洗濯ブラザーズが『ノンストップ!』に出演「クリーニングに出していたものの9割が自宅で洗えます」洗濯の楽しさを伝えて、好きな家事にしてほしい

2025年3月25日(火)10時0分 婦人公論.jp


毎日の洗濯を楽しくハッピーにするための活動をするプロ集団の「洗濯ブラザーズ」 茂木 貴史さん(左)と茂木 康之さん

《日本一の洗濯屋》として、様々なメディアで注目をされている洗濯ブラザーズ。実の兄弟である茂木貴史さんと茂木康之さん、そこに友人の今井良さんが加わった3人のユニットで、クリーニング店「LIVRER YOKOHAMA(リブレ ヨコハマ)」「LIVRER MISHUKU(リブレミシュク)」を経営。そのかたわら、劇団四季、シルク・ドゥ・ソレイユ、クレージーケンバンドなど、国内外の著名なアーティストの衣装クリーニングを行っている。「キレイに洗えて、服が長持ちする」独自の洗い方を紹介した著書『日本一の洗濯屋が教える 間違いだらけの洗濯術』(アスコム)は8万部を超えるベストセラーに。「地味な作業」という印象も受ける「クリーニング」という仕事に、並々ならぬ情熱を注いでいる理由は何なのか? 「洗濯の楽しさを伝えたい」という熱い思いを、次男の康之さんにうかがった。(構成=内山靖子、撮影=本社写真部・中島正晶)

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大好きな服をもっときれいに洗うため
自分の手で理想の店を


洗濯ブラザーズの現在の活動は、2007年に僕が「リブレ ヨコハマ」を立ち上げたことがきっかけです。

そもそもの話をさかのぼると、かつてうちの父が全国のクリーニング店に向けてコンサルティング業をやっており、工場で使う機器の製造や販売、その後のメンテナンスサービスなども引き受けていたんです。一時期、僕もその会社で働いていたのですが、各地を回って気がついたのは、専用の溶剤をきちんと管理して、適切な状態でドライクリーニングを行っている工場は全体の約2割。つまり、残りの8割は汚れた溶剤で服を洗っているような状態でした。

これではいけない。お客様から預かった大切な服をもっときれいに洗いたい。僕自身も10代の頃から服が大好きだったので、服に対する思い入れは人一倍。お気に入りの1着を大切にして、長く愛用していきたい。そのために、生地を傷めず、風合いを損ねず、可能な限り新品に近い状態に近づけられる、自分が理想とするクリーニング店を立ち上げようと思ったんです。

最初は、車を1台買って、知り合いのクリーニング工場の一角を間借りして、宅配クリーニングの形でスタートしました。ようやく自分の店舗を持てるようになったのが、それから2年後。とはいえ、その当時は、横浜の町の片隅にある、個人経営の小さなクリーニング店にすぎませんでした。


お客様から預かった大切な服をもっときれいに洗いたい。その思いが理想のクリーニング店を立ち上げるきっかけに


『日本一の洗濯屋が教える 間違いだらけの洗濯術 』(著:洗濯ブラザーズ/アスコム刊 )

繊細なステージ衣装との出会いが
独自の「洗い方」を生み出すきっかけに


そこから、現在のように幅広い活動を手掛けるきっかけになったのは、ある劇団の衣装が店に持ち込まれたことでした。

普通の服とは違い、舞台衣装は一般には「洗えない」とされている素材が使われている場合が多いでしょう。スパンコールやオーガンジー、毛皮やプラスチックなどの素材が部分的に使われていることもある。しかも、汗びっしょりで、ドーランや口紅の汚れがついていることも少なくありません。

と言っても、繊細な素材でできた服ですから、洗濯機でガンガン洗うわけにはいきません。それぞれの素材に合った洗い方や洗剤を使って、丁寧に手洗いしていく必要がある。1着1着、ベストな洗い方も仕上げ方もまったく違うので、日々、試行錯誤の繰り返し。そんな、ある意味、究極の職人技とも呼べる作業を重ねているうちに、《洗濯の沼》に完璧にハマってしまって(笑)。そこから手探りで、うちの店ならではの「洗い方」を考案していったのです。

シルク・ドゥ・ソレイユの衣装を初めて見せていただいたときも、正直な話、「これを洗うのか!?」と、目が点になりました。その場には他のクリーニング会社さんも同席していたのですが、「これはうちでは洗えない」と、途中で退席してしまうほど、複雑な素材の衣装ばかりで。でも、僕はむしろヤル気が湧いてきた。これをきちんと洗えたら、《洗濯屋》としてもっとステップアップしていけるはずだって。もうひとつ、汚れているものを見ると、「これをきれいにしてやろう!」と、脳内からドーパミンがドバドバ出るんです。もはや、洗濯への偏愛と言えるのかもしれません(笑)。

環境に配慮して、
オリジナルの洗剤も開発


舞台衣装だけでなく、うちのクリーニング店にはスタイリストさんや、おしゃれが大好きな一般のお客様たちが様々な素材の服を持って来店されます。大切な1着ですから、どの服も新品同様にイキイキとよみがえらせたい。それにはどんな洗い方がいいだろう?と、試行錯誤していく中で、どんな洗剤を使えばいいのかということも大きな課題になりました。

