83歳現役医師「週5日10時間働いても元気。1日5000歩、姿勢を意識し、つまずき対策。魚と大豆が主菜の適塩和食で健康に」
2025年3月20日(木)12時30分 婦人公論.jp
「一番気をつけているのは、毎朝作る、夫婦2人分の〈完全食〉のお弁当。世界の食と健康長寿について研究している夫が辿りついた〈健康長寿食材〉がすべて摂れるように工夫したものです。」(写真提供:文藝春秋)
健康のプロとも言える医師たちは、自分自身の体にどのような対策や手当てをしているのでしょうか。元気に活躍を続ける女性医師3人が、日ごろ行っている健康習慣を紹介します(構成:山田真理)
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魚介類の塩分で十分
毎年受ける人間ドックでは、どの数値もまったく異常なし。2013年に開院した小児リハビリテーション専門の個人クリニックで週5日、朝から10時間働いています。83歳で健康上の問題がなく元気に過ごしているのですから、「何も特別なことはしていない」ということはありません。
一番気をつけているのは、毎朝作る、夫婦2人分の「完全食」のお弁当。世界の食と健康長寿について研究している夫(病理学者の家森幸男氏)が辿りついた、「健康長寿食材」がすべて摂れるように工夫したものです。ちなみに、1日1回でも完全食を食べれば効果がある、という結果が出ているのだとか。
健康長寿食材とは、「ま(豆類)・ご(ゴマやナッツなど種実類)・わ(ワカメなどの海藻類)・や(野菜)・さ(魚介類)・し(シイタケなどのキノコ)・い(イモ類)」のこと。
管理栄養士の次女の意見を参考にし、これらの食材を使って、1日1回の食事、つまりお昼のお弁当を、魚と大豆を主菜とした適塩和食にしました。
お弁当に入っているおかずの定番は、大豆、カキ、エビ、鶏のささ身、キャベツ、にんじん、シメジなどを一緒に蒸したもの。味つけはせず、魚介類の塩分のみです。
それに、玄米ご飯にすりゴマやとろろ昆布をかけたもの、焼き鯖や鮭、青さのりや野菜を刻んで入れた卵焼き、スナップエンドウやブロッコリー、トマトなど日によって野菜を替えて彩りを添えています。
夫によれば、世界でも、塩分の摂取量が多い地域は短命の傾向が、少ない地域は長寿の傾向がみられるそうです。そのため、わが家の食事の味つけに塩はほとんど使いません。
薄味に慣れると魚介類に含まれる塩分だけで十分満足できるもの。お醬油も風味をつける程度ですし、味噌汁も具だくさんにして、素材の旨味を味わえるよう味噌の量は少なくしています。
睡眠時間は毎日6時間くらいです。「8時間寝ないといけない」と思っている人も多いようですが、それは成長期の中高生くらいまで。高齢になれば、朝まで寝続けなければいけないわけでもなく、合計で6時間くらい横になって休めば十分です。
私の場合は、23時頃に就寝し、朝5時半に起床します。そこから毎日、30品目ほどの食材を使ってお弁当を作り、彩りよく詰め終わるまでに約2時間。電子レンジを使ったり、冷凍野菜を活用しながら、作るのに90分、詰めるのに30分かかります。でも、毎日のルーティンなので苦ではありません。
そうして7時半頃にお弁当が完成したら、冬はそれからウォーキングに出ます。夏は陽が昇ると暑くなるので、ウォーキングをしてからお弁当を作るという順番に。
姿勢でつまずき対策
ウォーキングでは、常に背筋がまっすぐになるよう姿勢を意識して歩いています。というのも60代の初め頃、なんでもない段差に足を引っかけて転び、指を骨折したことがあったのです。
私はリハビリテーションの専門医ですので、「なぜ、あの場所で転んでしまったのか」と不思議に感じ、分析したところ、「姿勢が前かがみになってきていて、足がうまく上がらなくなっているのかも」と気がつきました。
年をとると筋肉や骨が弱くなり、重い頭を支えられず、背中が丸くなってきます。すると前傾姿勢になるため、足を高く上げることができず、小股でトントンと前のめりに歩くようになり、ちょっとした段差でもつまずいてしまうのです。
そうした歩き方を改善するには、グッとあごを引くことが大事。すると体の構造上、下腹部や丹田に力が入って背骨が伸び、かかとに重心が乗ってくるのです。その姿勢になると自然と大股になり、すいすいとラクに歩くことができます。
現在、朝のウォーキングで3000歩、往復の通勤で2000歩、クリニックの中では500〜600歩しか歩いていないので、合わせて1日に5000歩ほどです。「これからも、朝のウォーキングは続けていこう」と肝に銘じています。
そんなふうに努力していても、最近、重い荷物を手にぶら提げて歩くと背中が丸まるように。上半身の筋力が弱ってくると、荷物の重さに引っ張られて肘が前に出るため、前かがみの姿勢になってしまう。私の荷物は、お弁当だけでもけっこう重たいですからね(笑)。
両手に1つずつバランスよく持っても改善されなかったため、最近、車輪付きのショッピングカートに荷物を入れて、右手で引いたり左手で引いたりしながら歩くようにしました。
すると、肘の位置が自然と体の横に固定され、しゃきっと背筋が伸びて、若々しい姿勢で歩けるようになったのです。
昨年10月からは、週1回太極拳のレッスンにも通い始めました。60代後半から3年ほど通っていましたが、クリニックの開院などで忙しく、すっかりご無沙汰していたのです。太極拳はゆったりした動きなので、80代になっても無理なく行えます。
背筋を伸ばしたままの重心移動、爪先ではなくかかとから着地する動きなど、転倒予防に効果的なポイントがたくさんあると、改めて実感しました。
特に、股関節をゆるめて中腰で立つという太極拳の基本姿勢は、バランス感覚の向上にうってつけ。クリニックで幼児の運動指導を行う際も、台から跳び下りて着地した時、膝を曲げた状態で踏ん張れるかどうかをチェックします。踏ん張る力が弱かったり、左右差があったりする子どもは転びやすい。それは大人でも高齢者でも同じです。
また、太極拳の深く長くゆったりとした呼吸法は呼吸筋や肺機能のトレーニングにもなるんですよ。
若い頃に比べれば記憶力も体力も衰え、悩みはいくらでも出てくるでしょう。それを嘆くより、今できることを、こつこつと積み重ねていこうと思っています。
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