歯周病治療 「魔法の水」や「特別な治療」はいらない

3月20日(水)7時0分 NEWSポストセブン

スウェーデンデンタルセンター院長・弘岡秀明氏(筆者撮影)

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 歯周病は、誤嚥性肺炎や心臓病、糖尿病などの全身疾患と関係があると明らかになっている。適切な治療をする歯科医にかかることは、死に至る疾患の予防にもつながるので、非常に重要だ。


◆「抗生物質で歯周病が治る」は本当か


 抜歯原因1位の歯周病。次々と新しい“画期的な治療”が登場している。特に一部の歯科医が強く支持しているのは、「抗生物質で歯周病を治す」というものだ。


 歯周病治療の指導者であるスウェーデンデンタルセンター院長・弘岡秀明氏に聞くと意外なことが分かった。


「欧米では一般的な歯周病治療だけの群と、一般的な歯科治療に加えて抗生物質を大量投与した群を比較した臨床試験を行いました。その結果、長期間経過するとこの両群に優位差はありませんでした。さらに、抗生物質の耐性菌が大問題になっています。


 スウェーデンが公開している、歯科治療のエビデンスレベルは高い順に0〜10まであります。慢性歯周炎に抗生物質を投与するのは、レベル10。エビデンスがないに等しい、と判定されたのです」


◆“魔法の水”に科学的根拠はない


 手軽な歯周病治療の代表格が「特殊な水でうがいをする」という方法だろう。


「免疫細胞の殺菌成分を高純度活性化した水」──といったキャッチフレーズで、様々なメーカーや歯科医院が売り出している。共通しているのは「次亜塩素酸」を主成分としていることだ。


 日本歯周病学会は、約10年前に「次亜塩素酸」を使用した水による歯周病治療がテレビで取り上げられたことを受け、安全性、有効性などの科学的根拠が十分ではない、と見解を示した。それから新たな臨床試験が行なわれた痕跡はない。


◆本当は“特別な治療”はいらない


 それでは、有効な歯周病治療とは何なのか、前出・弘岡氏に聞いた。


「歯周病は、歯に付着した細菌の塊であるバイオフィルム(プラーク)によって引き起こされる感染症です。重度でなければ、患者の正確なセルフケアと、SRPと呼ばれるプロ(歯科衛生士)によるバイオフィルムを除去する基本的な治療で改善します」


 弘岡氏によると、歯周病が治りづらい原因の一つが、正しいセルフケアを患者がマスターできないこと。歯間ブラシ、フロスは、我流でやってもプラークは落ちないのだ。


◆セルフケア指導は必須


 歯周病治療に詳しい歯科衛生士の太田由美氏が中高年男性のセルフケアに起きがちな勘違いを指摘する。


「歯ブラシを、グーで握って思いっきり磨いている人が圧倒的に多いです。強い圧力で磨くと歯肉が下がって、逆効果です。一番重要なのは歯と歯肉の境目を優しく磨くこと。特別に高い歯磨き粉は使う必要もありません」


 太田さんによると、歯磨きの癖などを、歯科衛生士にチェックしてもらうだけで、劇的に改善するという。日本歯周病学会、日本臨床歯周病学会が認定した歯科衛生士は、高いスキルと確かな知識を持っている。


 逆に言えば、セルフケア指導に熱を入れない歯科医院には疑問を持つべきだ。


●レポート/ジャーナリスト・岩澤倫彦(『やってはいけない歯科治療』著者)


※週刊ポスト2019年3月29日号

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