「視覚障害者は統合失調症にならない」驚愕の最新研究が発表される! 一体なぜ… 精神疾患の早期発見&治療に希望の光も

2019年2月17日(日)14時0分 tocana

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 以前から医学の世界では視覚障がい者に統合失調症状が少ないことが指摘されていたのだが、最新の研究では、それがますます濃厚になってきたようだ。


■先天性皮質盲の誰も統合失調症を発症していなかった


 目の機能自体はほぼ正常であるにもかかわらず、見えているものを認識できなくなる症状が皮質盲(ひしつもう)である。いわば脳の異常による失明で、先天的にこの症状を伴って生まれてくる新生児もいる。


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 豪・西オーストラリア大学の研究チームが2018年12月に「Schizophrenia Research」で発表した研究では、50万人近くもの小児科データを分析して先天性および早期の皮質盲と統合失調症の関係を探っている。


 研究チームは1980年から2001年までの間に西オーストラリアで生まれた新生児46万7945人のデータを分析したところ、その中の0.4%にあたる1870人の新生児が統合失調症を発症させていたことがわかった。


 一方、66人の新生児が先天性皮質盲であったのだが、この中の誰一人として統合失調症を発症していなかったのである。


「この防御的現象は、先天性皮質盲の症状を持つ人々のケーススタディで観察され、そして今や我々の全人口データに基づく慎重な臨床的調査結果として保証されています」(研究論文より)


 サンプルサイズが大きいというだけでなく、この発見が特に注目に値するのは、統合失調症のメカニズムについて、そして将来的にどのようにしてよりよく扱えるかについて、我々にもっと多くのことを伝えてくれる可能性にある。つまり皮質盲に伴う脳構造の変化がどのように統合失調症を防いでいるのかがわかれば、統合失調症の治療法を開発できる糸口になり得るのだ。


■精神疾患の治療法の開発に新たな可能性


 さらなる研究が必要とされていることは言うまでもないが、音声認識、注意、記憶、言語運用といった統合失調症の場合において、通常では機能不全になる脳の領域が、盲目の状態では自然に改善されるメカニズムが見えてきたのである。


 今回の研究では新生児時の状態と、各々の現在、14歳から35歳までの医療データを追跡し分析するにとどまっているが、もちろん統合失調症は35歳以上でも発症するケースはあり、その意味では研究結果は限定的ではある。しかし以前のケーススタディとの適合具合を考慮すると、この研究結果は将来的に十分に検討する価値がある。


 さらにこの研究では、周辺視野障害もまた統合失調症の発症率が通常よりも低いことが突き止められた。周辺視野障害で統合失調症を発症する確率は0.2%だが、しかしながら、周辺視野障害は皮質盲ほどには脳の変化を伴うものではない。


 またこの関係性は統合失調症だけでなく他の精神病性疾患にも及ぶ可能性があることを一部の専門家は指摘している。そしてこのメカニズムの解明は治療のためだけではなく、前もってその状態の兆候を捉え、可能な限り早い段階でその影響を最小限に抑える新たな可能性を開くものにもなる。統合失調症をはじめとする精神疾患の予防と早期発見、そして治療法の開発に大きな希望をもたらすのだ。


 まだまだ研究は初期の段階ではあるが、統合失調症をはじめとする精神疾患の治療に新たな可能性が生まれたのは歓迎すべきことだろう。
(文=仲田しんじ)


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