<老後2000万円問題>以降に、退職世帯の平均収入が増えたカラクリとは。ウェルスナビCEO「現役世代が、年金と退職金で生活していくことは難しくなるだろう」

2025年3月25日(火)12時30分 婦人公論.jp


(写真提供:Photo AC)

「人生100年時代」といわれるなか、老後のお金が心配な方も多いのではないでしょうか。40万人以上の資産運用に関わってきたお金のプロ、ウェルスナビ代表取締役CEOの柴山和久さんは、「何歳までお金が必要になるのかは誰にもわからないからこそ、資産運用を続けて、お金の心配を減らすことが重要」と話します。そこで今回は、柴山さんの著書『新しいNISA投資の思考法 お金の悩みから解放される 正しい「長期・積立・分散」のはじめ方』より一部を抜粋してお届けします。

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2000万円問題以降の高齢世帯のデータから読み解けること


実際に、老後2000万円問題が報道されて以降、平均値を見ると収入が徐々に増えています。次の図は、「老後2000万円問題」報告書で取り上げられたモデルケース以降、同じ条件で高齢世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の無職世帯)の収入と支出をまとめたものです。左側の2017年の数字は、2000万円問題の年と同じものです。

2000万円問題の2017年の時点では月5.5万円の赤字だったのが、直近の2022年には半分以下の2.6万円の赤字に減っています。これはなぜでしょうか。

収入と支出をよく見ると、1カ月の支出はほとんど変わっていませんが、収入が徐々に増えています(ちなみに、2020年には、新型コロナウイルスの流行によって支出を減らした人が多いと思われる一方で、給付金が支払われたため、一時的に収支の差がほとんどなくなっています)。年金がほとんどを占めるはずの収入が、なぜ増えたのでしょうか。

この期間に年金を大幅に増やすような制度改正は行われていませんので、その理由は一つです。それは、65歳以上でも働き続けることを選択する方が増えたということです。

「退職世帯」の平均収入が増えた理由


働き続けることを選んだ場合、統計上、「退職世帯」には含まれなくなります。

特に老後の年金収入が不十分だと感じている方ほど、働き続けることを選ぶと考えられますので、そうした方々が統計に含まれなくなることで、「退職世帯」の平均の収入が押し上げられたと考えられます。これは統計上の錯覚で、実際に一人ひとりの年金額が増えていなくても、平均額は上がります。


『新しいNISA投資の思考法 お金の悩みから解放される 正しい「長期・積立・分散」のはじめ方』(著:柴山和久/ダイヤモンド社)

また、働き続けることを選んだ方の一部が、働いている間は年金の受給資格があってもあえて受け取らないことを選択したと考えられます。そして、完全にリタイアしてから年金を受け取り始めると、年金の支給開始繰り下げ制度によって、毎月の年金の支給額が増えます。このことによって、「退職世帯」の平均収入が増えたと考えられます。

このように、十分な老後資金の蓄えがない人ができるだけ働き続けることを選んだ結果、退職世帯の平均の収入が少しずつ増えてきた、と考えるのが自然です。

「働き続ける」、「リタイアする」2つの選択肢を持つことが重要


働き続けることを選んでいる人の中には、年金や退職金で、老後資金は十分に確保できていて、それでも好きな仕事を続けている方もいると思います。できるだけ長く働いて、世の中の役に立ちたいと考えられることは、素晴らしいことだと思います。

一方で、本当は仕事をリタイアして、趣味に時間とお金を使いたいけれど、その余裕がなく働き続けているという方もいるでしょう。

働くことと、趣味や娯楽に時間を使うこと、どちらがよりよい選択だと言いたいわけではありません。重要なのは、本当にやりたいことを選択できる環境のほうが、幸せなのではないかということです。

老後は自分の好きなことをして過ごしたい、現役時代にはなかなかできなかった趣味に時間を費やしたいという方もいるでしょう。老後に、自分のやりたいことにどれだけ時間やお金をかけられるかは、とても大切なのではないでしょうか。

収入を増やす方法は、働き続けることだけではない


「老後2000万円問題」報告書では、日本社会の構造はすでに大きく変わっていることが指摘されていました。

実際に、終身雇用を前提としない働き方が増え、退職金の平均額もだんだんと減っています。現在の働く世代が、高齢世代と同じように、年金と退職金で生活していくことは難しくなる可能性が高いでしょう。

それでは、これからの時代を生きる私たち働く世代は、どうすればよいのでしょうか。

支出を減らしたり、働いて収入を増やしたりする方法もありますが、それだけではありません。働きながら資産運用を行うことで、資産による収入を増やしてリタイアするという選択肢もあります。

※本稿は、『新しいNISA投資の思考法 お金の悩みから解放される 正しい「長期・積立・分散」のはじめ方』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。

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