母親が“ダイナマイト自殺”した男の死生観とは!? 伝説の編集者・末井昭インタビュー

3月15日(木)7時0分 tocana

画像は、映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』より

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『写真時代』『パチンコ必勝ガイド』などの大ヒットで知られる伝説の編集者・末井昭の自伝的映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』の公開が3月17日に迫っている。

 この映画を青春映画としてみる人もいるかもしれない。とはいえ、主人公の末井青年は、そんじょそこらの若者とはわけが違う。彼にとっての自立と成長は、7歳のとき、母親のダイナマイト自殺から始まる。驚くほどへんぴで見るからに貧乏な村落にダイナマイトの爆発音が響く。母親の死の現場は、吹き飛んだ腸が木にまとわりついてクリスマスツリーのようだったのではないかと、幼少期の末井は想像したという。そんな驚愕の人生を歩んできた主人公にとって、表現者としてのひとつの覚醒といえる瞬間が、全裸で深夜の路上を駆け抜けるストリーキングだ。

「それが映画で再現されているんですけど、その日は1970年11月25日でした。なぜ、はっきり覚えているかというと、その日に三島由紀夫が割腹自殺したんです。映画を観る人のなかには、その頃、まだ生まれていない人もいるかもしれないけど、そんな時代を想像しながら観てもらえるといいかな」(末井昭)

【その他の画像はコチラ→http://tocana.jp/2018/03/post_16297_entry.html】

 そう、末井昭はテアトル新宿で行われた舞台挨拶で語っている。同日、アメリカでは、NYのハドソン川でジャズ・サックス奏者のアルバート・アイラーが水死体で見つかっている。ペーソスというバンドでサックス奏者としても活動する末井にとっては、まさに特別な一日であったことだろう。

 さらに、このシーンでは、主人公を演じる江本佑が全裸で街を走り抜ける様子を見て驚く通行人役として、末井がカメオ出演している。つまり、末井は、映画というスクリーンのなかで、柄本が演じる若き日の自分と対面するのだ。その点でも、このシーンは、映画の最も重要な見所といっていい。

「すごい面白い雑誌を作ってきた末井さんを尊敬しています。末井さんのもとで働きたいと思ったこともありましたが、今は叶いません。だから、僕が出来ることは、末井さんを映画にして今を面白くすることなんです」

 冨永監督はそう熱く語った。実際、この映画にはいろいろな面白い仕掛けが隠されている。それらのアイディアは、雑誌編集者として数々の大ヒットを飛ばし、昭和から平成にかけての出版業界を駆け抜けてきた末井自身の感性ともシンクロするものだろう。

 TOCANAでも映画公開を記念して、末井昭のインタビューをお送りしたい。ちなみに、本記事のレポーターを務めたケロッピー前田、TOCANA編集長・角由紀子ともに、白夜書房の出身者であり、末井のもとで働き、編集を学び、いまは自分たちが情報を発信する側となっているのだ。さっそく、業界の大先輩である末井昭の言葉に耳を傾けてみたい。

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——お母さんのダイナマイト自殺が映画になって、どんなお気持ちでしょうか?

末井昭氏(以下、末井)「母親のダイナマイト自殺は、僕の看板のようになってしまっているので、草葉の陰でもうやめてくれと言ってんじゃないかと思いますよ。それでも映画のなかでは、尾野真千子さんという綺麗な女優さんが演じてますし、母親は綺麗に着飾ったり、お化粧したりするのが大好きだったんで喜んでいるんじゃないかな」


——具体的に感謝していたりとか?

末井「子供の頃は恨むこともありました。幼い子供を残して、よその男と勝手に死んでいっちゃったわけだから、自分勝手な人だなと。それでも、母親のダイナマイト自殺があったから、僕はデザインや編集、原稿書くことなんかをやってこれたと思っています。実際、母親のことばっかり書いているんでね」


——編集のお仕事をされてきたなかで、お母さんの件があったから自分の感覚は人とは違うと思われていたことはあるんですか?

