“小学校シャーペン禁止”の理由は、濃くハッキリ書ける「uni タブレット授業えんぴつ」から見えてくる

2024年3月19日(火)21時15分 All About

三菱鉛筆の「uni タブレット授業えんぴつ」は、従来の鉛筆同様の書き味ながら、反射が抑えられていて写真に撮ったときにも見やすい、まさにタブレット授業の時代に即した鉛筆です。開発担当者に開発の背景などを伺いました。

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現在、多くの小学校ではシャープペンシルの使用が禁止されています。
筆者がまだ小学生だった約50年前、ようやくシャープペンシルが普及した頃は、まだ禁止されてはいなかったので、それから紆余曲折あったと思うのですが、その理由はひとつではないし、あくまでも小学校の中での使用が禁止されているだけで、塾や家庭では多くの小学生が当たり前にシャープペンシルを使っています。

小中学生への高級シャープペンシルのヒットと鉛筆の進化

それどころか、今や、3000円、5000円といった高級シャープペンシルが小中学生を中心に大ヒットしています。それくらい、小学生にとってシャープペンシルは身近な筆記具であり、学校で使えるかどうかは、当人たちには、比較的どうでも良いことかも知れません。
それこそ、2017年にぺんてるが「orenznero(オレンズネロ)」を発売したとき、ぺんてる自身も、まさか1本3000円のシャープペンシルが小中学生相手にヒットするとは考えてもいなかったわけで、その後の三菱鉛筆の「KURUTOGA DIVE(クルトガ ダイブ)」にしても、マニアックな商品として発売されたものの、未だに入手困難になるほどの人気になっています。
塾や家庭での学習においては、とにかく膨大な量の問題を解いたり、漢字や文章を書いたりということが中心になるので、いちいち鉛筆を削らずに、細い文字が確実に書けるシャープペンシルは、手放せないのです。
最近高級シャープペンシルの基本機能になってきた「自動芯繰り出し機構」も、学習にはとても役立つ機能ですから、小学生が高級シャープペンシルに走るのも十分うなずけます。
その一方で、小学校での「筆記」ということを考えた場合、「濃く、ハッキリ」した文字を書くということが求められるシーンが多いという事情があります。
「そもそも、親が子どもによく言ってしまうワードのひとつに、『ノートをもっとちゃんと書いたら』とか『もっと濃くハッキリ書きなさい』というのがあるようなのです。
私も、親として子どもに、『力を入れて、ちゃんととめ、はね、はらいを書いたら、しっかりした文字になるよ』と言った経験があります。
今の親御さんの世代は、ノートにしっかり濃く文字を書くことが良いことだという考えが経験的にあるんだと思います」と、三菱鉛筆株式会社商品開発部の中村圭佑さんは言います。

「黒く、濃く」書けることが鉛筆に求められる基本性能


その中村さんが開発を担当したのが、三菱鉛筆の「uni タブレット授業えんぴつ」です。この鉛筆は、タブレット授業に対応するために開発されたものですが、その大前提として、「濃く書ける」ことが重要なのだと言います。
「元々、鉛筆で書いた文字は光を反射するというのは昔から、多くの人が感じていたと思うんです。
それが、タブレット授業が始まったことで、文字が光って写真に撮ったときに読みにくくなってしまうという形で不満として認識されたということなのでしょう」と中村さん。
鉛筆やシャープペンシルの芯は、グラファイトを主原料に作られているため、色も黒というよりグレーですし、ただでさえ光に反射して角度によっては読みにくくなってしまいます。
今や、小学校ではかつてのHBに変わって2Bなどの鉛筆を使うことが推奨されているのも、シャープペンシルの使用が避けられているのも、この「濃く、ハッキリ」した文字を書いてほしいという気持ちが働いている部分もあったのだと思います。

そこに、タブレット授業の登場で、宿題など、ノートに書いたページを写真に撮って共有し、授業でそれをスライドに投影したり、教師が確認したりという授業方法が始まりました。
「弊社のSNSなどにノートを撮った画像がアップされていますが、あれはかなり見やすく撮れたものを投稿しているんですよ。
でも、現場でのリアルな写真は、暗かったり、光っていたり、文字が薄かったりします。ノートをキレイに撮るのは、ただでさえ難しいですから」と中村さん。

