元国税芸人さんきゅう倉田の「役に立ちそうで立たない少し役に立つ金知識」 第90回 貧乏のエゴとベーグルの実験

3月13日(水)19時43分 マイナビニュース

元国税局職員 さんきゅう倉田です。夜寝る前にすることは「記帳」です。

もう確定申告期間も終わるので、この連載も税金から離れて、お金の知識に戻りたいと思います。お金の考え方はひとそれぞれ。ただ、概ね貧しい人のお金の考え方は誤っていて、お金持ちや仕事のできる人の考え方の方が正しい傾向にあります。

例えば「貧しくてもいい、幸せはお金では買えない」という人がいますが、所得税の税収のうち、半分は年収1000万円以上の人が納めています。それは労働者全体の4%の人たちです。残り96%の人たちで、もう半分を納めています。すると、年収の少ない人達ひとりひとりは、ほとんど税金を納めていないことが誰にでも分かります。

税金で、公共の施設やインフラが作られていることは誰でも知っていますが、それを誰が負担しているかを考えることはあまりありません。

もしあなたが「自分は貧乏でもいい、お金を追い求めるのは卑しいことだ」と考えるなら、あなたの代わりにその卑しいことをしてくれている人がいて、あなたがその恩恵を受けていることに思いを馳せるべきです。あなたのような貧しい人間しか日本にいなかったら、あなたが公共のものから受けた便益は存在しません。

あなたのエゴは、誰かの努力の上に成り立っているのです。お金持ちは、利益を出すためにいろいろなことを考えています。
○ベーグルの実験

とある外国のおじさんがベーグル屋さんを始めました。ただ、お店を構えるのではなく、ネット販売するでもなく、毎朝オフィスに行ってはカゴいっぱいにベーグルを置き、欲しい人はかごの横のコーヒーの缶にお金を入れてもらう自己申告制の販売方法を取っていました。

ぼくの地元でも、そのような形で野菜を売っている農家さんがいましたが、「誰も盗まないのだろうか」といつも疑問に思っていました。

結果から言うと、ベーグルはある程度盗まれるそうです。それでもベーグル屋さんは、どんどん取引先を増やしていき、データを収集しました。すると、面白いことが分かるのです。

晴れの日より雨の日の方が盗まれるし、平社員のフロアより重役のフロアの方が盗まれるし、小さな会社より大きい会社の方が盗まれるのだそうです。

ぼくは、小学校の卒業文集に類似の思い出があります。クラスメイトにアンケートを取って発表するという企画があり、文集委員だったぼくは回答の回収を担当することになりました。

「将来は、なにになりたい?」
「もしドラえもんの道具が一つもらえるとしたら?」
「もし透明になれるとしたら何をする?」

そんな質問をクラスメイト全員に答えてもらいました。すると、「もし透明になれるとしたら何をする?」という質問に対し、「女風呂に入る」とか「食い逃げをする」とか「嫌いな人を殴る」といったネガティブな答えが多く寄せられてしまいました。

ぼくは、担任に「透明になるというスキルは、みんなから文集にふさわしい回答を導くのは困難で、犯罪的思考を助長するので削除したいと思います」と意見し、当該質問を除いた2つで文集の質問ページを構成しました。

ベーグルと似ています。ばれる確率が低い、誰も見ていない環境では、人々のモラルが下がってしまう具体例です。雨の日のほうが盗まれるのは、天気によりどんよりとした気持ちが犯罪に走らせるようですが、重役のフロアや大きな会社でより多く盗まれるのは、他人からの干渉が少ないことが影響しています。また、大きな会社では、誰がベーグルを盗んだのかが分かりづらく、発覚の可能性が少ないことも一因でしょう。

そういったリスクによる損失と販売員を配置したり自販機を設置したりするコストを天秤にかけることがビジネスでは行われます。ベーグル屋さんは、環境による盗難の割合をデータ化し、盗まれても利益が出るように価格を設定していました。盗難を防ぐより、その方が利益が大きいと考えたのです。

リスクに対し、全てを未然に防ごうとするのではなく、そのコストを計算して、プロレスのように優しく受け入れることも大切です。

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○さんきゅう倉田
芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。ツイッターは こちら

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