咲さん(仮名・40歳)は、嘆きます。
田村さんの時給は1122円から1163円に上がったのですが、経営者はその分、多く払えないからと、働く時間を10時から15時までだったのを14時までに1時間減らしました。結局、給与は減ったと言います。
クリーニング店の経営者は、「お客が全く来なくても、人を雇って給与を払わないといけない。社会保険料も払いたくないから」と、いつもシビアに計算しているそうです。
田村さんだけではありません。
洋服のリフォーム店をのぞくと、6人の60代から70代のパート主婦が手を動かしていました。週に2回(1日6時間)の仕事に加えて、お客さんからの注文が多い日は急に店に呼ばれ働くこともあるそうです。
「103万円の壁って何?月によって差があるから結局、計算できていないでしょ」とあきらめムードで言います。
恩恵は少なく期待ほどではなかった
ちょうど自宅で暇している時に、呼ばれたら運がいい。近所だから家事や介護をしながら働けるだけでもマシだそうです。
所得税がかからない103万円の壁が160万円の壁になれば、160万円まで働く人は増えるかもしれませんが、その恩恵は少なく、期待ほどではありませんでした。それに、介護などの事情があってパートで働いている方は、経営者の都合で、思い通りに働く時間を増やせず、手取りが増えるとは限りません。
それでも、物価が上がり、ローンがある人は金利も上がり借金がもっと増える懸念もあります。平均で年20万円が上がっており、こうなったら少しでも稼ぐしかないと考える主婦は多いでしょう。もともと「年収103万円の壁」の議論は、深刻な人手不足の解消でした。ただ、今は、もう、働く側にとってみると、数万円分多めに働いて、それで、物価が上がった分をカバーするしかないのです。
そもそも103万円の壁とは何?
年収103万円まで働いても所得税がかからないというものです。内訳は「給与所得控除」55万円、「基礎控除」48万円の合計でした。この103万円までが、税金がかからないので、年末になると、これ以上の時間は働かずに会社を休んでしまうといった働き控えがおきていました。103万円以上稼ぐと働き損してしまうので、きっちり時間を数えて103万円までしか働かなかったのです。このそれぞれの控除が、10万円ずつ上がり、さらに年収により最大160万円まで働いても所得税がかからなくなります。
103万円の給与所得控除は会社員のみだった
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では、この103万円の内訳の「給与所得控除」や「基礎控除」とは何でしょう。
総収入から「給与所得控除」と「基礎控除」を差し引いた金額だけに対して税金が課されます。だから、この引かれる控除が多いほど得することになります。
103万円の壁はパートの方だけでなく、全員に該当します。そのため、確定申告する場合にも給与所得控除と基礎控除を書くのを忘れないことです。
ただ「給与所得控除」とは、フリーランスや自営業は該当しません。会社から給与をもらっている人だけが該当します。正社員に限らず非正社員でも会社から給与が出ていれば控除を受けることができます。ちなみに、会社に勤務して年末調整をしてもらっている人は、経理部が計算してくれている場合がほとんどで、すでに控除されています。
給与所得控除は会社員の経費
自営業の人が、衣類や家賃、光熱費を経費として落としているように、会社員にも、それに代わる経費として、給与所得控除というのができたのです。会社の経理担当者に多くの経費を申請するのは手間がかかります。そこで給与所得控除として設けることで、いちいち細かい経費として計算する手間も省けます。
この給与所得控除が55万円から65万円などに増えるのですが、これは全員一律ではなく、年収により差があります。
会社の所属先が営業部などでしたら、収入が増えると、その分の接待費などで経費が増えることもありますが、そうでない部署ですと、収入が増えるほど経費が増えるとも限りません。ですが、給与所得控除では収入が増えると控除される額が増える仕組みになっています。
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では、基礎控除はどうでしょう。
基礎控除は所得2400万円以下の方は、一律48万円でした。これが58万円になる予定で、年収200万円以下の方は、37万円上乗せして95万円となります。これは、個人事業主を含め、すべての人が無条件で控除されます。生活保障的な意味合いで、「最低限の生活をしてもらうために、税金をかけない」ということです。
こちらも所得から控除として差し引くことができれば所得も低くなり、それだけ納めるべき税金の額も抑えられますので、確定申告する人は、忘れずに書き込むことです。
パート主婦は、今は物価高に対応するために、少しの時間でもうまく計算して賢く働くことが大事です。
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