今年の最優秀ラーメン候補! ラーメン官僚が祐天寺『Ramen Break Beats』の醤油&塩らぁ麺を実食レビュー

2022年4月3日(日)10時47分 食楽web


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 今回ご紹介するお店は、2022年1月8日にオープンした『Ramen Break Beats(ラーメン ブレイク ビーツ)』。場所は東急電鉄東横線・祐天寺駅から10分程度歩いたところ。道中、景色が徐々に商店街から住宅地へと移り変わり、「こんな場所にラーメン店が存在するのか?」と、不安に駆られる方もいるかもしれませんが、心配はご無用。

 優良店のロケーションは、鉄道駅から2〜3km離れた場所にあるなど、必ずしもアクセスが良好でない場合も多く、住宅地のど真ん中にポツンと1軒佇んでいるのが高名な実力店、ということも珍しくありません。地方の店だと、“最寄り駅”と呼べるものすらない場合も…。

 そう考えてみれば、最寄り駅から1kmに満たない場所にある『Break Beats』の立地は、問題視するに値しない部類。この『Ramen Break Beats』。現在(2022年3月現在)、オープンから2ヶ月あまりの月日が流れたところですが、とにかく足を運んだラーメン好きの知人・友人からの評価がおしなべて良い。上々なんです! すでにラーメンマニアの間では「もう祐天寺に行った?」というのが、イコール『Break Beats』への訪問の有無を尋ねる言葉として通用するほど。

 当然、マニアの1人として、私も到底、看過することはできず、3月に入った早々のタイミングで、足を運んでまいりました。ロケーションは、冒頭で述べたとおり、住宅地のど真ん中。近くには『麺屋東京かとむら』という、2017年にオープンした油そばの人気店があり、そちらにも絶え間なくお客さんが入店しています。


祐天寺駅から徒歩10分で到着。木の質感を巧みに活かした店舗外観

 木の質感を巧みに活かした店舗外観は、予備知識がなければ、それがラーメン店であるとは分からないほどスタイリッシュ。特に表札がオシャレですね。切り出した木材のようなプレートに、赤色で刻まれた『Break Beats』の屋号。なんとなく日本のラーメン店っぽくないのは、店主の柳瀬拓郎さんがカナダでシェフを勤めていた経験があり、かつ、DJという別の顔もお持ちだからでしょうか。

 黒地に赤色で屋号、白色で「RAMEN」の文字が刻まれた暖簾(のれん)も実に印象的。ここまでセンスの良さを感じるラーメン店のファザードにはそうそうお目にかかれません。


店舗内観(食楽web)

 券売機で販売されるのは2種類のレギュラーメニュー(「醤油らぁ麺」、「塩らぁ麺」)に加え、限定らぁ麺等。事前に信頼できる知人から「『醤油らぁ麺』、『塩らぁ麺』ともにハイレベル」との情報を入手していたので、迷うことなく「塩」「醤油」の2杯を連食させていただきました!

いざ「塩らぁ麺」と「醤油らぁ麺」を実食


「塩らぁ麺」1000円

 柳瀬店主によれば、「カナダのレストランで8年間シェフを務めていた頃、ランチタイムにラーメンを出していたことはありますが、ラーメンづくりは誰から教わったわけでもなく、ほぼ独学」とのこと。とは言え、もともとセンスがおありだったのでしょう。バッチリ修業を積んだと言われたとしても納得してしまいそうなほど、ラーメンとして完成された端整な盛り付けです。


澄んだスープが心と体に染み渡る

「唯一、頭が上がらないのは『柴崎亭』(東京・つつじヶ丘)の店主・石郷岡さんですね。あそこのラーメンが好きで、1年前に日本に帰国してからは、毎週、週末限定のラーメンを食べに通っていたのですが、それが美味しくて。ウチがオープンしたときに、店主がわざわざ私のお店にまで足を運んでくれたんですよ。その時にいただいた『ラーメンという概念にとらわれず、料理を作るつもりで厨房に立ちなさい』というアドバイスは、忘れられない宝物です」(柳瀬店主)


すすり上げる度に旨さが増す麺

 箸で崩すのがためらわれるほど美しく整った麺線も、石郷岡店主の指導の賜物。それ以外は、カナダのレストラン勤務時にコロナ禍で町がロックダウンしたときに、自宅で始めたラーメンづくりの延長線上にあるそうです。「毎日ラーメンを作っているうちにどんどんのめり込み、日本帰国時には自分の店を出すことを決意していました」と柳瀬店主。

