在宅介護にかかる費用は、1ヵ月約8万円。オムツやベッド、手すりなど、公費が使えるものをチェックして

2025年3月19日(水)11時0分 婦人公論.jp


イメージ(写真提供:Photo AC)

身近な人に看護・介護が必要になったとき、みなさんはどこに相談しますか?
総合的な相談先として、主治医の所属機関を問わず、活用できるのが「訪問看護ステーション」です。
その地域に開かれた独立した事業所である「訪問看護ステーション」に、黎明期から関わり、自ら起ち上げた「桂乃貴メンタルヘルスケア・ハートフル訪問看護ステーション中目黒」で、自分自身も看護に当たるのが渡部貴子さん。
自らの経験を元に、介護や看護で困っている方への質問・疑問に答えてもらうのがこの連載です。第10回目は、「介護とお金の話」です。(構成:野辺五月)

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前回「介護や看護に困ったら【おとなの相談室】9」はこちら

実際どのくらいあればお金が足りるのか?


Q:私たちの家族は今のところ、みんな健康で足腰もしっかりしており、まだ介護を考える段階ではありません。ただ最近、友人たちが立て続けに在宅介護を始める状況になっており、ふと「どのくらい」「何がかかるのか?」介護に関わるものを、自分が全く知らないことに気づきました。介護の費用は、老後の資金を考えるうえで外せないものだと分かるものの、実際どのくらいあればお金が足りるのか?在宅介護を選択した場合、一般的に何にどのくらいかかるのか教えてほしいです。

A:一般的に家で介護を始める時には、1ヵ月あたりトータルで8万円がかかるといわれています。(入院する場合は更にお金がかかります)

まずはこの見積もりを基準として覚えておきましょう。

次に公費で使えるものを見ていきます。

そのためにもまず「要介護度」を知っておく必要があります。公費は「要介護度」によって変わることが多いからです。

また、市区町村によっての差はありますが、要介護度によっては、日常で一番使う頻度の高いオムツも支給されるケースもあります。

その他はどうでしょうか。

公費が使える代表的なもの


公費が使える代表的なものを簡単にまとめてみますと……。

・オムツなどの必須消耗品(正確には、介護保険ではなく、おむつ代の負担を軽減する対策として市区町村が実施している「紙おむつ給付およびおむつ代助成制度」などによるもの)
・ベッド・固定用ロープ・歩行器・車いす・移動用リフト(レンタル可能なもの)
・手すりをつける等、バリアフリーにする工事
・貸与に馴染まない、お風呂に入るときの椅子などの「補助用品購入費」などなど……


イメージ(写真提供◎Photo AC)

さまざまな「日用品」に対して、補助や支給に加えて、「環境を整える」ための費用、また自宅で受ける訪問介護のサービス、施設で受けるサービス(グループホーム・デイサービス)などもあります。

それだけではありません。

公費を使える利点は、むしろ「その選定」にこそあります。

他で知識もないまま慌てて買うよりも、公費に頼ると負担してもらえるのがたとえ一部であっても選定してもらえることも多く、結果的に、「本当に使えるもの」が手に入ります。

ざっくりとした「月々の額」と公費の活用を考えて、まずは在宅介護に入る前に「相談するところから始める」意識をもっていていただければと思います。

まず先に「相談できる場所へ駆け込む」


また介護保険サービスを利用せず、自宅で1年以上にわたり要介護度4〜5に認定された要介護者の家族に対して自治体から一定額支給される制度「家族介護慰労金」や、家族の介護のために仕事を休んで従事する場合に認められる介護休業給付金(休業中:給与の67%受給)など色々な補助金もあります。

条件が細かくて、調べれば調べるほど混乱することもあると思いますので、そういうときは、まず先に「相談できる場所へ駆け込む」というのが手です。

そんな相談先ですが、地域の包括支援センターが一番身近になります。

各地域にほぼある施設ではありますが、もし見つからなければ保健所でもかまいません。

公費に何が使えるか、どう使えるかの確認をしておきましょう。

なお在宅介護にかかる費用の大方は介護保険による介護サービスの「自己負担分」です。

介護保険で受けられる「訪問介護」の中には、身体介護=入浴や排泄の介助・生活支援=掃除・洗濯・買い物・調理、訪問看護、また訪問リハビリテーションとして理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などによる身体機能維持回復やリハビリ指導なども入ります。わりと範囲は広く、有効なサービスばかりです。こちらをしっかり活用するためにも「利用限度額」と「自己負担分」の基本を知っておきましょう。

自己負担分は介護度に関わらず原則として全体の1割の負担・利用者の所得に応じて1〜3割に変動するような仕組みになっています。利用限度も同等です。

ただし、介護度が重い方が利用するサービスは多くなるため、自己負担額は介護度に比例してあがっていく傾向にあります。また利用限度額を超えると負担は10割になってしまうため、単に介護度が高いから費用を全部賄えるというわけではありません。

チェックすべき「リソース」はお金だけではない



イメージ(写真提供◎Photo AC)

また介護に入る前にチェックすべき「リソース」はお金だけではありません。

兄弟姉妹、近所の人・ご友人……助けてくれる人・お手伝いできる人、何かあったときに何をお願いできるのかを知っておく必要もあります。サポーターは基本的に何かしら必要になってきます。

家族の中でも同じです。どう折半するのかはどうしても話題にせざるをえないでしょう。

お金の出どころについても、年金なのか、子どもの支援があるのか、貯金なのか?

揉めやすい部分だからこそ、早めにしっかりしておく必要があるでしょう。

その他に、抜け落ちやすい項目としては、

・自宅にずっといられないときに通う施設
・家族や介護する側が疲弊してしまったときに預けられる「宿泊施設」

これらも先手を打てるなら打ちたいところです。

「意外とかかるよね」という共通認識


在宅での介護は、本人一人の問題ではなく、補助する人間・身内の持続性にも関わってきます。一時預かりのサービス=「短期入所生活介護(ショートステイ)」は予約が必要なことがあったり、場所が限られたりするため、費用と共に条件も、早いうちに調べて損はありません。

加えて、頭の痛い話ではありますが、「医療費」もかかります。

我慢しすぎて家での質が低下してしまった結果、家で療養ができない状態になってしまうケースもあります。

「公費」や「制度」を最大限生かせるように……またいざとなったときに少しでもアウトソースできるように費用と、そのかけ先を考えておきたいところですね。

今のところ公費で賄えていますが、予算が減っていたり100パーセントで頼っていけるかどうかは微妙なところでもあります。自分たちで出来ることや、環境、人間関係を整えておくことが非常に重要になってくるでしょう。

「意外とかかるよね」という共通認識と、まずは月8万円という指標を御確認いただければ幸いです。

婦人公論.jp

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