自分の細胞で“スペア臓器”が作れる時代、ついに到来! 「3Dプリント心臓」の実験成功、ドナーに頼らない臓器移植へ!

2019年4月27日(土)14時0分 tocana

イメージ画像:「Gretty Images」

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 自分の細胞から自分の臓器が3Dプリンターで自由に作れる——。そんな夢のような技術がイスラエルから報告されている。


■3Dプリンターを使って心臓を作ることに成功


 適合するドナーを探すことにはじまり、手術の難しさや術後の免疫反応など、幾多の困難を伴う移植医療だが、そうした懸念がいっぺんに消え去る日が来るのは、案外近いのかもしれない。自分の細胞から3Dプリンターでスペアの臓器が作れるようになるというのだ。


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 イスラエル・テルアビブ大学の研究チームが先日発表した論文では、世界で初めて3Dプリンターを使って心臓を作ることに成功した詳細が記されている。


 作成されたのは、ウサギやげっ歯類サイズの心臓であるが、血管、コラーゲン、そして生体分子を含む臓器が人間の生体組織を使って作られた。移植できる人間の心臓を作成するのはまだ先のことにはなるが、げっ歯類サイズの心臓であっても基本的な構造は人間の心臓と変わりない。


「今回“プリント”された心臓を我々はさらに発展させていきます。特に心臓としての“ポンプ能力”を得る必要があります。現在は収縮することができますが、さらなる研究が必要です。私たちの希望は、研究の成功と、その有効性と有用性を証明することです」と研究チームのタル・ドゥヴィル教授は語る。


 研究の次の段階は実験室でげっ歯類サイズの心臓を培養し、それを成長、成熟させ、そして、あくまで人工的なこの生物学的器官に、心臓のように“振る舞う”ことを教え込むことである。その後、こうして3Dプリントされた心臓を動物に移植して実際の心肺機能をテストすることになる。


 この技術が、実際に移植可能な臓器を作れるようになるまでにはまだ時間が必要だが、それでもテルアビブ大学の科学者たちのこれまでの研究成果は移植科学の大きな節目となるという。なぜならこれまでの技術は、実用性に欠かせない血管新生、つまり血管を作る能力に欠けていたのである。


「細胞、血管、心室、心腔を備えた心臓全体を設計して“プリント”したのは、今回が初めてです」(タル・ドゥヴィル教授)


 これまで、科学者たちは軟骨や大動脈弁の生体組織を“プリント”することに成功しているが、課題は血管新生できる組織を作り出すことであったのだ。もちろん今回の“3Dプリント心臓”は毛細血管に至るまで正常に機能している。


■ドナーに頼ることのない移植医療が実現する日


 では、“3Dプリント心臓”の作り方はどのようなものなのか。テルアビブ大学の科学者たちは、まず人間から抽出された脂肪組織の細胞成分と非細胞成分を分離した。


 その後、未分化幹細胞に戻るように細胞を再プログラムし、改めて心臓細胞または内皮細胞になるように促されたのだ。タンパク質を含む非細胞マテリアルは、“プリント”のための“インク”として機能する「個別化されたヒドロゲル」に加工されるとドゥヴィル教授は説明している。


 この技術はまだ初歩的なものではあるが、“プリント”された臓器はすでに医学生の手術の訓練や、複雑な手術の計画を立てる際に実際に使用されているという。ドゥヴィル教授はこの技術が今後10年ほどで主流になり、人間の生体組織を基にして臓器や組織を“プリント”できるようになる未来を思い描いている。


 この“臓器プリント技術”は、3つの基本的な段階を含むという。 第1段階は、例えばMRIによって臓器を詳細にスキャンすることである。2段階では、臓器を1層ずつ“プリント”することで、第3段階では“プリント”した臓器を適切な環境で“成熟”させることだ。これまで心臓はその複雑さと高いプレッシャー耐性のために製造することが特に難しいと考えられてきた。


 そして“臓器プリント技術”は、患者自身の細胞を使用することで免疫拒絶反応の可能性が大幅に減少する。ドゥヴィル教授の最大の希望は、“臓器プリント技術”が臓器提供のシステムを時代遅れにすることにあるという。ドナーに頼ることのない移植医療が実現する日は案外近いということなのだろう。
(仲田しんじ)


※イメージ画像:「Gretty Images」

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