名古屋ウィメンズマラソン2025で日本人トップの佐藤早也伽、代表が確実視される世界陸上は「8位入賞を目指したい」

2025年3月12日(水)6時0分 JBpress

(スポーツライター:酒井 政人)


過去の自分を超えたい

 10000m日本記録保持者の新谷仁美(積水化学)は欠場したが、東京世界陸上の代表選考会を兼ねた名古屋ウィメンズマラソン2025は熱い戦いになった。そのなかでヒロインとなったのが新谷と同じ積水化学に所属する佐藤早也伽だ。

 新谷とともにクイーンズ駅伝(全日本実業団女子駅伝)で2度の日本一を経験している佐藤。「駅伝はガムシャラに走っているイメージですが、今日のマラソンはペースを押していくイメージで走りました」と駅伝とマラソンで“キャラ”を使い分けた。そして過去のマラソンでは見せることができなかった“粘り強さ”を発揮する。

 2時間20分前後ペースで進む予定だったトップ集団は風の影響もあり、前半は思うようにペースが上がらない。10kmは33分28秒、中間点は1時間10分37秒の通過になった。トップ集団に挑んだ日本人選手は5人いたが、16km付近で五島莉乃(資生堂)、25km過ぎに大森菜月(ダイハツ)、27km付近で上杉真穂(東京メトロ)が遅れだした。

 トップ集団は30kmを1時間40分20秒で通過。2時間17分29秒を持つシェイラ・チェプキルイ(ケニア)がペースアップして、33km付近で加世田梨花(ダイハツ)が一気に引き離される。佐藤もついていけなかったが、終盤の走りが素晴らしかった。

「できるだけ前の選手に離されないようについていきました」と36.5km付近で前回2位のユニスチェビチー・チュンバ(バーレーン)に追いつくと、38.2kmで引き離す。雲ひとつない青空の下、サングラス姿の佐藤が最後まで華麗に駆け抜けた。

 そして優勝したチェプキルイと19秒差の2位でゴールに飛び込んだ。佐藤は40kmまでの5kmを16分41秒でカバー。前半のハーフより後半のハーフの方が15秒も速いネガティブスプリットで、日本歴代9位の2時間20分59秒を叩き出した。

「自己ベスト(2時間21分13秒)を更新したい気持ちがあったので最後まで頑張れたと思います。これまでは30km以降、脚が重くて前に進まなかったんですけど、今日は脚が残っていて、余裕があると感じていました。これまではペース変化に焦ってしまうこともあったんですが、今日はあまり気にせず、集中して走れた。これらが成長した部分ですし、過去の自分を超えられたかなと思います」


本当に凄い練習をしてきた

 佐藤は昨年の大阪国際女子マラソンで5位(2時間24分43秒)に終わり、パリ五輪を逃している。「頑張ればチャンスはあったのに、代表権をつかみ取れなかったのは悔しかったです」。その後は、「本当に凄い練習をしてきた自信があった」と本人が話すほど、充実したトレーニングを積んできたという。

 野口英盛監督も「大阪国際が終わって、マラソンをやるならしっかりと脚作りをしなきゃいけないと感じましたし、本人も理解していたと思います。この1年はほぼほぼ練習をストップすることなく、特にこの3か月間は私が怒ったのは1回ぐらいでした(笑)。練習メニューを変更することなくやれたことに、佐藤の成長を感じましたね。そして私の想定よりも走ってくれました。これまでのマラソンで上げきれなかったラスト10kmを克服しようと1年以上取り組んできて、その成果を出し切れたことが私はすごくうれしかったです」と評価した。

 クイーンズ駅伝後、12月は徳之島、1〜2月は宮崎で走り込んできた。「いつもより40km走の本数を多くやってきましたし、ジョグの距離も増やしました。その練習を継続できたことが一番良かったかなと思います」と佐藤。他にも距離走の後にレースペースを想定した10マイル走を取り入れるなど、マラソン終盤の走りを徹底的に強化してきた。

 その成果を名古屋の地で存分に発揮した。そしてJMCシリーズⅣ(2023年4月〜2025年3月)が幕を閉じた。女子は昨年の名古屋ウィメンズを自己ベストの2時間21分18秒で制して、今年の東京でも日本人トップになった安藤友香(しまむら)がJMCシリーズⅣのチャンピオンに決定。安藤は東京世界陸上の参加標準記録(2時間23分30秒)を満たしているため、同マラソン日本代表に内定した。


東京世界陸上では「8位入賞」を目指す

 佐藤も名古屋ウィメンズで東京世界陸上の参加標準記録を突破。大阪国際女子で日本人トップになった小林香菜(大塚製薬)の2時時間21分19秒を上回り、JMCシリーズⅣで最速タイムをマークしたことで、最大3枠ある東京世界陸上代表が“確実”といえる状況だ。

「走る前はあまり日本代表とかは考えていなくて、本当に自分が納得するようなレースをしたいなという思いでした。東京開催は身近の人たちが応援に来やすいと思うので代表になればうれしいですね。いつもサポートしていただいているスタッフ、応援していただいている方々に、感謝を届けられるようなレースをしたいです」

 2023年に出場したブダペスト世界陸上は20位に終わり、「もっと世界で戦えるような強い選手になりたいなと思いました」と佐藤はいう。そして、「もし代表に選ばれたら前回達成できなかった8位入賞が目標です。先頭集団でしっかり勝負していけるように練習を積んで挑みたいなと思います」と、今度は東京で“美しい走り”を見せてくれるだろう。

筆者:酒井 政人

JBpress

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