山田詠美 夫にするなら一緒にソフトクリーム食べられる人

3月28日(水)7時0分 NEWSポストセブン

山田詠美さんが語る夫婦円満のコツ

写真を拡大

 日経新聞夕刊で初めての新聞小説連載「つみびと」がスタートするなど、話題が尽きない山田詠美さん。その最新エッセイ集が『吉祥寺デイズ うまうま食べもの・うしうしゴシップ』だ。日常の折々の出来事を俎上にのせて毎週綴る女性セブンの人気連載「日々甘露苦露」をまとめたもので、こちらも発売早々大反響となっている。「目指すは甘くて苦くて無銭だけど優雅な日々」という吉祥寺在住の山田詠美さんに、書評家・倉本さおりさんがロングインタビュー。


『吉祥寺デイズ』を語る上で絶対に欠かせない要素の一つ、それは10歳歳下の夫の存在だ。美味しいものにせよ、わくわくする映画にせよ、呆れるようなゴシップにせよ、山田さんが綴る生活の断片には、いずれも夫と交わした言葉や過ごした時間が含み込まれている。


 とりわけ印象的(衝撃的?)なのは「スノー」のエピソードだ。山田家では、小さくて愛くるしく、「かそけき者」と呼びたくなるものにすべてに「スノー」と命名する。その結果、ちっちゃな赤ちゃんや幼児を連れたママさんが通りがかると、夫婦揃って「スノー、スノー♪」の合唱が始まるのだという。


「もしかしたら私たち、吉祥寺界隈で“夫婦妖怪”として名を馳せているかもしれません」


 山田さんが可笑しそうに話す一方、当の夫は掲載されたエッセイを読むたびに青ざめているのだとか。心中お察しします、と言いたいところだが、その姿もまたチャーミングで微笑ましい。


「私の夫は本来、仏頂面で愛想がなくて、基本的には不器用な人。けれど突然ものすごく面白いことを言ったりする瞬間があるんです。どうやら私と一緒になってから開花したらしくて。自分がそういう、可愛らしいものを好きになる人間だとも思ってなかったみたい」


 他にも本文には、二人きりの日常を楽しく豊かに過ごすためのヒントとなるようなエピソードがたくさんちりばめられている。それらはまさに、山田さんが11年前に上梓した『無銭優雅』という小説の中で描いていたことだ。


「自分たちにしかわからない、“楽しい無駄”の要素って、後々すごく心を豊かにしてくれると思うんです。


 例えば、うちの実家は宇都宮なので、車で訪ねた場合、寄り道をしなければその日のうちに吉祥寺の家に帰ることだってできるわけですよ。だけど、わざわざ浅草でストップして1泊することで、予定外の贈り物をもらったみたいな気分になれる。


 いわば、自分たちに自分たちで贈り物をするような感覚ですね。日々の中に、そういう“楽しい無駄”がちょっとずつあるといい」


 例えば映画やスポーツの試合を眺めながらアイスクリームやソフトクリームを半分こする場面は、もはやこのエッセイ集においてお馴染みの光景。その仲睦まじい姿に、読んでいるこちらが「ごちそうさま」と言いたくなる。


「やっぱり、夫にするならソフトクリームを一緒になめられるような人がいい。誰かと食べ物を分けるにしても、ソフトクリームだけは“自分の男”って思える相手じゃないと一緒になめられないから。この距離の近さは特別だなって思います」


 なるほど…どうやら夫婦の幸せを実現するには、「同じ高さの目線で何事もシェアできること」が重要な役割を果たしているらしい。そのためには、いくつかのコツもまた必要となる。


「うちの父はとにかく母を褒めまくるんです。“こんなに美しい人はいないよ”って、本当にいつも言っている。そうやって相手を気持ちよくさせる言葉がすごく大事なんですよ。


 今の私の夫は、それまでまったく女の人に褒め言葉なんてかけたこともないような人なのに、気づけば自然と出てくるようになりました。私が家で女友達とお酒を飲んでいる時に帰ってきたりすると、“どこの美女が二人で花を咲かせているのかと思ったよ”なんて言うわけです。それを聞いた友達が仰天していました。あれ? こんなこと言う人だっけ?って」


 友人からは「どうやって変身したの?」としきりに尋ねられたそうだが、それは「夫婦にしか通じない」「人様にはお見せ出来ない」やりとりを何度も何度も重ねてきた結果だとしか答えられない。


 ちなみに吉祥寺にある山田家のリビングには「うちの壁画」と呼ばれる一角がある。結婚記念日が来るたび、壁にペンで簡単な言葉やイラストを描き込んでいくうちに出来上がったそうだ。客人の目には、描き込まれたメッセージの意味するところまでは窺い知ることはできないのだけれど、その「壁画」が夫婦で共有してきた、いとおしい時間そのものを表していることは十二分に伝わってくる。


「人ってけっきょくは楽しい方向に転がっていくものなんです。だから、それがどんなにばかみたいなことでも、二人で共有していくうちに、二人だけのルールになる。ばかみたいなことの歴史を積み重ねていくと、いつかばかみたいじゃなくなるんですよ(笑い)」


撮影/五十嵐美弥


※女性セブン2018年3月29日・4月5日号

NEWSポストセブン

「山田詠美」をもっと詳しく

「山田詠美」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