イエメン内戦で“体重10kg”まで痩せた少女の姿に全世界衝撃! 完全に「骨と皮」で医者も治療拒否… 飢餓千万人の絶望的状況
2019年2月23日(土)14時0分 tocana
泥沼化するイエメン内戦——。その最大の犠牲者は住居を奪われた市民であり、その子どもたちだ。今、イエメン国民の1000万人が深刻な食糧難に直面している。
■体重わずか10キロの12歳少女
一向に解決の兆しが見えない内戦が続くイエメンで、市民の悲惨な窮状を物語る写真に、世界中の人々の胸が締めつけられている。空爆で家を失った一家の12歳の娘が、姉の懸命な働きかけでようやく病院に運ばれたのだが、医師に診てもらうのが遅すぎたこの少女の体重は、わずか10キロであった。
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イエメン・ハッジャの病院に先日運び込まれた12歳の少女、ファティマ・コバちゃんの姿をとらえた写真に、世界中の人々がショックを受け言葉を失っている。その姿はまさに“骨と皮”だ。日本であれば小学6年生にあたるファティマちゃんの体重はなんと10キログラム。ヨチヨチ歩きの幼児の平均体重と同程度である。
2011年の“アラブの春”の余波で始まった内戦は、反政府武装組織「フーシ」が2014年に首都サヌアを制圧したことで戦闘の長期化が避けられなくなり、2015年にサウジアラビアとUAEがサヌアなどに対する空爆を開始。以来、おびただしい数の一般市民の犠牲者を出しながら今なお続いている。
ファティマちゃんの家族は内戦前からサウジアラビアとの国境に近い町で暮らしていたが、2015年3月から始まったサウジアラビア主導の空爆で家を失い避難生活を余儀なくされ、現在は木の下で一家10人が生活を共にしているという。父親は内戦で仕事を失い、現在収入はまったくない。食糧の入手もきわめて困難で、また極度のインフレが起きているために手持ちの現金では食糧は高すぎて買えなくなっているという。
また道路交通網が分断されているためか、援助物資はなかなか一般の人々のもとへは届きにくくなっているようだ。こうして現在、イエメンで人口の半数に近い1000万人が深刻な食糧不足に直面しているといわれている。そして家を追われたファティマちゃんの家族もまた避難生活の中でたちまち食糧難に陥った。
日に日に痩せ衰えていく家族だったが、特に衰弱が酷いのが、このファティマちゃんだった。
「このままでは妹が死んでしまう」と危機感を募らせた姉は一大決心して妹を病院に連れて行ったのだが、2つの病院で続けて診察を断られたという。見かねた親戚の者が姉にこの病院を教えて交通費を恵んでくれたということだ。
「私たちは食べ物を買うお金を持っていません。私たちが食べているのは近所の人々や親戚の人たちがくれるものだけです。もし私たちがずっとここにいて飢えていても誰も私たちのことに気づかないでしょう。私たちには未来がないのです」と姉は話している。
■イエメンで約1000万人が飢饉に直面
見るも痛ましい姿で病院に運ばれたファティマちゃんだったが、診察した医師は別段驚くこともなかった。今や病院に連れて来られる患者の多くが栄養失調の症状なのである。当月だけでも、40人の栄養失調の妊婦の診察をしたという。そして来月には43人の栄養失調の子どもの治療にあたらなければならないという。
ファティマちゃんを診た医師のマキア・アル・アスラミ氏は、心身の健康を取り戻すのに最短でも1カ月はかかると診断している。
「彼女の体の中のすべての脂肪は使い果たされました。彼女に残っているのは骨だけです。彼女は最も極端な栄養失調状態にあります」(マキア・アル・アスラミ医師)
国連によれば、このファティマちゃんの飢餓状態は、内戦による経済の崩壊によりイエメンで約1000万人が飢饉に直面していることを表す典型的な例であるということだ。
アスラミ医師によれば2018年末以降、自身の病院だけで、すでに14人の栄養失調による死亡が発生している。そしてこの内戦は国内のいくつかの地域の人々を地元から追い出し、食料、燃料、そして援助のためのアクセスルートを遮断し続けていて、事態は悪化の一途をたどる様相を呈している。
イエメンに食料品はあるのだが、深刻なインフレによって人々は食料品を買うことができないでいる。そして本来安定した収入があるはずの公務員までもが給与の支払いが停止されていて、多くの公務員世帯が“収入ゼロ”になっているのだ。
「大飢饉の瀬戸際の災厄に直面しています。イエメン社会と家族は疲れ果てています。唯一の解決策は内戦を止めることだけです」(マキア・アル・アスラミ医師)
ますます混迷を深めるイエメンの情勢に何らかの光明が差し込むことを願うばかりだ。
(文=仲田しんじ)
※イメージ画像:「gettyimages」より