一般的なクリーニング店では、おしゃれ着をドライクリーニングで洗うことが多いでしょう。でも、ドライクリーニングに使用する溶剤の原料は石油です。使用する過程で二酸化炭素も排出されるので、決して環境にやさしいとは言えません。「服をきれいにする」ために、環境を汚してしまうのは非常におかしな話です。

そう考えるようになったのは、僕たち兄弟が、若い頃からサーフィンに親しんできたことも影響しているかもしれません。サーフィンを通じて知り合ったオーストラリアやアメリカの友人たちは、自然に対する考え方が日本人とはまったく違う。たとえ、山火事や水害などの自然災害があったとしても、仲間がサメに襲われたとしても、彼らは自然をまったく憎まないんです。

そんな彼らから影響もあり、うちの店では環境破壊につながるドライクリーニングの比率を押さえて、可能な限り水洗いにシフトしています。で、そのためには、水洗いに適した洗剤を使う必要がある。ここで、兄が登場するんです。もともと兄は、海外のオーガニックコスメを輸入する仕事に携わっていたので、ナチュラルオーガニックという視点から、オリジナル洗剤の開発に加わってくれることになりました。節水も意識して、すすぎが1回でもきちんと洗えるノンケミカルな洗剤を——コットンなどの一般的な服に使う洗剤だけでなく、シルク&ウール専用のもの、デニム専用のものなど、様々な種類の洗剤を開発し、現在、うちの工場ではこのオリジナル洗剤を使ってクリーニングをしています。


お店の奥では、洗濯の仕方を見せられるスペースが

この洗剤、おかげさまでお客様にも好評です。当初は、商品として販売することは考えていませんでした。でも、お客様がうちの店に服を持っていらしたときに、自宅で洗えそうなものは、じつはお返ししているんです。「ご自宅で洗ってください。そのための洗剤もありますから」って。そうして、うちの洗剤を使って手洗いする方法をお教えしているうちに、洗剤自体がどんどん評判になっていきました。おかげさまで、今では百貨店さんやセレクトショップさんの店舗でも販売していただけるようになりました。

ちなみに、僕らのコンセプトに共感して最後に加わった《3男》の今井はITに強いので、ネット関連の仕事を主に担当しています。中年男が3人揃い、オリジナル洗剤をパリの展示会に出品しようというときに、何かインパクトのある名称をつけようと、兄が「洗濯ブラザーズ」と命名したんです。この名前のおかげで、芸人さんと勘違いされることも多くて、イベント会場で「今日は、何を歌ってくれるんですか?」と聞かれることも(笑)。そういうときは、「いえ、洗濯の仕方を教えます」と答えるようにしています。

毎日の洗濯を
「嫌いな家事」から「好きな家事」へ


先ほどもお話しましたが、うちの店では自宅で洗えるものはお客様にお返し、ご自分で洗っていただくようにお願いしています。「それでは商売にならないんじゃないか?」ともよく言われます。確かに、あまり儲けにはなりません(笑)。でも、単に服をきれいにするだけでなく、「クリーニングに出しても、シミや汚れがきちんととれない」といった、お客様がこの業界に抱いている不信感を払拭したいと、僕は考えているのです。それにはまず、「これは家で洗えます」と正直にお伝えすることが、信頼を回復する一歩につながっていくだろう、と。「今までクリーニングに出していたものの9割が自宅で洗える」とわかれば、クリーニング代も大幅に節約になり、みなさん喜ばれると思うのです。その上で、本当にプロの手でしか洗えないものを持ってきてくださったら嬉しいなって。

もうひとつの理由は、自宅で、僕らがお教えした方法で洗濯をしてもらい、洗濯を好きになってほしいから。主婦の方たちにたずねると、大半の方が「洗濯は嫌い」「洗濯は面倒」と、おっしゃいます。その「面倒」を、ぜひ「楽しみ」に変えてほしいのです。


洗濯の「面倒」を「楽しみ」に変えてほしいと語る茂木 康之さん

自分の好きな香りの洗剤を使って、正しい洗い方で洗えば、シルクのブラウスもカシミアのストールも新品同様によみがえる。「こんなにきれいになるのか」と、自分の手で1度でもそんな達成感を味わえば、これまで「苦行」だった洗濯が、きっと「楽しい時間」に変わるはず。とくに、20〜30代の独身男性と、50代以上の子育てを卒業した主婦の方が「洗濯の楽しさ」にハマります。そんな方たちをもっと増やしていくために、僕らは数々のイベントや講演を行って、正しい洗濯法のノウハウをお伝えする本も出版したのです。

将来的には、僕たち《洗濯屋》が考える、おしゃれな服も提案していきたい。こんな素材で、こういうデザインでつくったら、もっと洗いやすくなるということを、アパレルメーカーさんと一緒に考えていけたらいいですね。毎日の洗濯を楽しくハッピーにするプロ集団として、みなさんが洗濯に対して抱いている常識を、これからも、いい意味でくつがえしていけたらと思っています。

婦人公論.jp

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