住宅ローンの返済期間、「35年」「40年」「50年」ではどれがオススメ?

2025年3月19日(水)7時0分 マイナビニュース



住宅ローンの返済期間は最長35年が一般的ですが、最近は40年、50年と超長期の住宅ローンが登場しており、若い人たちの中で超長期の住宅ローンを選択する人が増えています。
「35年」と「50年」では、毎月の返済額や総返済額に大きな違いが出てきます。それぞれにメリット・デメリットがあり、どの返済期間が適しているのかは、その人の状況や今後のライフプランによって判断する必要があります。本記事では具体的にイメージできるようにシミュレーションを行ったうえで、自分にあった返済期間を選ぶ際のポイントをお伝えします。
超長期ローンを選ぶ人が増えている理由
返済期間は何年が多いのか、住宅ローン利用者の実態調査をみてみましょう。
住宅金融支援機構が実施している2024年調査によると、利用した返済期間は30年超35年以内(48.6%)が最も多く、次に多いのが35年超40年以内(16.5%)となっています。40年超50年以内も4.4%と増えています。
過去7年間の推移をみると35年以上の返済期間を選ぶケースが増えていることがわかります。
長期優良住宅を対象に最長50年まで融資する「フラット50」に注目すると、30歳未満の申込件数が、2024年には719件となり、前年の2.6倍になりました。「フラット50」の契約者の約4割が30歳未満ということです。
超長期住宅ローンが若年層を中心に支持されているのは、返済期間を長くすることで、月々の返済額が抑えられることが大きな理由でしょう。若い世代はこれから子育て費用や教育費が多くかかってくるので、月々の負担が少ない方が助かります。子どもが大きくなって教育費の負担がなくなった頃は収入も上がっているはずなので、そこで繰り上げ返済をすればいいという考え方ができます。
また、近年、建築資材費や人件費の上昇により、不動産価格が高騰し、若い世代にとって住宅購入のハードルが高くなっています。返済期間を長くすれば購入できる物件価格を引き上げられるので、その点も超長期住宅ローンのニーズが高まっている理由でしょう。
返済期間「35年」「40年」「50年」で返済額をシミュレーション
返済期間「35年」「40年」「50年」で月々の返済額と総返済額がどのくらい違うのかシミュレーションをしてみましょう。
<シミュレーション条件>
・借入金額:4,500万円
・返済方式:元利均等返済
・金利タイプ:固定金利2%
返済期間35年の場合は、月々の返済額は約15万円、総返済額は約6,261 万円。返済期間40年の場合は、月々の返済額は約13.7万円、総返済額は約6,542万円。返済期間50年の場合は、月々の返済額は約11.9万円、総返済額は約7,123万円となりました。
返済期間35年と50年では月々の返済額が約3万円違います。返済期間を延ばすことで、手元資金に余裕が出て、家計のやり繰りがしやすくなることはメリットです。一方で、総返済額は返済期間50年にした場合、35年と比べて862万円も支払いが増えてしまいます。利息だけで2,623万円支払うことになります。
このように、月々の返済額は抑えられるけれど、総返済額が増えてしまうのが超長期住宅ローンの特徴です。
次項では、試算結果も踏まえながら、超長期住宅ローンのメリット・デメリットを解説します。

超長期住宅ローンのメリット
月々の返済額が抑えられる
月々の返済額は、返済期間「35年」は15万円であるのに対して、「50年」は12万円と、3万円ほど少なくできます。収入がまだ少ない若い世代にとっては、ローンの月々の負担が抑えられることは大きなメリットでしょう。
購入可能な物件価格を上げることができる
返済期間を長くすれば、月々の返済負担率を下げることができるので、借入額を増やすことができ、購入できる物件価格を引き上げることができます。ただし、返済期間が長いほど、失業や病気など不測の事態が発生するリスクが高くなるので、無理のない借入額に設定しましょう。
団信による保障期間が長くなる
団体信用生命保険(団信)とは、借入期間中にローン契約者が死亡または所定の高度障害状態となった場合に、保険金でローン残高を返済する仕組みの保険です。多くの金融機関で加入が義務付けられており、特約を付けることで、がんや三大疾病の保障にも対応できます。返済期間が長くなれば、生命保険や医療保険の役割を果たしてくれる団信の保障期間も長くなるので、長期にわたって安心を得ることができます。
超長期住宅ローンのデメリット
総返済額が増える
前出の試算では、返済期間を50年にすると、返済期間35年よりも862万円総返済額が増えています。一般的に、全期間固定金利の住宅ローンでは、返済期間が長くなるほど金利が上がる傾向にあります。現在、「フラット35」と「フラット50」の最頻金利の差は0.1%(2025年3月)ですが、利用する住宅ローンによってはさらに総返済額増える可能性があります。
老後も返済を続けなければならない可能性がある
30歳で50年ローンを組んだ場合、完済は80歳になるので、老後も返済を続けていかなければなりません。年金生活をしながらローンを返済していくのは相当厳しいといえます。将来の収支を考えて、繰り上げ返済を活用して返済期間を短縮することを検討しましょう。
返済期間「35年」「40年」「50年」はどんな人にオススメ?
最後に、返済期間「35年」「40年」「50年」はどんな人におススメなのかお伝えします。
返済期間「35年」が向いている人
40歳以上で住宅ローンを組む人や収入が高めで月々の返済額を抑える必要がない人は、利息を無駄に支払わないためにも、返済期間35年以下でローンを組むといいでしょう。ただし、13年間は住宅ローン控除が受けられるのでそれ以下にはしない方が有利です。
返済期間「40年」が向いている人
40歳以下で、月々の返済額を抑えたいが、総返済額をあまり増やしたくない人は、返済期間40年を限度としてローンを組むといいでしょう。返済期間が長くなるほど、収入の変動や金利の上昇など、返済プランに無理が生じる可能性が出てくるので、繰り上げ返済を活用して年金生活に入る前に完済できるような返済計画を立てるといいでしょう。
返済期間「50年」が向いている人
30歳以下で、月々の返済額を抑えたい人、家計に余裕を持たせて、その分を貯蓄に回したい人は返済期間50年のローンを選ぶといいでしょう。収入がまだ低い20代や支出が増える30代のうちは、月々の返済を抑えて、家計に余裕ができた頃に繰り上げ返済ができれば、50年で設定しても予定よりも早く完済することができます。住宅ローンは一度契約すると、返済期間を短くすることはできても、延ばすことはできません。最初に長めに設定しておけば、ライフプランに応じて柔軟に対応することができます。
まとめ
住宅ローンの返済期間を長くして、月々の返済額を抑えられれば、その分貯蓄や投資にお金をまわすことができます。住宅ローンの金利が上がってきているといっても、まだまだ低金利。
住宅ローンの金利よりも投資のリターンの方が高ければ、ローンを急いで返すより、そのお金を運用した方が効率的といえるでしょう。
ただし、返済期間が長くなれば、収入や健康状態の変化、ライフイベントごとの大きな出費など、返済プランに影響を及ぼす要因が増えてきます。長期の住宅ローンのメリット・デメリットを理解し、将来の収支やライフプランをしっかり見据えたうえで無理のない返済計画を立てましょう。
石倉博子 いしくらひろこ ファイナンシャルプランナー(1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP認定者)。“お金について無知であることはリスクとなる”という私自身の経験と信念から、子育て期間中にFP資格を取得。実生活における“お金の教養”の重要性を感じ、生活者目線で、分かりやすく伝えることを目的として記事を執筆中。ブログ「ファイナンシャルプランナーみかりこのお金の勉強をするブログ」も運営中! この著者の記事一覧はこちら

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