鉛筆の筆跡に付きものの「光沢」がタブレット授業の邪魔になる


そこで、「ハッキリと濃く書けて、反射しにくい」ことは、これからの鉛筆に必要とされるのではないかという発想から生まれたのが、「uni タブレット授業えんぴつ」です。
しかし筆者は、筆跡が反射して光るのは、鉛筆やシャープペンシルの芯の宿命だと思っていたので、反射を抑えることが可能だとは思ったこともありませんでした。
「私も、研究部門の人間も、どうしたら鉛筆はもっと使いやすくなるだろうかというのを常に考えています。その中のひとつとして、“光沢を抑える”という構想はもともとありました。
また、学習環境が大きく変ったこととうまくタイミングが合い、開発が本格化していきました。
光沢自体は、多少読みづらくても、角度を変えれば読めるし、それほど欠点ではなかったのですが、タブレット授業が始まったことで、自分ひとりの見えにくさではなく、クラス全員で書いた文字が共有されることになって、友人たちや教師も困ることになったわけです」と中村さん。
実際、文字が見えにくいことで授業が中断したり、後ろの席の子の学習意欲が減退したり、書いた子も自分の意見が伝わりにくいのではと思ったり、光ることのデメリットは、タブレット授業によって拡大したと言えます。
それを克服するための鉛筆の登場は、時代に応じた筆記具の変化とも言えるでしょう。そう考えると、シャープペンシルの是非以前に、「小学校教育に向いた筆記具とは」という議論の方が有意義な時代になったということかも知れません。

光沢を抑えて、より黒く書ける「uni タブレット授業えんぴつ」の秘密


では、「uni タブレット授業えんぴつ」はどのようにして光沢を抑えているのでしょうか。
「鉛筆の筆跡が黒く見えるのは、例えて言うなら、薄いタイル状のものが紙面に並んでいるというイメージなんですよ。ただ、そのタイルがかなり光を反射するもので、それがキレイに均一に並んでいるから、見る角度によってはとても光って見えます。
なので、そのタイルがバラバラの大きさでランダムに並ぶようにすれば、反射の方向が一定にならず、結果的に光沢が抑えられるという発想です」と中村さん。

ただ、均一にキレイに並ばないということは、書き味にも影響してきます。そこを、従来の鉛筆と変わらないレベルにするところが「腕の見せ所」だったと中村さんは言います。
また、単に黒く濃くすればタブレットで撮影しやすくなるというだけなら、4Bや6Bといった濃く書ける鉛筆を使うという手もあると思うのですが、「それはしたくなかった」と中村さん。
「4Bや6Bのラインアップを増やすというのは、どこのメーカーでもできるし、そこは別のアプローチを考えたかったんです。それに、4Bや6Bにすると芯が柔らかくなる分、折れやすかったり、減りも早いし、手も汚れやすくなったりします。
なので、多くの学校で選んでいただいている2Bをベースに作りたかったんです。よって、“光沢を抑える”というアイデアにつながりました」
光沢を抑えると、その分、黒く見えるというのも、この鉛筆の特長になっています。
三菱鉛筆といえば、ゲルインクボールペンの「ユニボール ワン」が「最も黒いゲルインクボールペン」としてギネス世界記録に認定されているくらい、「黒さ」にプライドを持ったメーカーです。
その意味でも、今回の製品が三菱鉛筆から登場したのは、必然だったのかもしれませんね。

「これまでの鉛筆の性能は落とさないまま、黒く、濃く、しかも光沢を抑えた鉛筆を作りました。グラデーションを使った軸のデザインにもこだわりましたので、ぜひ手に取って、書いて、写真に撮ってみて、実際の見え方の違いを確かめていただきたいです」と中村さん。
実際、売り場の什器には試し書き、試し撮りができる工夫もされています。こういう製品は、実際に手に取ってみないと、その真価は分からないので、まずは試してみてください。
大人でも、ノートなどをSNSにアップする人などには、とても良い製品です。

納富 廉邦プロフィール

文房具やガジェット、革小物など小物系を中心に、さまざまな取材・執筆をこなす。『日経トレンディ』『夕刊フジ』『ITmedia NEWS』などで連載中。グッズの使いこなしや新しい視点でのモノの遊び方、選び方を伝える。All About 男のこだわりグッズガイド。
(文:納富 廉邦(ライター))

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