 スープは、柳瀬店主が福岡県の出身ということもあり、可能な限り地元・九州の食材にこだわっているのも特徴です。

「熊本の名地鶏である『天草大王』がスープの主役です。冷凍ではなく生の状態で九州から取り寄せ、店に届いたその日のうちに出汁を採ります」。店主がフレンチのシェフだった頃に得たコンソメの製法を応用して創られたスープは燦然と光り輝き、濁りは皆無。スープ越しに、丼の底まで見通せるほど透き通っています。ちなみに、「限定 らぁ麺」の丼やトッピング用のお皿には福岡県の小石原焼を使用しており店主の九州愛が伝わってきます。


「醤油らぁ麺」1000円

 スープだけではありません。合わせる鶏油も、寸胴からは取らず、別途単独で仕込むこだわりよう。「毎朝、雌の天草地鶏の脂をカリカリになるまで加熱し、1日に提供するラーメンの分だけ用意しています」。その際、鶏特有の芳香を極限まで引き出すよう心掛けているとのこと。


緻密に計算されたスープが食欲を加速させる

 タレも、「醤油らぁ麺」の醤油は、明治30年創業の九州を代表する老舗醸造所『北伊醤油』(福岡県糸島市)の杉樽仕込みのものを使い、「塩らぁ麺」には、瀬戸内海の海水から作られた「海人の藻塩」を採用するなど、手抜かりは一切ありません。

 ひと口すすれば、「天草大王」の豊潤な滋味が味蕾を経由し、味覚中枢を直撃。その後、鶏の合間を縫うように、じわりとタレのうま味が押し寄せ、食べ手を圧倒します。味覚のみならず、嗅覚をも幸福感で包み込む鶏油の出来映えも「お見事!」のひと言。

 幾種類ものうま味を針の穴を通すような緻密さで重ね合わせ、食べ手の口の中でピタリと一体化させる技術。「塩らぁ麺」、「醤油らぁ麺」ともに、その技術が十全に活かされており、連食であったにもかかわらず、最後まで、レンゲを持つ手が止まることはありませんでした。


歯切れの良さだけでなく食感も抜群な麺

 また、このスープに合わせているのが、名門『三河屋製麺』のストレート麺。「醤油らぁ麺」には、口内でパツンと弾ける中加水麺、「塩らぁ麺」には、加水率が低い極細麺を採用。「様々な麺を取り寄せ、試作を重ねた結果、自分が作るスープに合う麺はこれかなと思って決めました。醤油らぁ麺を『塩』の麺で、塩らぁ麺を『醤油』の麺で食べても面白いですよ」とのこと。次回はぜひ試してみようと思います。


「醤油らぁ麺」、「塩らぁ麺」のトッピング各種

 チャーシューはスープの味を損なわないようにと、タレには漬けず、塩のみで風味付け。低温調理を施したうえで、軽く燻製したものを提供しています。なお、メンマは、店主の地元・糸島のものを使用。

「妻の実家が近いので、祐天寺に店を出したんですが、地元の皆さま方から愛されるお店にしていきたいですね。ファミリー客に通い続けていただけるような」と語る柳瀬店主のお人柄は気さくで、私が店に訪れた時も、お子様連れのファミリー客への細やかな気配りなど、接客も申し分ないものでした。

 というわけで、2022年の最優秀新店候補と言っても差し支えない要注目店。足を運ぶなら、まだ認知度がそれほど高くない今が狙い目でしょう。

柳瀬拓郎店主のプロフィール

・福岡県出身。カナダのビストロや日本食レストランで8年間シェフを務め、1年前に日本に帰国。屋号の『Ramen Break Beats』は、店主が好きな音楽ジャンル・ブレイクビーツから採ったもの。
・『柴崎亭』の限定ラーメンや、東京、大阪の実力店のラーメンを精力的に食べ歩きながら自宅で試作を重ね、今般、店主の妻の実家の近くである祐天寺に自店を開業。
・スープはコンソメの技法をアレンジ。前日に炊いたスープのガラを翌日に取り除き、大量の肉を加えてさらに炊き上げる。店主はその手法を豚骨スープの製法のひとつである「呼び戻し」になぞらえ「呼び戻し清湯」と命名している。

●SHOP INFO

店名:Ramen Break Beats(ラーメン ブレイク ビーツ)

住:東京都目黒区目黒4-21-19 アイビーハイツ 1F
TEL:非公開
営:11:00〜15:00(L.O.14:30)、17:30〜20:00
休:月曜

●著者プロフィール

田中一明
「フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。47都道府県のラーメン店を制覇し、現在は各市町村に根付く優良店を精力的に発掘中。

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