地球外生命体は惑星「グリーゼ」にいる!? 地球そっくりスーパーアースが2つも発見される

2020年7月8日(水)9時0分 tocana

 地球によく似た大きな地球外惑星はスーパーアース(super-Earth)と呼ばれこれまでにもいくつか見つかっているが、つい先日にも2つのスーパーアースが見つかった。しかも2つとも生命を宿す可能性のある“ハビタブルゾーン”を周回しているのだ。


 


■2つの“スーパーアース”を発見


 この広大な宇宙の中で我々はまだ地球外生命の痕跡すら発見できていないが、地球によく似ている惑星はいくつも発見している。そうした地球に似た惑星の1分類が「スーパーアース」だ。


 独・ゲッティンゲン大学、英・オープン大学などをはじめとする合同研究チームが2020年6月に「Science」で発表した研究では、2つのスーパーアースを持つ恒星系の存在を報告している。


 その恒星は地球から11光年先にある「グリーゼ887」である。赤色矮星であるグリーゼ887が形成する恒星系を、南米・チリにあるヨーロッパ南天天文台(ESO)が運営するラ・シヤ天文台にある3.6m望遠鏡に設置された高精度の分光器を使い、グリーゼ887を詳しく観測したところ、グリーゼ887b、グリーゼ887cという2つのスーパーアースがあることが今回確認されたのだ。



 公転周期はグリーゼ887bが9.3日間、グリーゼ887cが21.8日間で、この2つの惑星は共に恒星と潮汐ロックの関係にあると推定できるという。潮汐ロックとは自転と公転が同期することで、地球の衛星である月のように、母星に対し常に同じ“顔”を見せている関係性である。そして恒星と潮汐ロックの関係にあるということは、惑星の“表”は常に昼で、“裏”は常に夜になっていることになる。


 グリーゼ887は我々の太陽の半分くらいの大きさで、熱量も太陽に比べればかなり低い。恒星の温度が低いということは、液体の水や生命が存在し得る“ハビタブルゾーン”もそのぶん恒星に近い領域で形成されることになる。グリーゼ887b、グリーゼ887c共に、我々の太陽系の水星よりも恒星に近い距離を公転しているが、それでもグリーゼ887が低温であるためにこの距離でもハビタブルゾーン内にあるということだ。


 我々の太陽は黒点が多く活発に活動しているが、一方でグリーゼ887は黒点がほとんど見られないことから太陽フレアなどの活動があまり起こっていないと考えられるという。これは近くを公転する惑星にとってさらに“優しい”環境になる。


 研究チームはグリーゼ887cの“表”の表面温度は70度にも達すると推定しているが、もしも地球と同じように分厚い大気に包まれているとすればこの限りではない。


 地球よりも大きく海王星よりも小さいというこの2つのスーパーアースに大気があれば、生命を宿している可能性もかなり高いのかもしれない。



 


■地球外生命体発見の日が一気に近づく


 研究チームによればグリーゼ887恒星系にはさらに第三のスーパーアースが存在するかもしれないことを示唆している。それはグリーゼ887の周囲を51日かけて回る惑星である。そしてこれもまたハビタブルゾーン内にある惑星ということだ。


 しかし研究チームの一員でオープン大学の天体物理学者であるジョン・バーンズ博士によれば、恒星系に未確認の信号を検出し、2つの惑星の外側の軌道を持つ第三のスーパーアースの期待が高まったものの、今はまだ判断には慎重であるという。


 今回の研究には関与していないスウェーデン・ルンド大学の天文学教授であるメルビン・デイビス氏は、もしこの第三のスーパーアースが確認された場合、この星が最も主要な研究対象になると述べている。つまり3つの惑星の中で最も生命を宿している可能性が高くなるということだ。


 また、研究チームの一員でオーストラリア・マッコーリー大学のサイモン・オトゥール博士は、グリーゼ887の明るさがほぼ一定であることに着目し、「NASAのケプラーやTESS(トランジット系外惑星探索衛星)のような宇宙空間ベースの太陽系外惑星探査望遠鏡の時代に、地上からの恒星系の観測によって我々の地域の惑星の理解に重要な役割を果たし続けている」と言及している。つまり地球上からの天体観測にもまだまだ大きな可能性が残されているのだ。


 そしてグリーゼ887恒星系は、来年に打ち上げられる予定のハッブル望遠鏡の後継であるジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の主要なターゲットになるという。


 さらに論文主筆であるゲッチンゲン大学のサンドラ・ジェファーズ博士は、このスーパーアースは地球外生命体の研究に最適な可能性を提供すると指摘している。


「これらの惑星は、太陽系外生命体の探査を含む、より詳細な研究のための最良の可能性を提供します」(サンドラ・ジェファーズ博士)


 人類の悲願ともいえる地球外生命体発見の日は、この2つ(あるいは3つ)のスーパーアースによって一気に近づいてきたといえるのかもしれない。


参考:「Daily Mail」、「Space.com」ほか


文=仲田しんじ

tocana

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