「一度上がった生活水準を下げるのは難しい」は思い込み。狭い部屋で自炊中心の「フランス留学」で、みじめな気分にならなかった理由

2025年3月17日(月)12時30分 婦人公論.jp


薬局で買える基礎化粧品(写真提供:『私が決める、私の幸せ』より)

29歳で単身フランスへ渡り、YouTubeでフランス・ナントから日々の暮らし、家族の在り方について発信する人気のYouTuber・大畑典子さん。「何を食べるかよりも誰と時間を過ごすか」「家事を頑張りすぎない」など、フランス人のシンプルな生き方は、せわしない日々を送る日本人の心に刺さるものばかりです。そんな大畑さんが綴る最新エッセイ『私が決める、私の幸せ』より、フランス流シンプルな生活と軽やかに生きるヒントをお届けします。

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日本とフランスの「食」の違い


フランスで生活を始めてみると、意外な「違い」が私を悩ませました。それは「フランスの食生活」です。

日本人が思い浮かべるフランス料理といえば、彩り豊かで芸術的な盛り付けの料理を思い描く人が多いかと思います。

実際に高級レストランでは、アペリティフから始まり、前菜、メイン料理、チーズ、デザートがフランス料理のフルコースですが、フランス人は毎日そのような料理を食べているわけではありません。

普段の家での食事は意外にも質素なのです。しかし、質素な食生活でもフランスの料理は日本食と違った大きな特徴があります。

日本食は油分が少なく、そして塩分の多い料理が特徴ですが、フランス料理は塩分が少なく、そして動物性脂肪分がとても多いのです。

例えば、スープとパンだけの簡単な夕食でも、まず、スープには多くの場合、生クリームが入っています。

そして、スープを食べ終えたあとにチーズが必ず食卓に出ます。どの家庭でも数種類のチーズが必ず冷蔵庫に常備されているのです。

食生活の変化


日本では多くの一般家庭に漬物が常備されているのと近い感覚ですね。

そして、パンにはバターをつけて食べ、食後のデザートにはヨーグルト、といった具合に、フランス人はほぼ毎日、バター、生クリーム、チーズといった大量の乳製品を摂取しているのです。

私は29歳まで日本で生活していて、その後フランスに渡りました。そんな日本仕様の私の胃腸がこの重たいフランスの食文化に馴染めるわけもなく……。

もっと若い頃からフランスの食事に慣れ親しんでいたら結果は違ったのかもしれませんが、30歳近くなってからの大きな食生活の変化に、私の体は適応できなかったのです。

そこで、食生活を改めるようになりました。

それまではせっかくフランスに来たのだからと、アジア食品店やレストランにも行かず、できるだけ現地のものを食べるようにしていましたが、思い切ってフランス料理を中心とした食生活をやめ、食べ慣れていた和食中心の食事に徐々にシフトさせていったのです。

体を作り、エネルギーになるのは日々の食事なので、そこで無理するのはやめようと決めたのです。

自炊中心の生活で「元気になった」


その結果、自然と自炊中心の生活になっていきました。それもフランスに来て大きく変化したことのひとつと言えます。

フランスでは日本のように安くて便利な外食があまりないのと、フランスのスーパーで買える出来合いのものはあまり自分の口に合わない上に高いので、自炊中心の生活のほうがストレスも少ないのです。

結果として、日本にいた時と比べたら日々摂取している化学調味料、添加物は格段に少なくなりました。

そのような生活を数年送って日本に一時帰国をした際、日本の友人には「なんだか元気になったね」と口々に言われました。これは日々の食生活のおかげだと思っています。

ちなみに、私が住むナントでは、おいしいキムチや納豆は簡単に手に入らないので、作れるものは自宅で手作りしています。

キムチを手作りするなんて、日本にいた時は考えたこともありませんでしたが、簡単に日本の食材が手に入らない分、丁寧な和食生活を送るようになりました。

生活水準は下げても、気持ちはみじめにならなかった


フランスに「留学」という形でやってきた私。それまでは日本の建築設計事務所で働いていて、忙しさゆえにお金を使う時間そのものがあまりなかったのですが、外食がとても多い日々でした。

心の余裕があまりない生活だったので「節約」にまで意識を向けて暮らすことはできませんでした。

事実、その当時の私の生活費は、外食費に飲み代などの交際費、さらには化粧品、被服代などの美容費などもあり、ナントで生活をする今の私の生活費よりもかかっていました。

でも、フランスに留学するとなると、そもそも収入が途絶えるので、まずはどうやりくりしていくかを考えなくてはなりません。

社会人として自立して働いていて、しかも副業もしていて、生活水準がある程度上がっていた私がフランスで生活水準を下げた暮らしを続けていけるのか、正直不安な面もありました。

しかし、その心配はまったくの杞憂に終わりました。


1年住んだ学生寮(写真提供:『私が決める、私の幸せ』より)

自分の生活に合ったサイズの家


まず、私の中で最も効果的だったなと思うのは、住むスペースを小さくするということ。フランスに留学して最初に住んだのがナントの学生寮。

そこがとにかく狭くて、ワンルームに小さなキッチンが付いていて、シャワーと洗面台があり、広さで言うと15平米もいかないくらいの部屋でした。部屋がミニマムになると、ものを置けないから買わなくなる。

自分の生活に合ってない広過ぎる部屋に住むと、管理も大変な上、余計なものを置いてしまうし、そうなるとものが増えて家の中をきれいに保つのも難しくなります。

ですので、自分の生活に合った住み良いサイズの家を見つけるというのはすごく大切でした。

そして、2番目に、基礎化粧品を見直しました。もともと、日本にいる時は、化粧水1本でも3000〜4000円するものを使っていたのですが、フランスに移ってから現地の薬局で買えるふき取り化粧水やクリームを使うようになりました。

値段も半分くらいです。日本にいた時はシャンプーにもちょっとこだわって少し値段の高いものを使っていましたが、それもフランスではスーパーで売られている安いものに変えました。

そして、最後に交際費。そもそも日本のように飲み会が頻繁にあるわけでもない上、無駄な付き合いをしなくなったことで、日本にいた頃よりかなり減りました。

普段の食事もほぼ自炊で外食はしなかったので、食費も結構抑えられました。

「一度上がった生活水準を下げるのは難しい」と世の中ではよく言われますが、私にとってはまったく苦ではありませんでした。

生活水準が下がり、狭い部屋に住んでいる自分のことを「みじめだな」と思ったことは一度もないし、そもそも大学院留学という目的で来ていたこともあり、忙しくてそんなことを考える暇もなかったのです。

※本稿は『私が決める、私の幸せ』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。

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