末井「デザインを始めた頃は、母親の自殺を経験しているから、自分が選ばれた人間で、表現者になる資格があると思っていましたよ。すごい思い上がった気持ちだけど、若いから。そういうことはネガティブだし、あまり人に自慢して話すようなことじゃないし、隠す人の方が多いんだけど。それがあるから、ひとつの励みになったかな」


——路上で裸になったり、ギャンブルにハマったり、自分を捨てるというか、死生観には何か影響はありましたか?

末井「虚無的なところはあって、それはなかなか払拭できない。こういう風に人と話していたり、最近は映画公開に合わせてお祭りみたいになっているといいんだけど、そういうのがパッと終わったとき、フッと虚無的になりますね」


——それって、お母さんの自殺が原因なんですかね?

末井「わからないですね。母親が亡くなったのは、まだ子供のときだから。あとから自分でそう思うようになっただけかもしれないけど。とにかく、心中って、死までの期間や心の準備みたいなものがなくて、突然、パッと誰かがいなくなるでしょう。そういう感覚はありますね」


——現代は、メンヘラといわれる人が多いじゃないですか。末井さんも当時としてはメンヘラだったんでしょうか?

末井「そうかもしれないね。メンヘラにみえないけど、メンヘラなんだよ。僕は自殺についてよく書いてきたけど、読んでくれる人にはメンヘラが多いんですよ。トークショーをやっても、質問したり、手紙くれたりする人もみんなそういうタイプの人だから。お互いに繋がっていくというのはありますね」


——映画ではエロ本全盛期の雰囲気がうまく表現されていたと思うんですけど、あの時代をどう思われますか?

末井「いまと比べると、緩い時代ですよね。たとえば、映画の冒頭でも警察のシーンが出て来ますけど、『なんだ末井か、また来たか』みたいなことを実際言われてたし、どうでもいい日常会話とか、冗談が交わされるみたいな人と人とのかかわりみたいなものはあったんですよ。でも、いまは当時のような警告はなくて、いきなり逮捕ですから。もっとキチキチと、警察と犯罪者って立場ですよね」


——あの時代、読者も雑誌をもっと応援してくれていたように思うんですが

末井「雑誌を買うことで応援してくれていたかもしれないけど。僕は警察と闘っているという意識はなかったですね。バカにするとか、おちょくるとか、もっと悪いかもしれないけど」


——荒木経惟さんや赤瀬川原平さんといった大物の方たちと仕事されていたのが凄かったですよね。

末井「当時は、そんなに有名じゃなかったんですよ。雑誌で連載してても『ガロ』みたいなマイナーな雑誌だったし。ギャラはそんなに払えなかったけど、みんな引き受けてくれました」


——皆さん、才能があって、その後に有名になられています。

末井「僕が目利きなんですよ。まず自分が読んで面白いかどうか、うまい下手とか、有名無名は全然考えてない。この人は面白い、この人つまらない、そういう判断ですよ。そのあと、みんな有名になっているわけだから、僕が面白いと思ったものを皆さんが認めてくれたということですよね」


——末井さんの面白いと思うというのはどういうことなんでしょうか?

末井「いろんな要素がありますけど、まず過激なものは面白い。そして、既成概念をひっくり返してくれるか。思想とか、イメージとか、絵でも写真でもいいんですけど、エッと思うもの、自分が変わるような、そういうものが面白いんですよ」


——ダイナマイト自殺をもう一度みたいに、刺激を求めてしまうということでしょうか?

末井「どうかな(笑)。それはわかんないけど、派手なものを求めているのかもしれませんよね。ダイナマイト心中って派手だもんね」


——派手ですね(笑)、笑っていいのかわからないんですが。

末井「爆発した現場はここらしいんですよ。(写真を見せる)これは地元の人に聞いて、(新刊『生きる』の編集者の)松田くんに撮りに行ってもらったんだけど」


——映画とそっくりですね。

末井「ここで爆発したとき、腸が木に引っかかってたりしたそうですが、クリスマスツリーみたいなものを想像しちゃいましたけどね(笑)」
(文=ケロッピー前田)

tocana

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