音楽を奏でる演奏家と聴衆の脳はシンクロしていることが判明

3月27日(金)9時0分 カラパイア

concert-768722_640 (1)_e

 音楽家が奏でる演奏を聴く聴衆は、ただ耳を傾けているだけだろうか? いいや、きっと手拍子をしたり、足を踏み鳴らしたり、あるいは一緒に歌を歌ったりと、その音楽を共有するかのような行動を見せるだろう。

 だがじつは演奏家と聴衆には体だけでなく、脳においてもシンクロ現象が見られるらしい。

 『NeuroImage』(2月18日付)に掲載された研究によれば、音楽を通じて、演奏家と聴衆は感情的にも行動的にも、それどころか神経レベルですらつながっているのだそうだ。


・バイオリン奏者と視聴した人の脳の血流を測定

 華東師範大学の研究グループが調べたのは、楽曲を演奏する演奏者とそれを聴く聴衆に現れる「脳間コヒーレンス」だ。これは脳活動のシンクロレベルを表すもので、聴衆が音楽を楽しんでいる程度をも知ることができるという

 実験では、まずプロのバイオリニストにクラシックの楽曲12曲をそれぞれにつき100秒ほど演奏してもらいながら、そのときの脳の血流を近赤外線分光法という手法で測定した。

 このときの様子は録画されてもいた。撮影中、バイオリニストは無表情のままカメラを見るように指示されていた。無表情なのは、ある曲の演奏が他に比べて楽しかった場合、それを聴衆に悟られないようにするためだ。

 次に女性16人に録画した動画を視聴してもらい、やはりこのときの脳活動を同じ手法で測定した(聞き手が全員女性なのは、脳間コヒーレンスに存在する男女差を考慮したため)。

 彼女たちは、視聴中はバイオリニストの顔を見るよう指示されており、1曲を聴き終わったら、その評価を7段階のスケールで採点してもらった。

violin-374096_640_e
Niek Verlaan from Pixabay

・バイオリニストと聴衆の脳に類似の活動パターン

 その結果、バイオリニストと被験者の脳には似たような活動パターンが観察されたそうだ。

 特に重要なのは、「左側頭皮質(left temporal cortex)」「右前頭葉下部(right inferior frontal cortex)」「中心後皮質(postcentral cortices)」でそのようなパターンが観察されたことだ。

 左側頭皮質は、音情報のリズムを処理するとされている部分。そして残り2つは、「ミラー・ニューロン」の重要な中枢であるとされる部分だ。

 ミラー・ニューロンとは、他人の行動を見て、それを自分自身の行動のように感じさせることができる神経細胞のこと。相手の立場になって、その人のことを考える上で大切な役割を果たしているとされる。

 つまり、演奏者の姿を見つめる聴衆は、まるで自分で楽器を弾いているかのような感覚を味わっているらしいということだ。

chamber-music-1188042_640_e
Warren Miller from Pixabay

・高評価だった楽曲ほど、脳のシンクロ率が高い

 各曲ごとに観察された脳間コヒーレンスを平均化し、これを被験者がつけた楽曲の評価スコアと比較してみると、ここにもはっきりとした相関関係が確認されたという。被験者に好評だった曲ほど、被験者とバイオリニストの左側頭皮質には強い脳間コヒーレンスが現れていたのだ。
 
 ところが面白いことに、脳間コヒーレンスと高評価との相関は、各楽曲の後半でしか認められなかったそうだ。その理由について、研究チームは音楽鑑賞には2つの段階があるからではないかと推測している。

 第1段階では、リズムが認識され、楽曲の大体の構成が把握される。その上で、第2段階として、メロディの流れを予測しながら、感情が共鳴し出す。

 音楽が楽しいのと感じられるのは、自分が予想した音楽の展開と、実際に聞こえてくる音の展開が一致したときなのだそうだ。そのため、そもそも曲の流れを予測できない前半部分では、脳間コヒーレンスが高まらないということだ。

music-748118_640_e
Gerd Altmann from Pixabay

・他のジャンルや楽器ではどうか?

 脳間コヒーレンスと評価のシンクロが集団レベルでしか確認されなかったことや、他の音楽ジャンルあるいは楽器を使った場合でも同じような結果が得られるのかどうかなど、演奏者と聴衆の神経レベルのシンクロについてはまだまだ研究を進める余地がありそうだ。

 また今回の研究では、皮質の血流しか測定されていないので、辺縁系のような脳のもっと奥深くにある領域の反応は不明だし、被験者が女性のみだったので、男性の反応も分からない。

 それでも今回の研究は、音楽鑑賞という人間ならではの行為について洞察を与えてくれるとともに、さまざまな音楽に対する一般大衆の態度を予測するヒントにもなりそうだ。

References:Musicians And Their Audiences Show Synchronised Patterns Of Brain Activity – Research Digest/ written by hiroching / edited by parumo

カラパイア

「シンクロ」をもっと詳しく

「シンクロ」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