死に至りやすい膵臓がん 超音波内視鏡検査で5年生存率3倍に

3月13日(火)7時0分 NEWSポストセブン

超音波内視鏡検査を行う菊山医師(撮影/岩澤倫彦)

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 日本の部位別がん死亡数では肺・胃・大腸に次ぐ第4位の「膵臓がん」。年間3万人以上が亡くなっている。


「膵臓がんの患者を診るのは敗戦処理の投手」とある医師は言った。PET(陽電子放射断層撮影装置)検査やCT検査による早期発見が難しい上、進行が早い。多臓器に転移し、有効な治療法もないので、あっという間に死に至るからだ。


「膵臓がん」の5年生存率は、2cm以下で発見された1期で41%、進行がんも合わせると、僅か9%でしかない。「胃がん」の1期が97%、全期で73%と比較すると、厳しさが際立つ。


 その膵臓がんを完治可能な段階で発見できるのが、「超音波内視鏡検査」だ。膵臓がんの専門家・菊山正隆医師(がん感染症センター・東京都立駒込病院)の元には、超音波内視鏡検査を受ける患者が殺到している。


「膵臓がんは、長さ約20cmの膵臓の真ん中を通る膵管の粘膜から腫瘍ができていきます。その粘膜内に留まっている“0期”で発見して外科手術で摘出すると、100%近い確率で完治可能です。超音波内視鏡検査を使えば、患者の負担を少なくしながら“0期”の膵臓がんを発見できる機会が得られます」


 超音波内視鏡は、胃カメラの先端部に小型の超音波(エコー)装置が付いたもので、胃から十二指腸まで挿入し、膵臓の状態を調べる。疑わしい影があれば、確定診断のために細胞を採取することができる。検査時間は15分ほどで、患者の負担は通常の内視鏡検査(胃カメラ)とほとんど変わらない。


 菊山医師は、全国の膵臓がん専門家と研究会を作り、超音波内視鏡検査による膵臓がんの早期発見の取り組みを進めている。同研究会に参加する医師が所属し超音波内視鏡検査を実施している施設は現在、全国に15ある。


◆世界初のプロジェクト


 2007年、人口14万人の広島県尾道市で、世界初の膵臓がん早期診断プロジェクトが始動した。仕掛け人は、菊山医師の研究仲間でもある、花田敬士医師(JA尾道総合病院・広島大学臨床教授)。


「地元医師会と連携して、膵臓がんのリスクが高い患者(膵炎、糖尿病、家族に膵臓がん患者がいる、大量飲酒、喫煙)にJA尾道総合病院で超音波内視鏡検査を受診するように勧めてもらいました」


 結果、10年間で1万2307人を検査して、のべ555人の膵臓がんを発見した。このうち1期40人、0期24人に手術を実施。同病院の膵臓がん5年生存率は7%から20%と約3倍に大きく向上した。この取り組みは世界的にも注目され、大阪市北区、熊本市、鹿児島市などで同様のプロジェクトが進められている。



「膵臓がん」の早期発見を可能にした超音波内視鏡検査の普及率はまだ低い。意外にも、東京の基幹病院でさえ導入は限られている。そもそも、膵臓の専門家は全国に3000人ほどしかいない上、超音波内視鏡は操作が難しく、高度な画像診断スキルが必要なのだ。


「最も大きな障害は、膵臓がん早期診断についての医者の認識不足だと考えます。CTやMRI検査だけでは“0期”の膵臓がんは発見できません。超音波内視鏡検査が広く普及していけば、膵臓がんで死ぬ人は確実に減るでしょう」


 菊山医師はそう力を込めて語った。


●取材・文/岩澤倫彦(ジャーナリスト)


※週刊ポスト2018年3月23・30日号

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