青森県の「青森ねぶた祭」の正確な人手を把握せよ! 取り組みの背景を聞く

2025年3月21日(金)10時0分 マイナビニュース


日本を代表する夏祭りとして、「青森ねぶた祭」を思い浮かべる人は多いだろう。東北三大祭りの一つで、毎年数多くの観光客がこの祭りを訪れる。
主催者である青森ねぶた祭実行委員会が、青森ねぶた祭の企画・運営、広報活動を担い、地元の企業や団体、ボランティアと協力してこの祭りを支えている。
祭りの期間中、人出を計測し発表することも委員会の大切な役目となっており、地域の経済効果・安全対策・広報活動などの面においても重要なミッションだ。
青森ねぶた祭は新型コロナウィルス影響で、2020年と2021年は開催中止となったものの、2022年から3年ぶりに開催し現在に至っている。
コロナ禍前の2018・2019年は280万人を超える人出、3年ぶりの開催となった2022年は感染リスクの懸念から人出は少なかったが、以前通りの開催となった2023年はコロナ禍前と同様もしくはそれ以上の混雑ぶりとなった。
しかし、実行委員会からの人出の発表では、101万人(2023年)、105万人(2024年)と2018・2019年と比較して大きく減少。この発表は多くのメディアでも取り上げられ話題となり、また日本全国の祭り団体からも問い合わせを受けたという。
人出の発表に何があったのか? その背景に迫るため、青森ねぶた祭実行委員会 実行委員長の佐藤健一氏と、NTT東日本青森支店 支店長の磯﨑崇氏に話を聞いた。
人出の発表は、地域にとって重要な指標
これまでの人出の計測方法について佐藤氏に聞くと、「これまでは祭りが始まる時間前、市内にある観光施設の来場者数と、祭りの最中に沿道にいる人の数を目視でカウントし、その2つのデータを基に人手を出していました」と回答。
「ただ、人手の発表は祭りがどれほど盛り上がったのかを示す重要な指標です。何より、『これだけの人が見に来てくれた』という地元住民の誇りにつながります。また、スポンサーを募り、桟敷席(有料席)を販売することで、初めてねぶた祭を開催・運営するための財源を確保できます。スポンサーへの説明や説得の際、人出のデータも重要な指標となっているのです。そのため、発表する側としては『前年よりも人手が減っている』というネガティブな数字を出しづらく、『前年比○%アップ』といった、根拠にとぼしい数字が続いてしまいました」
さすがに、「この人手の数には無理があるのでは?」「あの空間にそんなに人がいたわけがない」と思うような数字になり、危機感を覚えるようになったという。
佐藤氏は「2023年に私が委員長に就任したタイミングで、測定方法を見直すこととしました」と経緯を語った。
ネットワークカメラで正確な人出を計測
人出の測定方法を佐藤氏から、NTT東日本の磯﨑氏へ相談したとのことだが、相談内容はどういったものだったのか? 磯﨑氏に尋ねると、「佐藤さんのムチャ振りです」と笑顔を見せる。
「『NTTさんのネットワークカメラを使って会場内を撮影すれば、正確な人出を計測できるんじゃないの?』と言われたことがキッカケです。弊社ではもともと、店舗内の人数や利用客の属性を測定できるネットワークカメラを扱っていましたが、それはあくまでも店舗用のもの。佐藤委員長からの強い思いに応えようと、ネットワークカメラでの人出カウント方法を検討し、沿道を撮影した画像をAIでカウントするやり方を採用しました」
実施方法としては、投光器付きの台車に載せたネットワークカメラ2台が左右の沿道を撮影し、AIが画像を解析して人数を集計したと磯﨑氏は説明する。
「しかし、2023年のやり方では、雨天時の際は傘や合羽が人検知に影響すること、カメラが捉えることができない死角の課題がありました。そこで2024年度ではスマートフォンの位置情報(GPS)を元に算出する人流分析に変更、運行ルートとその周辺地域を計測エリアとして設定し人出を集計したのです」
2年に渡り従来の人出の集計方法から、ネットワークカメラ画像からAIによる解析、携帯の位置情報(GPS)データによる人出集計を実施してきたが、佐藤氏同様に磯﨑氏も「精度の高いデータが取れたと思っています」と手応えを感じているようだ。
青森県の知られていない魅力を知る・触れる機会を増やす
続けて、磯崎氏は「データを取って終わりではなく、どう活用するのかが重要です。人がどう動いたのか、どのエリアに人が集中するのかなど、データの利活用をブラッシュアップしていければと考えています」と今後の活用方法に言及する。
「青森県は青森市内だけでなく、下北半島や十和田方面など、魅力的なスポットがとても多いです。収集したデータを活かし、『青森ねぶた祭』を軸としながらも、青森県全体の魅力を示せればと思っています」
ねぶた祭やリンゴのイメージが根強い青森県。データを収集、分析し利活用することで、さらに多くの人が青森県の魅力に出会う機会が増えていくかもしれない。
望月悠木 フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki この著者の記事一覧はこちら

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