子どもが自立した後に起きる「空虚感」を克服するには?

4月7日(日)20時45分 All About

子どもが自立して巣立った後、空虚感に襲われる母親は少なくありません。これは「空の巣症候群」とも呼ばれ、特に注意したいのは自分のことを後回しにして家族に尽くす「よい母親」タイプの人。

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子の進学・就職・結婚…巣立ち後に訪れる「空の巣症候群」

春の訪れを感じる時期になると、子どもの「巣立ち」を予感する人が増えてきます。大切に育てた子どもが親元を離れていくのは、「うれしいのに切ない」「応援したいのに引き止めたい」、そんな微妙な気持ちになるものだと思います。

生意気ざかりで口応えばかりだった子、世話が焼けて心配の種の尽きなかった子、そんな子どもの世話に追われていた頃には、多くの親が「早く自立してくれないかな。そろそろ自分の時間がほしい……」と願っていたかもしれません。

しかし、本当に親元から離れてしまうと、心にポッカリ穴が空いたような感覚を覚えるものです。

このように、子どもの自立後の喪失感から、親の心が不安定になることがあります。これを「空の巣症候群」といいます。ひな鳥の巣立ち後の「空の巣」にたとえられた心の状態です。

燃え尽き症候群にも類似? 子育て熱心な主婦に発症リスク

「空の巣症候群」は、子育てに熱心に専念している人ほど注意が必要です。仕事熱心なサラリーマンが、定年後、急に燃え尽き症候群とも言われる喪失感を抱えるように、「子育て一筋」で頑張ってきた母親も、子どもの巣立ち後に同じような心境になることがあります。

例として挙げると、国民的な人気アニメ『サザエさん』の母親・フネさんのように、いつでも自分のことを後回しにして家族を第一に考えるような「いいお母さん」ほど、そのリスクは高いと思います。

子育て真っ最中のフネさんは、同居中の長女夫婦、小学生の子どもたち、孫に囲まれ、家の切り盛りに追われっぱなしの毎日です。しかし、いずれは長女夫婦も居を構え、子どもたちも進学や就職で家を離れ、あの磯野家にも急な静寂が訪れるのかもしれません。

そのとき、フネさんはどんな心境になるでしょうか。家庭以外の「生きがい」を持っているなら、その喪失感を薄めることもできるでしょうが、あのフネさんからは、どうしてもそれが見えてきません。だから、私は「フネさんの将来」を思うと、時折心配になってしまうのです。

生きがいづくりは、一朝一夕にできるものではありません。仕事一筋だったサラリーマンが、定年後の趣味や活動を見つけるのに苦労をしているように、生きがいは、人生の転機を迎える前から育てていないと、なかなか自分のものにならないのです。

「一卵性母子」の母ほど強くなる巣立ちの葛藤

また、「空の巣症候群」になりやすいのは、子だくさんの母親ばかりではありません。大事に育てた「一粒種の子」が手元から離れたときの喪失感もまた、非常に苦しいものです。

とくに、夫との関係がよくないと、心のよりどころを子どもに求めて、「小さな親友」のようにしてしまう母親もいます。さらに娘の場合は、女性同士で感情移入や共感がしやすいため、精神的な距離が近づきやすいのです。このように、まるで双子のように仲良く、いつも一緒に入る母と娘を「一卵性母子」といいます。

「一卵性母子」の娘にも、巣立ちの機会は訪れます。娘に好きな仕事や恋人ができれば、そちらの方に夢中になっていきますし、「やがては自分の手で新しい巣をつくりたい」と思うこともあるでしょう。しかし、母親の心が自立していないと、この気持ちを受け止められなくなります。

その結果、子どもを巣から出したがらない親、古巣に引き戻そうとする親もいます。外出を制限し恋人を厳しくチェックして、自立の機会を壊す。仕事や結婚の苦労話を聞きながら、会社や婿を「敵」にし、退職、離婚を促して実家に引き戻す。

このようにして子どもの巣立ちを受け入れず、「一卵性」の関係にこだわり続ける母親も少なくありません。

子育て後の趣味が見つからない? 巣立ち後の子どもを応援する「古巣」の守り方

時期がくれば子どもは古巣を去り、自分の手で「新しい巣」をつくりたくなるもの。親だからこそ、巣立ちや巣づくりを見守っていくことができるのです。

「親」の字は「木の上に立って見る」と書くように、少し離れたところで子どもを見守る。これが親の役割だと言われます。

子どもは巣立っても、古巣を捨てたわけではありません。外の世界に出れば、道に迷ったり傷ついたりします。そのときに、道案内を求めたり傷ついた羽根を癒せる場所が、「古巣」なのです。そして、自分の巣づくりに必要なことを学べるのは、古巣に親がいてこそなのです。

子どもが巣立てば、髪を振り乱して子どもの世話をする忙しさからは、卒業します。その代わりに、巣立ち後には「新しい役割」ができます。

一つは、子どもが迷い傷ついたときに、いつでも立ち寄れる「古巣」を大切に守ることです。

二つめは、子どもと大人の会話ができる、心のゆとりを持つことです。

三つめは、巣立ちを応援できるように、親も自立性を持って生きることです。

子どもが巣立った後にこそ発揮できる、親の仕事が待っています。気持ちを「新しい役割」に切り替えて、これからもずっと子どもを見守っていきましょう。
(文:大美賀 直子(精神保健福祉士・産業カウンセラー))

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